海外編 |
2007年の国内総生産(GDP)成長率は、国内経済の成長に伴う所得の増加を背景として前年の3.7%を上回る5.4%となり、2000年代では2004年の5.6%に次ぐ高い成長を記録した。部門別では農畜産部門が5.3%で最も高く、次いで工業部門が4.8%、サービス部門が4.7%となった。農畜産部門における高い成長率は、バイオ燃料需要の高まりなどを反映した穀物需要の大幅な増加により、価格・生産量ともに上昇したことが主な要因である。 |
表1 主要経済指標
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年間の消費者物価上昇率(INPC)は経済活動の高まりと、一部食料品価格の上昇により前年の2.8%から5.2%に上昇したが、政府がインフレ指数として用いるIPCA(拡大消費者物価指数)は4.46%と、政府が目標とした4.5%以内に収まり、安定した物価水準が維持された。 貿易については、年間輸出額1,606億ドルに対し、年間輸入額は1,206億ドルで400億ドルの貿易黒字となった。黒字額は前年を下回ったが、その一つの要因は年間を通じて続いたレアル高傾向による輸出競争力の低下と、国内経済の成長に伴う輸入増加に基づくものであった。ドルに対するレアルの為替レートは、2006年末の2.14レアルから2007年末は1.77レアルと上昇した。なお、2007年末の対外債務額は1,932億ドル、外貨準備高は1,803億ドルとなった。 |
全国の農業経営体520万戸の所有面積は、3億5480万ヘクタールとなっており、このうち7,670万ヘクタールが農耕用地、1億7,230万ヘクタールが牧草地として利用されている。2007年は農耕用地の6割に当たる4,590万ヘクタールが穀物生産に向けられ、1億3,000万トンの穀物が生産され、このほかサトウキビ670万ヘクタール、コーヒー230万ヘクタール、オレンジ80万ヘクタールなどの生産が行われている。 |
表2 農場面積と農場数の推移
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農林水産物の輸出については、前年に引続きレアル高傾向が続いたものの、過去最大の497億ドルの貿易黒字となった。世界経済の成長に伴う食料需要の増加と主要農産物価格の上昇により、輸出額は過去最大の584億ドルとなった。2007年の主な輸出先国は、米国64億ドル、オランダ54億ドル、中国47億ドルとなっている。これに対し小麦を中心とする輸入額はレアル高を反映して増加し、前年比30%増の87億ドルであった。 |
肉牛生産は約1億7,000万ヘクタールの広大な牧草地を利用した放牧肥育が中心で、耐暑性に優れたインド原産のゼブーに属するネローレ種を主体に飼養されている。 2007年は国内価格、輸出量、輸出額の面で過去最高を記録した。これは、2003年以降の牛肉価格低下による肥育牛の飼養頭数減少で市場への肉牛供給が減少した中、(1)国内消費がおおむね順調であったこと、(2)輸出競争相手国であるアルゼンチンが牛肉輸出制限措置を一時期に強化したこと―などが主な要因であった。 家畜衛生に関しては、南部のサンタカタリーナ州がOIEによるブラジル初の口蹄疫不接種清浄地域のステータスを取得し、東アジアなど新たな輸出市場の獲得の可能性が期待された。またBSEステータスについては、チリ、米国、カナダ、スイス、台湾とともに、管理されたリスク国と評価された。 また、食肉パッカーの規模拡大が進み、アルゼンチン企業では、Swift Armour(JBS社が買収)、AB&P(Marfrigが買収)、Quickfood社(Marfrigが買収)などがブラジル資本の傘下となった。ブラジルの社会経済開発銀行(BNDES)による国内外の事業拡大のためのブラジル企業への融資が、このようにブラジルの食肉パッカーが国外での買収を積極的に行っている背景の1つとみられている。 |
2007年の牛飼養頭数は1億9,975万頭となり、前年(2億589万頭)に比べ3%減少した。これは、2005年末の口蹄疫発生により牛肉価格が低下したことにより、肥育牛経営の収益が悪化し、生産意欲が低下したためとみられる。 飼養頭数を地域別に見ると、中西部(セラード地域)が全体の34.1%を占め最大の生産地となっており、以下、南東部(大西洋沿岸部)19.3%、北部(アマゾン上流部)19.0%、北東部(アマゾン下流部)14.4%、南部(ウルグアイ国境部)13.3%となっている。 |
図1 牛飼養頭数(2007年)
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図2 州別牛飼養頭数
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ア 生産動向 イ 輸出動向 ウ 消費動向 |
表3 牛肉需給の推移 図3 生鮮肉(冷蔵、冷凍)の輸出先国(2007年)
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ブラジルでは生体取引が主体であるため、生産者販売価格は枝肉15キログラム単位(アローバ)で示される。2007年は、肥育牛の飼養頭数が減少する中で需要が増加したため、価格が上昇し、12月の1アローバ(15kg)当たりの価格は、前年同月を47.9%上回る77.63レアルとなった。 また卸売価格は、前年比13.1%高の枝肉1キログラム当たり4.67レアルとなった。 |
図4 肉牛価格の推移(サンパウロ州)
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2006年は、輸出先国における鳥インフルエンザ発生による鶏肉需要の減退に対処するため、生産調整を行ったことから7年ぶりに前年に比べ生産が減少したが、2007年には鶏肉需要が回復したため、生産・輸出ともに大幅に増加した。 ア 生産動向 |
イ ブロイラーの輸出動向 形態別では、パーツが全体の約6割、丸どりが約4割となっており、丸どりの輸出割合が前年よりも増加したが、これは丸どり主体の中東諸国への輸出が増加したためである。輸出先国は前年に続きサウジアラビアが最大の市場で、次に香港と日本が続き、この3カ国で全輸出量の35.4%を占めた。 ウ 消費動向 |
表4 鶏肉需給の推移 図5 鶏肉の輸出先国(2007年)
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ア ブロイラーの生産者販売価格 イ 卸売価格 |
図6 ブロイラー価格の推移(サンパウロ州)
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世界のトウモロコシ生産の約1割を占めるブラジルでは、パラナ州をはじめとした南部(ウルグアイ国境部)で約半分の生産が行われている。トウモロコシの栽培は夏作と冬作の年2回行われ、夏作はパラナ州、冬作はマットグロッソ州が最大の生産地帯となっている。冬作は大豆の裏作として生産されている。 トウモロコシ輸出については、生産の大部分が国内の中小家畜の飼料として向けられているため、輸出余力は少ないとみられてきた。しかし、2006年度には1,093万トン輸出するなど、最近はトウモロコシ輸出国の一つに位置付けられるようになった。一方、飼料基盤のぜいじゃくな北東部(アマゾン下流部)の養鶏経営は、輸送コストの関係から国産よりも割安のパラグアイ産やアルゼンチン産トウモロコシに依存している。 これに対し、大豆生産は世界の約3割を占めており、国際大豆市場に大きな影響力を持つ。夏作トウモロコシと大豆は作付け時期が重なり競合するため、価格関係が作付面積に反映される。 2006/07年度農業プランによる政府の農業融資計画額は前年度を12.5%上回る600億レアルとなった。融資の大部分は、営農および販売融資に充てられる。1農家当たりの融資限度額も引き上げられ、例えば、中小家畜経営の場合、前年度から倍増し12万レアルとなった。また、生産者の経常収支が圧迫されていることから、併せて発表された緊急対策では、前年度の連邦政府による融資のうち営農融資の返済期限の4年間の延長、生産者の収入見込みをより確実にするための農産物販売オプション契約の競売の作付け前の実施のほか、干ばつなどの被災時に貯蓄に係る利息を無税にすることによる貯蓄の奨励、輸出用の農産物の生産に用いる輸入資材に係る輸入税の免除や農業保険の改善に資する再保険市場の開放なども示された。 |
2006年度は天候に恵まれ、トウモロコシの生産量は、前年度比20.8%増の5,130万トンに達した。鶏肉生産の拡大による飼料需要の高まりにより4,150万トンが国内に供給され、また、輸出需要の高まりにより、輸出量は過去最大の1,090万トンとなった。輸出先はスペイン、ポルトガル、オランダ、韓国などであった。 大豆の生産量も、前年度比6.1%増の5,839万トンとなり、大豆(粒)2,373万トン、大豆油234万トン、大豆油かす1247万トンが輸出された。大豆(粒)および大豆油の輸出先は中国、大豆油かすの輸出先はオランダ、スペイン、イタリアなどであった。 |
表5 トウモロコシの需給表 表6 大豆の需給表
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米国におけるバイオ燃料需要の高まりなどによるトウモロコシ国際価格の上昇を反映し、トウモロコシの生産者販売価格は、前年を45.2%上回る60キログラム当たり20.42レアルとなった。 大豆価格も同じく、前年を16.7%上回る同32.58レアルとなった。 |
表7 トウモロコシ価格の推移(サンパウロ州) サントス港に入る穀物メジャーの貨物車
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