各種麺の製造法を図3にまとめた。基本的には、ミキシングから切り出しまでほぼ同様な製造工程であるが、切り出し以降の工程が異なる各種の麺(生麺、即席麺、冷凍麺、チルドゆで麺、特殊麺)を下記に記す。表2では麺の種類によるでん粉使用をまとめている(3)。
4−1 生麺(乾麺を含む)
生麺や乾麺におけるでん粉の用途として、まず麺線同士の付着防止目的で使用される打ち粉がある。打ち粉には、でん粉の粒径が大きく、均一であるため粉体流動性に優れたサゴでん粉を原料に選択する場合が多い。さらに麺調理時のゆで湯の粘度上昇を抑制し、麺が均一にゆであがり易くなるようでん粉糊液粘度が低粘度となる加工を施した酸化デンプンが用いられる。麺に練り込む形ではばれいしょでん粉やタピオカでん粉が、ゆで時間の短縮や食感改良の目的で利用されている。
4−2 即席麺
即席麺では、その名称の通り即席性いわゆる復元性の向上目的でばれいしょでん粉やタピオカでん粉が利用されている。油揚げ麺における、酢酸デンプンを添加した場合の吸水速度の違いを図4に示す(4)。近年の即席麺は生麺の食感を目標とし、麺線の太い製品が多く上市されている。太く厚い麺線の復元性向上適性としては、ばれいしょでん粉を原料とした酢酸デンプンが優れており、添加量の増加により対応することが出来る。特徴ある食感の付与を目的としてばれいしょやタピオカの各種加工でん粉やそのアルファー化品、あるいはオクテニルコハク酸デンプンナトリウムが使用される。
4−3 冷凍麺
冷凍麺は、ゆであげ直後に急速冷凍処理を行うため、麺線中の外側と内側で水分勾配(水分含量のバラつき)が維持されたまま喫食することが可能である。チルドゆで麺の均一的な食感とは異なり、ゆであげ直後の粘弾性に優れた食感となる。冷凍麺とチルドゆで麺の内部状態の違いを図5に示す。
冷凍麺は、製造時のでん粉老化による品質低下を改善するためにでん粉原料自身が老化しにくいワキシーコーンスターチやタピオカでん粉が利用されてきた。近年は冷凍技術の進歩により、この問題は解決されてきたが、流通時や購入後の冷解凍による品質劣化防止や、湯がきたての生麺に近い粘弾性の強い食感付与を目的に、各種加工でん粉が利用されている。
4−4 チルドゆで麺
チルドゆで麺は、図6に示すように再加熱を行うタイプ(ゆで麺)と再加熱を行わないタイプ(冷水で洗う水さばき麺やコンビニエンスストアなどで販売されている調理麺)の2系統に大別される。
喫食時に再加熱を行うタイプは、食感改良目的が優先され、ばれいしょでん粉やタピオカでん粉の酢酸デンプンが良く使用されている。一方、再加熱を行わないタイプは、老化耐性も考慮されてタピオカでん粉やワキシーコーンスターチのヒドロキシプロピルデンプンが使用されることが多い。コンビニエンスストアで販売される調理麺は、麺線のほぐれ改良や強いコシ食感が求められており、ばれいしょでん粉やタピオカでん粉のアセチル化アジピン酸架橋デンプンやアセチル化リン酸架橋デンプンおよびヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンが使用される場合がある。
4−5 特殊麺
特殊麺の代表的な製品ははるさめやくずきりで、ばれいしょでん粉を主原料に、かんしょでん粉やコーンスターチやくず粉が併用されている。また韓国冷麺や盛岡冷麺は、小麦粉とばれいしょでん粉やかんしょでん粉から作られ、そば粉が添加される場合もある。最近は、はるさめやくずきりあるいは冷麺類を従来設備(通常のミキサーや麺機)により製造出来るよう、アルファー化でん粉をつなぎ剤として使用し製造する場合がある。アルファー化でん粉は水に溶解してすぐに粘度が上昇するでん粉で、湯練りをせずに通常の水練りで生地製造が可能となる。つまり小麦粉未使用もしくは小麦粉使用量の少ない麺においてアルファー化でん粉は必須な原料となる。