飲料固有の食品関連法規では、種々の規格・基準が定められている。混濁、沈殿物、重金属、微生物、かび毒などに対して規格が定められ、容器、密封性、製造工程中の殺菌条件などに種々の基準が定められている。その中で、炭酸飲料の日本農林規格に砂糖の灰分0.03%以下と数値規格がある他は、私たちユーザーが飲料に対する法規を満たすために必要な糖類の規格・基準を上乗せして定め、これがメーカー各位で実現され納入される、という企業間合意形成方式によって飲料製品の食品安全が確保されている。
それら糖類の品質に対しては、リスクアセスメント(注1)とハザードアナリシス(注2)のアプローチを導入している。
(注1)職場の潜在的な危険性または有害性を見つけ出し、これを除去、提言するための手法。
(注2)食品の原材料および製造加工工程における潜在的な危害要因(ハザード)について、発生のしやすさ、発生した場合の危害程度、各々の危害要因のコントロールの方法(例:適正な加熱温度・時間等)を明らかにすること。
食品安全の世界では、ハザードをアナリシスしコントロールせよ、というHACCPが品質保証の基本的なアプローチとなっているのに対し、例えば労働安全の世界では、リスクをアセスメントしマネジメントせよというアプローチとなっている。
ハザードをコントロールしてゼロにできればリスクも自動的にゼロとなるが、ゼロにできないハザードが存在するのもまた事実である。例えば、密封製品中の微生物菌数を測定しようと開封したら、それは商品には成り得ない。このような状況に対しては同じ条件で同時期に製造されたまとまり、ロットやバッチ単位でのサンプリング検査を適用することになる。その際のロットサイズの大きさの決定や検査頻度、検査項目、判断基準の制定には、事故例を教訓とすることができる。すなわち事前情報の多さが予防活動の有効性を左右することになる。
例としてさいころゲームを考えてみたい。基本ルールは、偶数の目が出たらリスク=ハザードとなり問題が表面化すると決める。
さいころをひとつ振って偶数となる確率は1/2である。半数が不良になるかもしれない状況では製品安全の確保はおぼつかない。この確率を小さくするための最初の方法は、さいころの数を増やすことである。例えばさいころを4つ振って、全部偶数となる確率は1/16に低下させることができる。