このように甚大な被害を与えているコナカイガラムシへの対策として、タイ政府が取り組んでいるのは以下の3つの方法である。
(2)-1 薬剤の使用による耐性強化
キャッサバの植付けは、25センチほどの茎を畑に挿すだけの簡単なものである。コナカイガラムシ対策のため、植付けに当たっては、茎を薬剤溶液(薬剤として殺虫作用を持つチアメトキサム(thiamethoxam)など)に5〜10分ほど浸してから行うよう指導している。この方法により、薬液を散布した場合よりも防虫効果が持続し、約1カ月の間はコナカイガラムシに対して耐性を持つことが確認されている(散布した場合は2週間程度)。
生育初期にコナカイガラムシが付着した場合は、キャッサバの塊根部はほとんど肥大せず、被害が大きくなることから、この方法は生育初期の対策として有効であるとされている。
(2)-2 農家による管理および確認の徹底
(2)-1を実施した上で、農家に対してこまめにキャッサバの状態を確認することを求めている。キャッサバ畑においてコナカイガラムシの付着を確認した場合は、作付け後1〜4カ月であれば当該キャッサバを処分し、4〜8カ月であれば、薬剤散布による拡散防止、大発生している場合は、ただちに塊根部を収穫して、地表部分を全て処分するよう指導している。
(2)-3 天敵の導入
コナカイガラムシがアフリカで大発生した際に、駆除に効果を上げた天敵の寄生バチ(Anagyrus lopezi、図12)の導入も進められている。この寄生バチは、一日当たり20〜30匹のコナカイガラムシを捕食するとともに、15〜20匹に卵を生みつけて寄生する。
西アフリカのベナンから輸入された後、試験場段階では効果が確認されており、現在は実用化に向けて繁殖させているところである。
タイ政府は、上記(2)-1および(2)-2の対策を農家に周知、徹底させるための費用として、2009年度に約6000万バーツ(約1億6800万円)の予算を計上した。
一部の農家が対応を怠ってしまうと、その畑が害虫の避難場所となり、対策の効果が薄れるため、確実な実施を呼び掛けている。