豪州では11月8日、炭素価格制度に関する一連の法案が、下院に続き上院でも可決された。これにより、2012年7月より炭素価格制度(炭素税)が導入されることとなった。同制度は、二酸化炭素排出量の多い上位500の企業に対し、排出量に応じて炭素価格の支払いを求める。農業分野の企業は対象から外れているものの、電力会社などが炭素価格の支払いを求められることから、光熱費などが引き上げられることが予想される。開始初年度である2012/13年度(7月〜翌6月)の炭素価格は、排出量1トン当たり23豪ドル(約2,000円:1豪ドル=85円)であり、2013/14年度から毎年度2.5%ずつ引き上げられる。また、2015年7月からは、排出量取引制度に移行する見通しである。(
海外情報「豪州政府、来年度導入予定の炭素価格制度の枠組みを公表(豪州)」を参照。)
今回の炭素価格制度導入の決定を受け、農家は経営コストの上昇を懸念している。生産者団体であるNational Farmers’ Federation(NFF)は、農家によっては年間の生産コストが1万豪ドル(85万円)ほど増加するとし、農畜産業分野での国際競争力の低下にもつながるとしている。こうしたことから、同団体のジャック・ローリー代表取締役は、今後の方針として、2014/15年度から課税対象となる大型車両の輸送燃料を含む、農業分野に及ぼす影響を、ロビー活動を通して低減するよう求めていくとしている。
また、乳製品業界団体は、搾乳機器の利用など、酪農家が他畜産農家に比べて電力使用量が多いことを懸念している。同団体によると、酪農家における年間の電気代は、5,000〜7,000豪ドル(約43万〜60万円)増加するとしている。