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国際需給

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最終更新日:2010年5月14日

1.主要国・地域の砂糖需給(2004/05⇒2009/10年度)

2010年4月

調査情報部・特産調整部

 2009/10年度(2009年10月〜2010年9月)の世界の砂糖生産量は、前年度比3.1%増の1億5640万トン(2008/09年度1億5170万トン)と見込まれている(LMC2010年1月10日現在の予測値、粗糖換算数量)。  期末在庫率(在庫量/消費量×100)は、2008/09年度27.3%、2009/10年度23.0%と、2007/08年度33.2%から2年連続の低下が見込まれている。
 
近年の国際砂糖需給構造の変化(2004/05⇒2009/10年度)
 
生産量
EUは、2006/07年度以降の砂糖制度改革による生産割当数量の削減に伴い減少、インドも、2008/09年度において穀物価格の高騰を背景に、さとうきびから穀物への作付転換が行われ、さとうきび作付面積が減少したことや、主産地であるウッタルプラディッシュ州における干ばつ、中央政府の価格政策の影響などにより大幅に減少(2007/08年度比46%減)した。一方、ブラジルは、世界各国の需要の増加を反映して増加し、世界砂糖生産に占めるシェアが23%へ拡大。

消費量
世界の砂糖の消費量は、世界の人口増加などにより、過去10年間において増加傾向で推移した。中でも最大の消費国インドが、人口および所得の増加に伴い大幅に増加し、インドに次ぐ消費国である中国も、炭酸飲料、菓子など国内需要の拡大に伴い増加。

輸入量
最大の消費国であり、自給を基準とするインドが、生産量の大幅な減少を受けて最大の砂糖輸入国となり、また、ロシア、パキスタンなどの輸入国の輸入量も増加。

輸出量
EUが、2006/07年度からの砂糖制度改革により大幅に減少する一方、国際需要の増加などを背景に増産を図ったブラジルが増加し、総輸出量に占めるブラジルのシェアが大きく拡大。

2.世界の砂糖需給と国際価格動向

2月のニューヨーク市場の動き〜24セント台前半から29セント台前半で推移(NY定期相場)〜
  2月のNY市場の砂糖定期相場(3月限)は、24セント台前半〜29セント台前半の広いレンジの中の値動きで推移した。月平均値は前月の28.38セントから1.78セント安(前年同月の13.01セントから13.59セント高)の26.60セントと大幅に下落した。  月初めには、投資家の買いに呼応するかたちで一時29.40セントと約29年ぶりに高値を更新する場面もあったが、米国の新金融規制、中国の金融引き締め、ギリシャなどユーロ圏の債務問題、ドル高など世界経済の先行き不安から5日に6週間ぶりの安値となる26.17セントを記録した。
  その後、市場では世界的な景気低迷懸念が根強いものの、一方ではパキスタン、インドネシア、メキシコ、米国およびフィリピンによる購入観測、インドをはじめとする実需筋の買いが入り、再度上昇基調となって推移した。
  下旬になると、市場は主要生産国のブラジルの次シーズンの豊作観測、ドル高やギリシャの財政問題などに対する懸念を背景とした投資家らの手じまい売りに値を下げ、26日には月間最低値である24.13セントを記録し、2月の取引を終了した。
  また、砂糖現物相場は、24セント台後半〜30セント台前半の広いレンジの中の値動きで推移し、月平均値が前月の28.94セントから1.65セント安(前年同月の13.90セントから13.39セント高)の27.29セントと大幅に下落した。
  3月にはいると、インドが主産地の降雨によるさとうきび集荷量の上方修正や、ウッタル・プラデージュ(Uttar Pradesh)州政府が輸入粗糖・精糖を許可するなど.当初見込まれていた白糖の緊急輸入がキャンセルされたことにより、20セントを下回った。

3.世界の需給に影響を与える諸国の動向

(1) ブラジル

(1)-1  2010年3月における見通し 〜圧搾順調だが回収糖度は低下〜
 
さとうきび圧搾動向
 
 さとうきび生産量の80%以上を占める中南部地域の2月前半の圧搾量は286万トンとなり、1月後半の258万トンから10.85%の増加となった。
 
 1月下旬に稼働していた製糖工場は68であったが、2月上旬には49にまで減少した。しかし、天候の回復により2月後半の圧搾は順調となり、最大40の製糖工場が圧搾を継続したとみられる。一部の工場は既に2010/11ブラジル砂糖年度(5―翌4月)へ向けた圧搾を開始している。2009/10ブラジル砂糖年度のこれまでの総圧搾量は前年同期比5.98%増の5億3247万トンとなった。
 
 2009/10年度の圧搾量は前年度より多いものの、砂糖とエタノール生産に使用できる量は少なく、前年同期比1.79%減となった。これは同年度のさとうきび1トン当たりの回収糖分(ATR)が130.62キログラムと、前年度と比べて10.34キログラム少ないためである。さらに、2月前半におけるATRは103.28キログラムと、2009/10年度の平均を下回っている。
 
砂糖とエタノール生産
 
 2月前半の砂糖生産量は5万9300トン、エタノール生産量は1億3680万リットル(含水エタノール1億920万リットル、無水エタノール2760万リットル)となり、2月前半時点における2009/10年度の砂糖生産量は2848万トン(前年同期比6.73%増)、エタノール生産量は231億8000万リットル(同7.05%減)となった。エタノールの内訳は含水エタノール170億2000万(同3.65%増)、無水エタノール61億6000万リットル(同27.67%減)である。無水エタノールの減少は、ブラジル政府が2月1日から90日間ガソリンへのエタノール混合率を25%から20%に引き下げた影響と考えられる。
 
 2009/10年度における仕向け割合は2月前半時点で砂糖42.97%、エタノール57.03%であったが、2月前半の二週間はエタノール仕向け割合が78.95%であった。
 
エタノール生産者価格は1月後半から2月前半にかけ生産原価レベルにまで下落、一方、販売価格は下落せず
 
 含水エタノールの生産者価格は下落を続け、2月15日〜19日の平均価格は1リットル当たり1.09レアル(税引き価格)であった。生産者価格の下落にもかかわらず、販売価格は上昇している。これはエタノールの流通過程で発生するマージンが多いためであるとブラジルさとうきび産業協会(UNICA)のAntonio de Padua Rodrigues氏は指摘する。ブラジル石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁によると、生産が最も多いサンパウロ州で生産者価格が1カ月間で9.5%下落する一方、販売価格は1.32%上昇した。
 
 販売価格が上昇する中、2月前半の中南部地域での含水エタノール販売量は4億3685万リットルとなり、1月後半の4億700万リットルから増加した。このことから、消費者が再び、エタノールは持続的な燃料であり、環境や経済発展に役立つものとして選択していることがうかがえる。
 
 2月前半のエタノール販売量は7億1708万リットルとなり、そのうち7億789万リットルは国内で消費され、残りの919万リットルが輸出された。
 
UNICA“Brazilian Sugarcane Industry Association”2010年2月25日、3月1日記事
 
(1)-2  粗糖・白糖貿易状況
 
 2010年1月の輸出量は、インド向けが前年同月比230%の41万5000トン、アルジェリア向けが同228%の9万8000トン、アラブ首長国連邦向けが同154%の8万6000トンと大幅に増加したが、ロシア向けが同54%の17万5000トン、バングラデシュ向けが同74%の10万6000トンと大幅に減少し、全体で同92%の178万3000トンと減少した。
 
 
 
 

(2) インド

(2)-1  2010年3月における見通し 〜さとうきび生産量上方修正〜
 
 インド政府は干ばつの影響などによる生産量の低下が当初予想されていたほど大きくないとして、さとうきび生産量を上方修正した。
 
 LMCの2010年1月の予測では、2009/10年度(10月―翌9月)の同国の砂糖輸入量は600万トン(前年度比36%増)と見込まれていた。インド政府は、白糖輸入の免税措置を2010年末まで延長し、粗糖200万トン、白糖55万トンを輸入し、輸入が契約されている粗糖100万トン、白糖65万トンの以外にも、さらに白糖を200万トン輸入する必要があるとみられていた(LMC“Monthly Sugar Report”2010年2月)。
 
 しかし、LMCの2010年3月の報告によれば、ウッタル・プラデーシュ州と並ぶ生産地であるマハーラーシュトラ州では降雨により単収が増加し、2月までの5カ月間で砂糖生産量は前年同期比5.5%増の1325万トンに達した。同州は、2009/10年度の砂糖生産量が前年度を90万トン(同19.6%増)上回る550万トンと見込んでいる。この結果、インド全体の砂糖生産量は、前回予測の1400〜1500万トンから1600万トンに上方修正された。さらに、ウッタル・プラデーシュ州政府は州内での輸入粗糖の精製を禁止していたが、これを許可したことから、輸入粗糖を原料とする砂糖90万トンが市場に供給されることになった。
 
 以上のことから、白糖の緊急輸入という事態は回避されたもようである。
 
(2)-2  粗糖・白糖貿易状況
 
 上述のように、さとうきび生産は回復基調にあるものの、依然として輸入粗糖・白糖を含めた供給量は消費量を満たしていないことから、インド政府は、今後、さとうきび生産および輸入粗糖・白糖を含めた砂糖供給量と国内消費量の状況を見ながら輸入量を調整すると推測される。自給国から輸入国へと転換し、国際砂糖価格への影響が大きい同国の今後のさとうきび生産動向が注目される。
 
 

(3) 中国

(3)-1  2010年3月における見通し 〜干ばつにより生産減の見込み〜
 
 中国国家防総弁公室によれば、2010年2月20日現在、全国で5336万ム(355.7万ヘクタール)が干ばつの影響を受けている。2008年実績において、さとうきび作付面積の17.8%、さとうきび生産量の15.3%を占める雲南省では、ほぼ全域にわたって干ばつの影響を被るとともに、夜温が0度となるなど霜害も発生しており、砂糖生産量は減少する見込みである。雲南省糖業協会によれば、被害面積は約15万ム(1万ヘクタール:15ム=1ヘクタール))に及び、圧搾量は2.57万トン減少すると予測している。
 
 一方、広西糖業協会によれば、2008年実績において、さとうきび作付面積の62.5%、さとうきび生産量の66.2%を占める中国最大の生産地である広西壮族自治区の、2009/10年度(10月―翌9月)における圧搾量は、2月現在、前年同期に比べ167万トン減の4576万トンとなるが、歩留まり(産糖率)が同0.63ポイント増の12.5%と上昇したことにより、砂糖生産量は同9万トン増の572万トンとみられる。しかし、さとうきび作付面積は同6%(90万ム(6万ヘクタール))減の1480万ム(98.7万ヘクタール)に減少したこと、2009年8月から継続している干ばつにより、今シーズンの砂糖生産量は700万トン前後となると予測している。
 
 LMC“Monthly Sugar Report”2010年3月によれば、2009/10年度の中国の砂糖生産量は、史上2番目の豊作であった前年度に比べ140万トン減の1100万トン(白糖換算)になると予測される。
 
 このような供給減を反映して、国内砂糖価格は6ヵ月連続して上昇しており、2010年1月の平均卸売価格は1トン当たり5,049元(7万686円:1元14円で換算)、前月比4.75%高、前年同月比78.3%高と、2006年以降最高となった。このような値上がりから、中国政府は2009/10年度に入ってから3月19日現在で4回にわたり計112万トンの白糖国家備蓄を放出し、市場価格の鎮静化を図っている。
 
 
(3)-2  粗糖・白糖貿易状況
 
 中国農業部によれば、2009年の食用砂糖輸入量は、前年比36.5%増の106.4万トンと大幅に増加した。主な輸入先国は、キューバ、ブラジル、タイであった。2009/10年度においては、さとうきび生産地域(広西壮族自治区、雲南省など)における干ばつにより減産が予想され、また、北方のてん菜生産地域(黒竜江省や新疆自治区、内蒙古自治区等)では、政府の最低買付価格や政府買入制度により保護されている穀物への品目転換により作付面積が減少しているもようであることから、白糖の国家備蓄の放出を行いながらも、輸入数量は増加すると予測される。
 
 

4.日本の主要輸入先国の動向

2009年における砂糖輸入量129万9627トンのうち、甘しゃ分みつ糖(HSコード1701.11―190)が128万3443トンと全体の98.8%を占め、そのうち57.8%をタイ、27.3%を豪州、11.7%を南アフリカと、この3ヵ国で96.8%を占めている。

(1) タイ

(1)-1  2010年3月における見通し 〜さとうきび生産量を下方修正〜
  LMCは2010年3月、2009/10年度のタイのさとうきび生産量を6800〜7000万トンとし、前回予測の7100万トンから下方修正した。また、歩留まりも下方修正されたことから、今年度の砂糖生産量は前年度からわずかに減少し730万トン(粗糖換算)となるとみられる。圧搾は4月末に終了が見込まれる。  タイさとうきび・砂糖委員会事務局(Office of the Cane and Sugar Board)は当初、2010/11年度のさとうきび生産量について、砂糖価格の高騰により、国内農家がさとうきび生産にシフトすることから増加を見込んでいた。しかし、気象庁は夏季の気温は非常に高く、雨期の降雨量は通常よりも少ないと予測していることから同委員会は、当初予測を10%下回る7100万トン〜7200万トンに下方修正した。
(1)-2  粗糖・白糖貿易状況
 2010年1月の輸出量は、日本が前年同月比172%の4万3000トン、インドネシアが同158%の8万4000トンと大幅に増加したが、カンボジア、台湾向けなどが減少し、全体で同108%の28万5000トンであった。

(2) 豪州

(2)-1  2010年3月における見通し 
  〜2010/11年度は砂糖生産量、輸出量ともに前年度比6.2%増の見込み〜
 
 豪州農業資源経済局(ABARE)が公表する“Australian commodities”2010年3月によると、2010/11豪州砂糖年度(7月―翌6月)の砂糖生産量は前年度比6.2%増の480万トン、砂糖輸出量は同6.2%増の345万トンとなると予測される。また、2010/11年度のさとうきび作付面積は2009年の砂糖価格高騰により、前年度比7%増と、2002/03年度以来の増加となる見込みである。
 
 2009/10年度のさとうきび生産者価格は平均で1トン当たり51豪ドルになるとみられ、2008/09年度の同32.46豪ドル、2007/08年度の同26.39豪ドルから大幅に上昇する。2009/10年度の砂糖生産量は前年度比5%減と予測されるが、総生産額は同55%増の15億豪ドル(1222億円:1豪ドル=81.48円)となる見込みである。ただし、砂糖価格は今後値下がりが予測されることから、2010/11年度の生産者価格もさとうきび1トン当たり39.70豪ドルに下落するとみられる。
 
(2)-2  粗糖・白糖貿易状況
 
 ABARE“Commodity statistics 09”によれば、2008/09豪州砂糖年度の粗糖(バルク)輸出量は、2004/05年度の415万3000トンから2008/09年度は318万9000トンと減少傾向となっている。輸出先国では、インドネシアへの輸出が増加傾向にあるが、マレーシア、中国、カナダ、サウジアラビアなどが減少傾向となっている。日本への輸出量も、2004/05年度の76万3000トンから2008/09年度は51万トンと減少傾向となっている。
 
 LMC“Monthly Sugar Report”2010年3月によれば、2009/10年度は、ほかの作物への転換などによりさとうきび生産量が減少したが、ショ糖含有率は上昇したことから砂糖生産量は450万トンと前年度比2.5%減にとどまり、輸出量も国際砂糖価格の高騰から320万トン(粗糖換算)と前年度並みの水準を維持するとみられる。
 
 

(3) 南アフリカ

(3)-1  2010年3月の見通し 〜砂糖生産の増加見込めず〜
 
 南アフリカ砂糖協会(South African Sugar Association)によれば、水不足により砂糖生産の増加は見込めないとの見方を示している。南アフリカの砂糖生産量は近年240万トン前後で推移し、その内、半分程度が輸出されている。
 
(3)-2  粗糖・白糖貿易状況
 
 2009年の輸出量は、日本向けが前年比85%と減少したが、不足が伝えられているインドネシア向けが前年の6倍となる18万6000トン、モザンビーク向けが前年比107%の16万2000トンとかなり増加し、全体で同133%の89万5000トンと増加した。
 
 
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
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