欧州委員会は、2010年11月18日付で「2020年に向けた共通農業政策(CAP)〜食料、天然資源および地域に係る将来の試練への対応〜」と題した政策文書を公表し、2013年以降のCAPの方向性を以下3つの政策オプションとして提示した。
オプション1は、現行制度の微修正版というべきものであり、EU15に偏重しているとして新規加盟国から不満の声が強い直接支払いの財源を、より公正な形で加盟国間で再配分するということに主眼を置いている。
一方、オプション2は、さらにバランスを高め、施策の対象を絞り込み、持続可能な農業への支持を明確化するとしたものであり、オプション1が外見上の差異を見いだすことが困難な自動車の「イヤーモデルの変更」と考えれば、オプション2は次期のフル・モデルチェンジまでの間にテコ入れとして実施される大がかりな「マイナーチェンジ」とみなすことができる。ただし、小規模農場に対する新たな支援措置の導入も謳っている点は注目されるところであり、例えば、CAP第二の柱である農村開発の財源を拡充するために現在導入されているモジュレーション(直接支払いからの実質的な控除)を小規模農場に対して適用除外とするなどの措置も可能性の1つとして考えられよう。
また、オプション3は、所得支持と市場措置という現行の施策を段階的に廃止し、環境あるいは気候変動に関する目的に重点を移したものと評価できる。これは、自動車の「フル・モデルチェンジ」に相当する急進的な政策オプションとみなすことができよう。
現時点で、今後の議論の結果を予断することはできないが、オプション1、オプション3を両極端なものとしてとらえれば、オプション2が本命的な役割を担っていると考えることもできる。
いずれにしても、今後はこの3つの政策オプションをベースとして議論が深められることとされており、2011年中ごろには欧州委員会より法案の形で提案がなされる予定となっている。