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EUの牛肉輸入管理制度について

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2003年よりEUは牛肉の純輸入地域へ

 EUは2003年より牛肉の純輸入地域となっており、2009年においては枝肉換算で40万トンを超える牛肉が域外から輸入されている。輸入量が2008年以降大きく落ち込んでいるのは、EUに対する最大の牛肉輸出国であるブラジルにおいて、EUの専門機関(FVO)による現地査察の結果、口蹄疫のEUへの侵入防止の観点から条件付けられている牛肉から生体までのトレースバックシステムの不備が確認されたことに伴い、EUへ輸出可能なブラジルの認定農場数が大幅に減少したことによるものである(図1)。
図1

2008年以降ブラジル産牛肉の輸入は大きく減少

 図2は、EUにおける牛肉の輸入動向を供給国別に整理したものであるが、前述のとおり2008年以降ブラジル産が大きく減少した一方、三番手のウルグアイ産が順調に増加している以外大きな変化は見られない。二番手のアルゼンチンは、国内需要を満たすことを最優先とし、牛肉の輸出をコントロールしたため、輸出が伸び悩んだと言われている。対日輸出で圧倒的なシェアを占めるオセアニア諸国からEUへの輸出は、ナミビアやボツワナといったわが国にはあまりなじみのないアフリカ諸国と同水準にとどまっており、我々日本人からすると奇異に映るかもしれない。そこで、本稿ではEUの牛肉輸入管理制度と絡めてこの現象を解説することとする。
図2

ヒルトン枠とは?

 海外の農業専門誌では、ヒルトン枠(Hilton beef Quota)という用語を目にする機会が多いが、これは、EUにおける高級牛肉の低関税輸入枠(従価税率:20%)の俗称である。1979年に当時の東京ヒルトンホテルで開催されたGATT東京ラウンドにおいて、EUと牛肉輸出国との交渉の結果この低関税輸入枠を設けることが合意されたことから、関係者間でヒルトン枠と呼ばれている。
 
※:EUの牛肉輸入関税は、従価税(ad valorem duty)と従量税(specific duty)が組み合わせられたもので、現在の税率はそれぞれ12.8%、1,768ユーロ/トン(約20万円/トン:1ユーロ=113円)となっている。これらの関税に加え、輸入量の急増や輸入価格の下落を契機として輸入関税が引き上げられるセーフガード条項が設けられているが、これまでのところ発動実績はない。
表
 EU側は、新規加盟国のEUへの加盟という特別の理由がない限り基本的にヒルトン枠の拡大を認めておらず、枠外税率の負担も前述のとおり軽くないことから、牛肉輸出国に割り当てられたヒルトン枠が対EU輸出における制約の一つとなっていることが読み取れる。
 また、このヒルトン枠が配分されていないボツワナとナミビアが図2において一定のシェア(それぞれ約2%)を占めているのは、別途アフリカ・カリブ海・太平洋諸国(ACP諸国)に対して設けられている牛肉の無税枠(合計52,000トン)を活用できることによるものである。
 なお、米国からEUへの牛肉輸出が低調なのは、言うまでもなく米EU間のホルモン牛肉紛争によるものであるが、これについては下記の報告を参照願いたい。
 
【海外駐在員情報】ホルモンを投与された肉牛から生産された牛肉の貿易をめぐる紛争に関し米国側と暫定的に合意(EU)
 
【前間 聡 平成22年5月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部調査課 (担当:井上 裕之)
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