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国際需給

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最終更新日:2010年5月12日

 
1.主要国・地域の砂糖需給(2004/05⇒2009/10年度)
 
 
 2009/10年度(2009年10月〜2010年9月)の世界の砂糖生産量は、前年度比3.1%増の1億5640万トン(2008/09年度1億5170万トン)と見込まれている(LMC2010年1月10日現在の予測値、粗糖換算数量)。
 
 
 主な生産国はブラジル(3603万トン、前年度比7.7%増、世界シェア23%)、EU(1683万トン、同12.6%増、同11%)、インド(1677万トン、同4.2%増、同11%)、中国(1304万トン、同3.5%減、同8%)などで、ブラジルが全体の約1/4を占める。世界の輸出量は、前年度比3.3%増の5324万トン(2008/09年度5153万トン)と見込まれ、主な輸出国はブラジル(2437万トン、同10.3%増、同46%)、タイ(540万トン、同6.5%増、同10%)、オーストラリア(365万トン、同7.5%増、同7%)などである。一方、2009/10年度の世界の消費量は、生産量を上回る1億6411万トン(前年度比2.6%増)と見込まれている。主な消費国はインド(2582万トン、同3.3%増、同16%)、EU(1866万トン、同0.2%増、同11%)、中国(1495万トン、同1.8%増、同9%)、ブラジル(1220万トン、同2.3%増、7%)などである。
 
 
 この結果、期末在庫率(在庫量/消費量×100)は、2008/09年度27.3%、2009/10年度23.0%と、2007/08年度33.2%から2年連続の低下が見込まれている。
 
2.近年の国際砂糖需給構造の変化(2004/05 ⇒ 2009/10年度)
 
生産量
EU は、2006/07年度以降の砂糖制度改革による生産割当数量の削減に伴い減少、インドも、2008/09年度において穀物価格の高騰を背景に、さとうきびから穀物への作付転換が行われ、さとうきび作付面積が減少したことや、主産地であるウッタルプラディッシュ州における干ばつ、中央政府の価格政策の影響などにより大幅に減少(2007/08年度比46%減)した。2009年度も大幅な回復は予想されていない。一方、ブラジルは、世界各国の需要の増加を反映して増加し、世界砂糖生産に占めるシェアが23%へ拡大。
 
消費量
 
世界の砂糖の消費量は、世界の人口増加などにより、過去10年間において増加傾向で推移した。中でも最大の消費国インドが、人口および所得の増加に伴い大幅に増加し、インドに次ぐ消費国である中国も、炭酸飲料、菓子など国内需要の拡大に伴い増加。
 
輸入量
 
最大の消費国であり、自給を基準とするインドが、生産量の大幅な減少を受けて最大の砂糖輸入国となり、また、ロシア、パキスタンなどの輸入国の輸入量も増加。
 
輸出量
 
EU が、2006/07年度からの砂糖制度改革により大幅に減少する一方、国際需要の増加などを背景に増産を図ったブラジルが増加し、総輸出量に占めるブラジルのシェアが大きく拡大。
 
 
3.世界の砂糖需給
 
 LMC International Ltd.(2008/09年は推定値、2009/10年は予測値)、によれば、2008/09年度以降の砂糖生産量は、EUが砂糖制度改革による生産割当数量の削減により輸出国から輸入国に転じ、最大の消費国であり基本的には自給国であったインドも、気象変動や中央政府の価格政策などに起因するさとうきび作付面積の減少により最大の砂糖輸入国に転じた。一方、最大の輸出国であるブラジルは、生産を拡大しているものの天候不順などにより需給ギャップを埋めるまでには至っていない。
 
 ブラジルは、2009/10年度において世界の生産量の23%、輸出量の46%を占めると予測されており、同国の生産状況が世界市場に与える影響が拡大している。
 
 一方、砂糖消費量は、世界の人口増加を背景に引き続き増加傾向にある。中でも、主要消費国であるインド、中国、ブラジルやアジア新興国などでは、人口増加や経済発展による所得増加などを背景に消費量が増加すると見込まれている。
 
 世界全体の在庫量については、2008/09年度は、インドの減産により大幅に減少した。2009/10年度についてもインドの生産量が引き続き低水準となるとともに、ブラジルの生産量の増加が当初の見込みを下回ると予想されていることから、減少が見込まれる。
 
 このような状況の中、需給状況を見る上で重要な指標である期末在庫率(期末在庫量/消費量)は、2008/09年度および2009/10年度と2年連続して30%を割り込むとみられる。ただし、砂糖年度は10月〜9月であるが、近年の主要生産国であり輸出国であるブラジルの中南部の生産時期が4月から12月となっており、期末在庫率の推計は難しくなっているとされる。
 
 また、各国の経済状況、主要生産国の関連政策の見直し、為替レートや原油価格の変動など、外部の経済要因の影響を強く受けるようになっているほか、投機資金の流入による影響もあり、砂糖の需給をめぐる情勢は複雑化している。
 
 なお、ISO(国際砂糖機関)による需給見通しについては、砂糖類情報2010年2月号「世界の砂糖需給とEUの砂糖制度改革後の動向」を参照されたい。
 
 
 
4.国際価格動向
 
(1) 2009年の砂糖市場を振り返って 〜砂糖価格の高騰とその背景〜
 
 2009年のニューヨークの粗糖価格は、高騰を続けた。 
 1月の平均価格(期近)は1ポンド当たり12.24セントと2008年12月に比較して上昇したが、2月頃からインドが関税免除による輸入を開始する一方、ブラジルの製糖企業が2009/10年度の製糖を前倒しで始めるとともに、3〜4月頃から例年より早いペースで出荷を行ったため、価格は横ばいで推移した。
 
 7月頃からは、インドについて、モンスーン期の少雨から2009/10年度の作柄に対する懸念がさらに広がるとともに、世界需給のひっ迫感(在庫率の低下)が明らかになってきたことから価格は上昇傾向となり、そこに投機資金の流入が加わって上昇傾向に拍車がかかったとされている。また、8月以降には、主産地であるブラジル中南部の降雨により、収穫量が下方修正され、価格はさらに上昇した。
 
 こうした流れの中で、ブラジルをはじめとする輸出国における生産量の増加が当初見込みを下回ったこと、世界的な景気後退による需要増加の鈍化が予測されながら、中国、ロシアなどの輸入国の消費量の増加傾向が継続したことにより、在庫率は低下した。価格は年末まで堅調に推移し、12月の平均価格(期近)は、23.84セントまで上昇した。
 
 これらの砂糖価格の高騰につながった要因をまとめると次のとおりである。
 
(1)-1 主要生産国の作柄変動
 
 インドで、2年連続の減産となった。また、ブラジルも2009年の半ばより収穫時期の多雨による品質の劣化や収穫の遅れ・減少が生じ、それに伴い生産量見込みが下方修正された。
 
(1)-2 堅調な世界の砂糖消費
 
 2008/09年度の砂糖消費量は、世界的な景気後退から前年比99.7%と減少したが、世界人口の増加やインド、中国、ブラジル等の新興国やロシア、パキスタン等の輸入国における堅調な消費により2009/10年度は再び増加することが予測されている。世界の砂糖消費量は、今後も世界人口の増加とともに増加が見込まれていることも、堅調な国際砂糖価格の背景となっている。
 
 
 
(1)-3 米ドル為替相場の下落
 
 例えばブラジルレアルに対する米ドルは2009年の1月から12月にかけて大幅に下落した。これは、ブラジルの製糖工場が、米ドルの下落前と同じ額のレアルを得るためには、米ドルベースの価格が上昇する必要があることを意味している。
 
(1)-4 原油価格およびエタノール価格の上昇
 
 2008年後半の金融危機による需要減退で、原油価格が大幅に下落し、それに伴いエタノール価格も下落した。しかし、2009年になり原油価格が再び上昇するとともにエタノール価格も上昇しており、砂糖価格を下支えすることとなった。
 
 さらに、砂糖の国際市場への投機資金の流入も指摘されており、ファンダメンタルズの変化(作柄の悪化)などの情報があると投機資金が流入し、値上がりしやすい環境にあったとされている。
 
 
(2) 1月のNY市場の動き
 
〜26セント台後半から29セント台前半で推移〜
 
 1月のNY市場の砂糖定期相場(3月限)は、ポンド当たり26セント台後半〜29セント台前半の広いレンジの中の値動きで推移した。月平均値は前月の24.90セントから3.48セント高(前年同月の12.24セントから16.14セント高)の28.38セントと大幅に上昇した。
 
 4日に、ファンド筋の買いと原油先物高に後押しされ27.62セントを記録し、当限としては1981年2月以来の約29年ぶりの高値水準でスタートし、その後もブラジルの当初見込みに比べての減産予想、ファンド筋の買い、ブラジルの当初見込みに比べての減産予想、中東諸国およびアジア地域の堅調な需要に支えられ、3日連続で高値を更新したが、6日以降は投資家らの利食い売りに加え、投資ファンド筋が調整の売りを出し、11日に月間最安値の26.75セントを記録した。
 
 
 
 
 その後、世界最大の消費国インドが白糖輸入の免税措置を今年末まで延長したことやパキスタン、米国、フィリピン、インドネシアおよびメキシコによる砂糖の輸入見通しなど、旺盛な需要を背景として、再び投資ファンド筋の活発な買いが入り、上昇基調となって推移した。
 
 下旬も供給のひっ迫感やファンド筋の買いにより、引き続き上昇基調で堅調に推移し、一時的にファンド筋による利益確定の売りに値を下げたものの、世界的に広がる供給不足を背景に地合いを一層強め、29日には月間最高値である29.90セントを記録し、1月の取引を終了した。
 
 しかし2月に入ると、中国の金融引き締めの観測による新興国における需要拡大予測の後退などから投機資金が国際商品市場から引き揚げたことなどにより3日には28セント台に下落した。騰勢局面から調整局面になるとの見方も出ている。
 
 また、砂糖現物相場は、12月にはクリスマスまでに27セント台に達し、1月に入っても上昇基調が続き、27セント台後半〜30セント台後半の広いレンジの中の値動きで推移し、月平均値が前月の25.28セントから3.66セント高(前年同月の13.11セントから15.83セント高)の28.94セントと大幅に上昇した。
資料:LMC“Monthly Sugar Report”2010年1月記事等
 
5.世界の需給に影響を与える諸国の動向
 
(1) ブラジル
 
(1)-1 2000/01年度以降の推移 〜生産量の増加に伴う世界シェアの拡大〜
 
 2000/01年度からほぼ一貫して生産量を増加させている。2001/02年度からは輸出量が国内消費量を上回っており、ブラジルの生産状況が世界市場へ与える影響が大きくなっている。
 
 ブラジル産粗糖は品質が高く競争力があることから、世界の輸出量に占めるブラジル産の割合は、2000/01年度の17%から2009/10年度(予測)には46%に上昇する見込みである。また、EUの砂糖制度改革による砂糖輸出の減少も、ブラジル産のシェア拡大につながっている。
 
(1)-2 2010年2月における見通し 〜2009/10年度国際砂糖価格はブラジルの収穫状況次第〜
 
 ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)によれば、2009/10年度(ブラジル砂糖年度5月―翌4月)の中南部地域における総圧搾量は、1月前半までに5億2700万トンを上回った。砂糖生産量は2837万トン(前年度比6.57%増)、エタノール生産量は229億リットル(前年度比7.54%減)となった。天候不良にもかかわらず、80以上の製糖工場が通常は休業期間にあたる1月後半まで圧搾作業を継続したとみられる。
 
 これまでのところ、圧搾量、砂糖生産量、エタノール生産量ともUNICAが2009年初頭に示した当初の予測を下回っている。UNICAは当初、国内外の砂糖、エタノールに対する強い需要に生産者側が対応することを織り込んでいた。しかし7月以降、さとうきびの収穫は例年にない多雨の影響を深刻に受けており、この結果、砂糖生産量は463万トンの減少、エタノール生産量は41億リットルの減少に下方修正された。
 
 一方、LMCは、2009/10年度(10月―翌9月)の国際砂糖価格はブラジルの2010/11年度(5月―翌4月)の収穫状況次第であるとする。圧搾用のさとうきびは豊富にあり、多くの製糖工場が通常(4月)よりも一カ月早い、3月中旬までに生産開始を予定している。収穫が順調に進めば、ブラジルの砂糖生産量は現時点の予測より500万トン増える可能性もある。しかしながら、今後の多雨などの天候により収穫の早期開始が阻害される恐れもある。市場は供給減少に対して非常に敏感になっており、もしブラジルが前年度と同様に生産問題に面した場合、砂糖価格はさらに上昇するとみられる。
 
 なお、今後の見通しについてLMCでは、穀物および原油の価格高騰からさとうきびの砂糖への仕向先割合が50%を下回った前年度から一転し、2009/10年度には再び砂糖価格の高騰から50%を超えると予測している。
 
 これに対し、UNICAは、さとうきび生産量の80%以上を占める中南部における2009年11月現在(2009年5月―11月、間作期間生産量を含む)の砂糖への仕向割合は43.31%、砂糖生産量は前年度比6.53%増の2830万トンであったが、その後、砂糖への仕向割合が低下し、12月後半だけでみると砂糖仕向け割合はわずか28.91%までに低下し、12月後半の砂糖生産量は3万5230トンにとどまったとしている。砂糖価格は高値安定基調(図7参照)にあるが、エタノール価格も上昇基調(図10を参照)となっていることから、今後の砂糖仕向量に注視する必要がある。
 
 
 
(1)-3 2009年度の粗糖・白糖貿易状況
 
 ブラジルは世界最大の輸出国であるが、EUとインドが輸入国に転じたことにより、ますますその輸出動向が国際市場で注目されるようになった。2003/04年度と2008/09年度を比較すると、ロシアが最大の輸出先国であることは変わらないが、インドがロシアに次ぐ輸出先国となった。また、中東、アフリカ地域への輸出についても、EUが砂糖制度改革により白糖輸出を減少させたことから、大規模の精製糖工場を持つアラブ首長国連邦、アルジェリアへの粗糖輸出が増加している。
 
 2009/10年度の第1四半期(10―12月)では、インドへの輸出が継続するとともに、精製糖工場が立地する国への輸出が増加している。
 
 
(2) インド
 
(2)-1 2000/01年度以降の推移 〜不安定な生産と世界需給におけるかく乱要因〜
 
 インドは、多くの生産地域で降雨をモンスーンに依存する不安定な生産である上、中央政府による価格政策(Statutory Minimum Price、2010年よりFair Remunerative Price)などに起因するシュガーサイクル(注)があり、数年を1サイクルとする作付面積および生産量の変動がみられ、さらに、このシュガーサイクルに気象変動などが加わり、豊作年には輸出国、不作年には輸入国となり、世界市場にとってのかく乱要因となっている。2003/04年度および2004/05年度には純輸入国であったが、2005/06年度から2007/08年度は国内砂糖価格の上昇により国内生産が増加し輸出国に転じた。しかし、2008/09年度以降は供給過剰による砂糖およびさとうきび買付価格の下落を反映した生産者の生産意欲減退、穀物価格高騰によるさとうきびから小麦や米などへの転換、2年続けてのモンスーン期の少雨による生産量の大幅な減少から再び輸入国に転じている。特に2009/10年度には粗糖600万トンに上る輸入が見込まれており、国際価格高騰の大きな原因の1つとなっている。
 
注:製糖会社の販売価格である市場価格が、最低農家支払価格である政策価格を下回ると、製糖会社は赤字となり農家へのさとうきび代金の支払いが滞るため、農家は収益が減少し、さとうきび作付面積を減少させたり、伝統的含みつ糖であるグル、カンサリの製造に仕向けるなどする。他方、市場価格が上昇すると、農家支払価格も上昇するため、農家はさとうきび作付面積を増加させる。このようにという、市場価格と政府価格という二重価格に起因したサイクル。
 
 
 
 
(2)-2 2010年2月における見通し 〜高まる輸入需要〜
 
 世界供給がひっ迫する中、最大の消費国であるインドの輸入動向には特に注目が集まる。2月初めの砂糖価格の下落を受け、インドは再び輸入を開始するとの観測もある。同国の生産量は前年度の水準(1450万トン白糖換算)以下となり、消費量は2300万トンと予測されるため、約700万トン(粗糖400万トン、白糖300万トン)の輸入需要があるとみられる。インドはこれまでに粗糖200万トン、白糖55万トンを輸入しており、さらに粗糖100万トン、白糖65万トンの輸入が契約されている。これらが行われても、インドはさらに白糖を200万トン輸入する必要があるとみられる。
 
 インド以外の国々でも白糖需要が高まっていることから、2010年後半の白糖・粗糖価格は上昇するとみられる。特に、白糖の場合、生産および港湾処理の能力に限界があるため、粗糖に比べ納入期間が長くなることが懸念される。
資料:LMC“Monthly Sugar Report”2010年2月記事
 
(2)-3 2009年度の粗糖・白糖貿易状況
 
 豊作年には、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン等近隣諸国に輸出されていたが、2006/07年度、2007/08年度ではアラブ首長国連邦やイエメン等精製糖工場が立地する中東諸国、またインドネシア、マレーシア等の東南アジア諸国へも輸出された。
 
 生産量が大幅に減少し輸入国に転じた2008/09年度では、その大半を世界最大の輸出国であるブラジルから輸入した。
 
 
 
 
(3) 中国
 
(3)-1 2000/01年度以降の推移 〜管理貿易による需給調整を実施〜
 
 中国は、工場集約による生産性向上やサッカリン生産の制限などを背景に砂糖生産量の増加がみられる。国内の砂糖価格は政府の介入を通じて、また、輸入も関税割当制度を通じて管理されている。基本的に輸入国であるが、輸入先国は以前からの結びつきの強いキューバや、ブラジル、タイなどとなっている。
 
 
 
(3)-2 2010年1月における見通し 〜消費量は生産量を上回るが十分な国家備蓄〜
 
 中国は、巨大な砂糖国家備蓄を抱える国である。2008/09年度の砂糖生産量は、白糖換算で1243万トン、前年度比16.2%減であるが史上2番目に高い生産水準となった。一方、砂糖消費量は白糖換算で1390万トンとみられ、消費量が生産量を上回っている。しかしながら、中国政府は過去2年間に200万トン以上の砂糖を備蓄しており、これらの備蓄が国内における砂糖価格の安定のため放出されるとみられる。2009年12月、中国政府は2回にわたり計50万トンの砂糖を放出した。さらに150万トンの砂糖が今年度中に市場に放出されるとみられ、そのうち36万トンは1月後半に放出される見込みである。
 
 2009/10年度の収穫面積は、さとうきび生産地域においては価格の優位性をもつ他作物への転換により、てん菜の生産地域においては政府の最低買付価格や政府買入制度により保護されている穀物などへの転換によりいずれも減少する見込みであり、両地域における少雨の影響で生産量も減少する見込みである。
 
資料:LMC“Statistical Update”2010年1月記事
   :中国糖業協会年報2009年10月31日記事
   :USDA“GAIN Report”2009年11月3日記事
 
 
 
(3)-3 2009年度の粗糖・白糖貿易状況
 
 中国は世界第二位の砂糖消費国であり、消費量は国内生産量を上回るため輸入国となっている。最大の輸入先国はキューバであるが、これは貿易協定に基づき、同国から年間40万トン前後の砂糖を輸入しなければならないためである。豪州の生産低迷による輸出量の減少、および豪ドル高の影響により豪州の割合は低下しつつあり、一方でブラジルの割合が高まっている。2003/04年度と2008/09年度を比較すると、近年ではブラジルはキューバに次ぐ輸入先国となっている。他の主要な輸入先国は近隣のタイ、韓国である。また、アジア諸国への輸出が多いグアテマラの割合も高い。中国国内では品質の高い白糖に対する需要が強いため、韓国からは白糖が輸入されている。
 
6.日本の主要輸入先国の動向
 
 2008年における主要な砂糖の輸入量140万1542トンのうち、甘しゃ糖・分みつ糖(HSコード1701.11―190)が138万3585トンと砂糖輸入量の98.7%を占め、また、甘しゃ糖・分みつ糖の輸入量の64.4%をタイ、24.2%をオーストラリア、10.8%を南アフリカと、この3ヵ国で99.6%を占めている。
 
(1) タイ
 
(1)-1 2000/01年度以降の推移 〜日本の最大の輸入先国〜
 
 タイは伝統的な輸出国であり、日本の砂糖の最大の輸入先国である。生産量のうち6割〜7割は輸出に仕向けられている。おもな製糖時期は12月〜5月であり、アジア地域における北半球の砂糖輸出国として、確固たる地位を築いている。
 
 生産量は通常700万トンを超える程度であるが、干ばつなどにより2004/05年度や2005/06年度のように500万トン水準に落ち込むことも見られ、その時には固定的な輸出先以外への輸出量が大幅に減少する。
 
 
 
(1)-2 2010年1月における見通し 〜価格上昇を受け生産量増加の見込み〜
 
 2008/09年度からの価格上昇を受け、2009/10年度の砂糖生産は前年に比べ増加する見込みである。穀物価格高騰時にとうもろこし、キャッサバなどの穀物栽培に転換した生産者が、再びさとうきび生産に回帰する動きも一部にあるとされている。
 
(1)-3 2009年度の粗糖・白糖貿易状況
 
 タイはブラジルに次ぐ世界第二位の輸出国である。タイの主要な輸出先は日本のほか、インドネシア、カンボジア、台湾、韓国といったアジア諸国である。2003/04年度と2008/09年度を比較すると、マレーシアとバングラデシュの割合が低下しており、これは両国が砂糖の輸入先をタイからブラジルにシフトしたためと考えられる。08/09年度に生産量が大幅に減少したインドは同年度にタイからの輸入を再開した。
 
 
 
(2) 豪州
 
(2)-1 2000/01年度以降の推移 〜タイに次ぐ輸入先国〜
 
 豪州は、生産量のうち7割〜8割を輸出するオセアニア地域における砂糖の主要輸出国であり、日本にとってタイに次ぐ主要輸入先国である。南半球に位置することから、タイとは製糖時期がずれるため日本への周年供給の役割を果たしている。
 
 国内消費量は安定しているため、輸出量は生産量の変動に直結している。近年は500万トンを下回る生産水準となっている。
 
(2)-2 2010年1月時点での見通し 〜2009/10年度産は主産地の気象変動などで不作〜
 
 2009豪州砂糖年度(7月―翌6月)の製糖シーズンは、ほぼ終了した。
 
 豪州の砂糖生産の95%を占めるクイーンズランド州の砂糖生産者組合のプレスリリースによれば、2009/10豪州砂糖年度のさとうきび生産は、前半に北部で発生した洪水や、他作物への転作、2008/09豪州砂糖年度さとうきびの収穫遅れにより減少し3000万トンとなったが、収穫時期の天候が乾燥傾向のためショ糖含糖率は良好であり収穫も早期に終了したことから、2010/11豪州砂糖年度の作付は順調に開始されると見込まれる。
 
 現在の課題は、水、燃料、労働コストの上昇であるが、特に肥料の価格高騰が懸念される状況である。また、土壌流出などからのサンゴ礁の保全を目的とした州政府の規制強化も懸念されている。
 
(3)-3 2009年度の粗糖・白糖貿易状況
 
 豪州の主要な輸出先は、韓国、インドネシア、マレーシア、日本等のアジア諸国である。2003/04年度と2008/09年度を比較すると、韓国、インドネシア、マレーシア向けの割合が高まった一方、日本、カナダ向けの割合は低下した。
 
 韓国は、グアテマラが米国向け輸出の増加により韓国向け輸出が減少したこと、またインドネシアはEUの砂糖制度改革により同地域からの輸出が減少したことにより、それぞれ豪州からの輸入が増加した。
 
 一方、日本へは、豪ドル高の影響を受け、2008/09年度はタイからの輸入が増加したため、輸出が減少し、またカナダについても、同国が2004年以降、輸入先を豪州から地理的に近いブラジル、グアテマラへシフトしたことにより減少した。
 
 
 
 
(3) 南アフリカ
 
(3)-1 2000/01年度以降の推移 〜タイ、豪州に次ぐ輸入先国、輸出は減少傾向〜
 
 南アフリカもアジア地域に対する主要輸出国であり、日本の主要輸入先国である。生産量のうち、4割近くが輸出に仕向けられている。豪州と同様に南半球に位置することから、タイとは製糖時期がずれるため日本への周年供給の一翼を担っている。
 
 近年の生産量は240万トン前後で推移しており、輸出量は減少傾向にある。
 
 
 
(3)-2 2010年1月時点での見通し 〜ランド高の影響で前年並みの生産か〜
 
 2009/10南アフリカ砂糖年度(4月―翌3月)の製糖シーズンは終わりを迎えている。
 
 南アフリカ砂糖協会の2009年11月現在の推計によれば、さとうきび圧搾量および砂糖生産量は前年を下回る見込みである。
 
 通貨(ランド)の為替レートが上昇して、国際価格の高騰による収益増を享受しきれていないことから、2010/11南アフリカ砂糖年度の生産が拡大するかは不明である。
 
(3)-3 2009年度の粗糖・白糖貿易状況
 
 南アフリカの主要な輸出先は日本、インドネシア、韓国等のアジア諸国、またモザンビーク、マダガスカル、ケニア等のアフリカ諸国である。2003/04年度と2008/09年度を比較すると韓国、サウジアラビアへの輸出が減少しているが、これは南アの輸出量減少および南ア通貨ランドの為替レート上昇を受け、韓国が豪州に、サウジアラビアがブラジルにそれぞれ輸入先をシフトさせたことによる。
 
 他方、インドネシアは、砂糖制度改革により輸出が減少したEUに代わり、輸入先を南アフリカ等他の砂糖輸出国へシフトしたことから、同国向け輸出が増加した。
 
 
 
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