ブラジルでは、陸送を中心とした輸送費の高さが「ブラジルコスト」として知られている。輸出される飼料穀物の主要生産地域は内陸の中西部が中心であり、トウモロコシや大豆が数千キロメートル離れた港湾までトラックを使って陸送されている。
ブラジルでは鉄道網が未整備なことから、穀物の輸送はトラックが主体となっている。2012年4月の世銀レポートによれば、ブラジルでは少数の輸送会社が国内80万台以上のトラックを保有し、過当競争のために運転資金の回収もままならない状況に置かれていた。しかし、前年の第2期作トウモロコシの収穫期以降の好調な輸出に支えられ、このような状況に変化がみられる。
米国農務省(USDA)によると、生産地から港湾までの陸送運賃が前年に比べ25〜50%上昇している。またマットグロッソ州農業経済研究所(IMEA)によると、現在、同州の主要生産地域であるソヒーゾ市からパラナグア港までの輸送費が前月比25%高の1トン当たり300レアルに達している。これは、前年にトラック運転手に4時間ごとに30分の休憩を義務づける法律が施行されたことやディーゼル価格の上昇が要因とみられる。また港湾における滞船の日数も長期化している。例えば、通常であれば1日当たり8000トンの穀物を船に積み込むことが可能なため、パナマックス級のタンカーでも7〜8日あれば積込み作業は終了するはずである。しかし、現状は滞船があるためパラナグア港では、積込み作業に約50日を要している。大豆輸出が始まる今後数カ月はこの期間が60日にも達することが懸念されている。さらに、主要港であるパラナグア港やサントス港では、港湾設備や岸壁の補修工事が行われていることから、処理能力が制限されていることに加え、港湾民営化などを定めた暫定措置令595号に反対する港湾労働者によるストライキなども起こっている。トウモロコシおよび大豆の生産量が過去最高になることが見込まれている今、今後の輸出への影響が懸念される。