当機構では、平成20年度において、東京大学大学院農学生命科学研究科中嶋康博准教授をはじめとする調査グループと共同で調査を行い、地理情報システムと取引記録データの新たな活用方法の調査結果を報告した(砂糖類情報2009年8月号「
南大東島におけるさとうきび生産の変動とその安定化要因の考察」参照)。
本稿は、前述の「砂糖類情報」において報告した地理情報システム(GIS)を利用したさとうきび生産のデータベース作成に関する続報である。前回の報告で試みた手法を点検し、地理情報の精度を高めて、より完全なデータベースの構築を試みた。
今回構築したデータベースは、製糖工場における操業計画や収穫搬入計画のみならず、さとうきびの収量や糖度を通じた経営分析、ひいては営農指導など生産性向上のための多様な活用が期待できる。
前稿でも述べたように、製糖工場と農家との原料(さとうきび)取引の記録は生産状況を理解するために有用なデータであり、収穫・搬入の実態はほ場ごとに把握されている。また、品質取引制度の導入以降は、ほ場ごとの平均糖度も明らかになっている。
製糖工場は、すべてのほ場の生産(出荷)者名、場所、収穫面積、作型、品種、予想単収、予想出荷量、予想糖度を事前に確認して、原料の搬入割り当てを行い、製糖期の工場の操業計画を立てている。また農家への原料代金の支払いのため、原料搬入量・糖度・搬入日・収穫ほ場も正確に記録されている。なお、平成19/20年産より農家の生産状況を把握するための植え付け(OCR)調査(*1)によって、ほ場のより一層正確な特定ができるようになっている。
また、いわゆる「野帳」と呼ばれる生産者ごとの作付実績および生産成果を記録した原票から生産活動の実態をすべて把握することができる。本報告は南大東島を対象に調査した結果を取りまとめたものであるが、同島のほ場ごとの面積は大きいので、収穫されたさとうきびがどのほ場由来のものかほぼ間違いなく特定することができる。
*1:JAおきなわが実施するOCR調査票(「さとうきび生産者圃場植付調査票」)を活用した調査。