ばれいしょでん粉は、ヨーロッパが最大の生産地域となっており、2010年の生産量は126万トンと、世界全体(160万トン、前年比6.6%増)の約3/4を占めている。次いで、アジアの28万トン、北アメリカの6万トンとなった。
2010年のヨーロッパにおけるばれいしょの単収は例年を約2割下回る水準となり、タピオカでん粉の供給減と相まって、ばれいしょでん粉価格は高騰することとなった。2011年は、多雨による塊茎数の減少なども報告されているものの、概ね平年並みの単収が見込まれている。
ヨーロッパ産ばれいしょでん粉は、約3割がアジア向けに輸出される。中でも、中国向けの輸出量は、中国国内でのばれいしょでん粉の減産が響き、2010年に11万5000トンと前年(5万7000トン)から倍増した。中国政府は、国内のばれいしょでん粉産業を保護するため、2011年5月からEU産ばれいしょでん粉に対して相殺関税措置をとっている。
2010年の消費量は、ヨーロッパが71万トンと最も多いものの、アジアも68万トンとほぼ同量で続き、次いで北アメリカの16万トンとなっている。今後の消費量の見通しについては、2012年にはアジアがヨーロッパを抜いて最大の消費地域になると見込まれる。2015年にはアジアの消費量は、2010年比23.7%増の84万トンに増加、ヨーロッパは同6.8%増の76万トンになると予測される。
また、今後のばれいしょでん粉需給において注目されるのが、EUにおける政策見直しによる業界への影響である。すでに生産払戻金(域内産穀物利用に対する補助金)は廃止され、輸出補助金も交付がないが、2012年度(7月〜翌6月)以降は、生産割当制度やでん粉原料用ばれいしょの最低保証価格制度などが廃止されることとなっている。このため、2012年度以降のEUのばれいしょでん粉供給の見通しについては不透明である。業界は安定的な販売先確保のため、域内向け、特にばれいしょでん粉を評価している製紙および食品向けに傾注力していくとみられる。
なお、EUのばれいしょでん粉政策の詳細に関しては、2010年9月号「
EUのでん粉をめぐる状況」を参照されたい。