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米国農務省、ミバエ駆除・検出プログラム5カ年戦略を公表(米国)

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最終更新日:2024年5月7日

 米国農務省動植物検疫局(USDA/APHIS)は4月17日、2024年から28年までの5年間におけるミバエ駆除・検出プログラム5カ年戦略(以下「5カ年戦略」という)を公表した。
 米国では現在、カリフォルニア州、ニューヨーク州およびテキサス州を中心に外来害虫であるミバエによる農作物被害が拡大しており、USDA/APHISによると、過去70年間で最多のミバエが確認されているという。ミバエは、かんきつ類、さくらんぼ、アプリコット、トマト、豆類など400以上の果物や野菜に被害をもたらす。果実内部に産み付けられたミバエの卵から(かえ)った幼虫によって食害を受けてしまう。
 USDA/APHISは5カ年戦略を策定することで、これまでに取り組んできたサーベイランスやミバエ確認時の緊急対応を強化し、駆除技術の開発・向上や近隣諸国との協力を推進する考えである。5カ年戦略では、米国農業に被害をもたらしているチチュウカイミバエ、メキシコミバエ、ミカンコミバエ、ヨーロッパオウトウミバエといった4種類のミバエを主な対象として、(1)サーベイランスによる早期発見(2)ミバエ確認時の緊急対応(3)ミバエ定着防止に向けた不妊化ミバエ生産技術の強化(4)ミバエの国内侵入・定着防止に向けた国際的な取り組みの強化を目標に掲げている。

1 早期発見に向けたサーベイランスの強化

 ミバエの国内侵入の早期発見は、発見後の緊急対応の規模および期間を最小限に抑えることにつながり、定着防止の費用対効果を高めることから非常に重要である。
 5カ年戦略では、州レベルの取り組みの評価、捕獲用トラップの種類、設置密度および設置頻度などの評価によって、全米レベルのサーベイランス体制を強化するとともに、捕獲用トラップの改良やその他のサーベイランス技術の開発とサーベイランスへの導入を支援することとしている。また、日常的な監視水準を引き上げるべく、一般国民の認識を深めることも目標に掲げている。

2 ミバエ確認時の迅速な緊急対応の強化

 ミバエが発見された場合の緊急対応として、単独のミバエの侵入であるのか、あるいは繁殖を行っている群単位のミバエの侵入であるのかを見極め、ミバエの駆除・防除範囲や農産物の移動制限範囲を設定した上で、駆除・防除活動にあたる必要がある。そして、緊急対応を強化するためには、駆除・防除剤や不妊化ミバエの放飼の相互作用、駆除・防除効果、費用対効果も検討しなければならない。
 5カ年戦略では、ミバエの駆除・防除技術の開発および導入や、緊急対応の一貫性、迅速性および有効性の向上に向けた訓練プログラムの開発を推進することとしている。また、業界への経済的影響、輸出への影響、環境への影響を評価した上で、緊急対応の必要な改善に取り組むことも目標に掲げている。

3 定着防止に向けた不妊化ミバエ生産技術の強化

 USDA/APHISは、グアテマラに2施設、テキサス州に1施設の大規模な不妊化ミバエの生産施設を運営し、グアテマラ、メキシコ北部、フロリダ州、テキサス州において、不妊化されたチチュウカイミバエおよびメキシコミバエの羽化・放飼施設を運営している。2022年には、不妊化ミバエをカリフォルニア州では週平均1億2000万匹、フロリダ州では週平均8000万匹を放飼することで、ミバエの駆除に取り組んできた。
 5カ年戦略では、生産インフラの改善に係る提言を行うとともに、生産段階のコスト低減、新たな不妊化ミバエの開発などを推進し、費用対効果を高めることとしている。また、放飼段階のコスト低減も目標に掲げている。

4 国内侵入と定着防止に向けた近隣諸国への協力と検疫の強化

 ミバエの国内侵入を防ぐためには、近隣諸国におけるミバエの発生・定着防止、サーベイランス、防除といった対策に協力することが費用対効果の高い取り組みである。
 5カ年戦略では、(1)メキシコ、グアテマラ、ベリーズでの定着防止(2)サーベイランスおよび駆除・防除に関する指導・研修といった技術支援と協力関係の継続(3)カリブ地域における植物防疫当局などを対象とした国際的な地域協力(4)サーベイランスおよび緊急対応に関する能力強化の支援(5)ミバエの宿主植物の持ち込み防止に向けた旅行客への教育・普及活動や密輸の抑止と検疫強化を目標に掲げている。
表 ミバエ駆除・検出プログラム5カ年戦略の概要
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9533