3.でん粉製品産業の今後の見通し
(1)でん粉製品需要の見通し
〜中期的に増加の見込み〜
業界関係者は、中期的に、EUにおける一人当たりでん粉製品消費量が毎年2%増加すると見込んでいる。これは、高齢化および健康志向の高まりを反映した、高付加価値の健康食品材料としてのでん粉製品需要の増加によるものである。
食品や飲料に含まれる糖質の量や種類に対する消費者の関心は高まる傾向にあり、でん粉産業にとってはでん粉由来低カロリー甘味料や難消化性デキストリン市場などの分野でビジネスチャンスがある。また、EUでは、労働時間の長期化や、共働き世帯の増加などによって、冷凍食品や乳製品、デザート、ピザ、インスタント食品などの需要が大きく伸びており、引き続きこの傾向は継続するとみられることから、これらに使用されるでん粉需要の増加も継続が見込まれる。
さらに新しい市場として、ロシアなど東欧も注目されている。東欧の食品・飲料産業は、経済成長、西洋風ライフスタイルの浸透、流通の改善によって、急速に成長しており、でん粉製品需要も伸びている。
(2)関連政策によるでん粉製品供給への影響の見通し
〜短期的には大きな変化はない見込み〜
EUのでん粉製品産業全体への影響と言う面で関連政策の変化を考えた場合、生産払戻金が廃止されたが、当該補助金の発動はしばらくなかったことから、でん粉製品産業への影響はほとんどないと思われる。しかしながら、ばれいしょでん粉については、固有の関連政策の一部が廃止される2012年度以降において、上述したとおり原料確保の面での影響があると見込まれている。
長期的には、現在議論されている2013年以降の次期CAP改革の行方に左右されるとみられる。現時点において交わされている議論の要点については、以下のとおりである。
・2020年までの長期的な農業分野予算の枠組み。これについては、現在より縮小するとの見方が強い。
・農業が気象変動に対応し、また、持続可能基準を満たす必要性
・農産物の国際価格が不安定さを増している中での農業の在り方
・農業食品関連産業が競争力を保つ必要性
2010年3月の欧州理事会では、こうした点を踏まえつつ、
「EUが確立すべき農業モデルは、市場安定機能を持ち、かつ、農業が農村地域における基幹産業であり地域社会に貢献していることを農家収入に反映したものでなくてはならない。また、一方では、農産品の適正な価格形成や農業分野における適正な競争にさらに焦点を当てる必要がある。」
としている。
2011年に方向性が示されるこの議論は開始されたばかりであるため、その行方については、引き続き注視する必要がある。