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欧州、共通農業政策(CAP)における酪農部門に新たな規則が発効

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 2008/2009年における欧州の牛乳・乳製品の価格暴落(いわゆる「酪農危機」)を受けて、ハイレベルグループが結成され検討を重ねていた酪農部門における新たな規則が欧州議会および欧州理事会において正式に決定され3月30日の官報に掲載された。

 EUにおける牛乳・乳製品の政策は、CAP (共通農業政策)下にSingle CMO(Common Market Organisation)と呼ばれる「単一共通市場」政策が定められている。新たな規則は、当該政策の酪農部門において適用され「酪農部門における契約関係上の規則」(通称「ミルクパッケージ」と呼ばれている。)として追加される。主な内容は、生産者の交渉力強化や生乳クオータの廃止(2015年3月末予定)に向けた対応である。

ミルクパッケージの主な内容

 本規則の目的は「生産者組織が、生産者主導による需要(量および質)に合わせた生産調整、集約的な供給、公平かつ安定した価格を保証するための生産コストの最適化を図る」である。
 主な規則の内容は、書面による生乳出荷契約の作成の推進、PDO(原産地名称保護)やPGI(地理的表示保護)認証のチーズ生産保護、2015年生乳クオータ廃止後における国別の生乳出荷量の月次報告などである。
 今回の規則は、生産者の協同組合を除いて契約可能な生乳量上限が定められており、EU総生産量の3.5%もしくは、加盟国での生乳生産量の33%(生産量が50万トン未満の加盟国は45%)もしくは加盟国の生乳出荷量の33%(出荷量が50万トン未満の加盟国は45%)となっている。書面による契約書には、(1)価格(固定もしくは契約書に記載した計算式によること)、(2)出荷量および出荷期間、(3)支払期間および支払方法の詳細、(4)集乳および出荷に関する合意、(5)不可抗力に関する取り決めを記載することが定められ、更にこれらは出荷前に締結することとなった。
 また、生乳クオータ終了後(2015年4月1日から)の域内における酪農市場の安定化のため、月ごとに生乳出荷量が報告されることとなり、生乳の最初の購入者は国家機関に対して毎月集乳量を報告することが定められている。
 本規則は加盟国全てに対して強制力はなく、生産者が契約を結ぶ対象が最初の生乳購入者あるいは加工業者、最短契約期間(ただし、半年以上)の設定、また同規則の義務化などは各国の裁量に任せたかたちとなった。

関係団体等の反応

 本規則について、各国の反応も異なった。「EU統一規則ではなく一部が各国の裁量に任せていることは残念である。」(ベルギー)、「根本的な解決にはならない。」(ドイツ)、「最初の一歩として評価する。」(英国)、「本規則による影響を「特になし」と回答している国が多いことからも大きな変革とはならない。かえって市場価格に応じた生産が難しくなる可能性がある。」(ヨコレ)といったコメントが出されている。

今後の動向

 規則の適用は2012年4月2日からであるが、一部規則については、実施に期間が必要となることから2012年10月3日となる。今後、欧州委員会は規制の妥当性などを判断するために、2014年6月30日までと2018年12月31日までの2回にわたって評価を行い、その結果を加盟国に報告することとなっている。

【参考】
平成23年12月12日「欧州理事会と議会は、新たな酪農部門の規則に合意」
【矢野 麻未子 平成24年4月12日発】
このページに掲載されている情報の発信元
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