価格上昇の主要因は、気候変動による生産減と米ドル安
国連食糧農業機関(FAO)が11月17日に公表した食料需給見通し(Food Outlook、6月と11月の年2回公表)によると、トウモロコシ、小麦など農産物の国際価格を引き上げている主な要因として、気候変動から、米国ではトウモロコシの単収が、ロシアなどでは干ばつ被害から小麦、大麦の生産量が、見込みを大きく下回ったことで需給バランスが崩れ、在庫水準が低下したこと、また、9月中旬から続く米ドル安が価格の上昇に影響を与えているとしている。
穀物など国際価格の値上がりは、8月の小麦、大麦に始まり、トウモロコシ、大豆、砂糖、綿花などへと広がりを見せ、綿花は140年ぶりの、また、砂糖は30年ぶりの高値を打った。
価格上昇のペースは2007/08年度時を上回り、購入単価が上昇することで各国の食料輸入額は押し上げられており、世界全体の食料貿易額は2008年の記録に近づきつつあるとしている。
なお、FAOは、穀物などの国際価格が上昇したことで、9月24日にローマで特別会合を開催している。
需給緩和には、来年度、小麦3.5%以上、トウモロコシ6%以上の増産
ひっ迫傾向にある現在の穀物需給の改善には、来年度に向けて生産量の著しい増加こそが緊急課題であるとの認識であり、小麦消費量は、来年度、本年度に引き続き直近10年間の伸び率を上回ると見通されていることから、今年度の危機的な小麦在庫水準とならないためには、前年度比3.5%以上の生産量が求められるとしている。また、トウモロコシは、需給を改善するために、今年度よりも少なくとも6%以上生産量を増やす必要があるとしている。
トウモロコシ、小麦に加え砂糖、綿花などの作付動向に注目
在庫の低下から、国際市場の価格は今後の生産量の多寡に大きく影響を受けることになる。このため、市場関係者の目は、2011年の作付動向に注がれているとしている。
また、現在の農産物価格の上昇は、生産者の作付面積拡大の動機づけになる一方、トウモロコシ、大麦、小麦に加え、大豆、砂糖、綿花などの価格も上昇していることから、必ずしも主要穀物の作付面積だけの拡大にはつながらないとの指摘であり、輸出を制限した国では、制限対象外の作目を栽培するという動きが見られている。
このため、消費者は食品価格の値上がりに直面する一方、2011年はさらなる供給不安、価格上昇を警戒し、対応することになるかもしれないと結論づけている。