キャッサバ農家保護制度の運用状況
〜最近は価格高騰のため発動なし〜
(1)制度の概要
タイでは、キャッサバ、とうもろこし、コメを対象とした最低価格保証制度が存在する。従前は担保融資制度(収穫物を担保として政府から融資を受ける)が実施されていたが、2009/10年度から最低価格保証制度に切り替えられた。
価格保証制度の仕組みについては以下のとおりである。
ア 農家は、毎年度ごとに、制度の対象となるために登録を行う。登録業務は、農業協同組合省農業普及局の出先機関である各県の農業事務所が担当。
イ タイ政府は、毎年度のキャッサバの保証価格をあらかじめ設定する。保証価格は、農家が生産コストに加えて20〜25%の利益が得られるよう設定されている。
ウ 商務省、農業協同組合省など関係機関から成る指標価格設定委員会が、収穫開始後15日ごとに、市場における平均的な売買価格に基づき指標価格を算出する。
エ 農家は、キャッサバを収穫し、チップまたはでん粉工場に販売する。その際には工場が設定した価格に従って売買が行われる。
オ 指標価格が保証価格を下回った場合、当該期間内に販売実績のある農家は、証拠書類を提出し、保証価格と指標価格の差額の補てん金を受け取る。
(2)運用状況
2009/10年度については、保証価格がでん粉含有率25%のものでキログラム当たり1.7バーツと設定された。2010年7月に2009/10年度の実績が公表されたが、これによると登録農家数は44万8,261戸であり、実際に差額の支払いの対象となった農家数は38万374戸、交付金額は24億3,249万バーツ(約66億2000万円)であった。
2010/11年度については、保証価格はキログラム当たり1.9バーツと、生産コストの増加を反映して前年から0.2バーツ引上げられた。しかしながら、現在の価格水準下では発動することはほぼないと見込まれている。