サンパウロ州では、工場からサプライヤーへのさとうきび代金の支払方法は、製糖業者の団体であるUNICAとさとうきび生産者の団体であるORPLANAで構成するCONSECANA委員会によって管理されている。同委員会は、UNICA およびORPLANAからそれぞれ14人ずつ選出された計28人で構成され、価格を決定するにあたりサンパウロ大学農学部や農牧研究公社(EMBRAPA)に市場価格などの調査を委託しており、さとうきび技術研究所(CTC)も調整役として関わっている。
さとうきび生産者へのさとうきび代金の支払は、1998年より従来の固定価格制に代わり、砂糖・エタノールの販売から得た収益のうち、生産コストに占めるさとうきびの栽培、収穫、工場までの搬入に要したコストの比率に見合った額が分配される方式が導入された。導入の背景には、工場がさとうきびを原料に砂糖とエタノールの両方を生産していることが挙げられる。
このため、さとうきび代金は、搬入したさとうきびから砂糖とエタノールを生産できるしょ糖と還元糖(ぶどう糖と果糖)分の合計値、即ち回収糖分(ATR)を基に決定される。これは、砂糖がしょ糖を主成分としているのに対して、エタノールはさとうきびの搾汁液と糖みつに含有されるしょ糖と還元糖を発酵させて生産されることによる。
さとうきび代金を算出する際の単価は、トラックごとのさとうきび1トン当たりのATR量(キログラム)に、工場ごとのATR1キログラム当たりの価格を乗じた額である。具体的には、以下のようになる。
まず、さとうきびの糖度などから、トラックごとのさとうきび1トン当たりATR量(キログラム)『A』が算出される。
次に、国内および輸出向け精製糖や輸出向け粗糖など9つの製品を単独で生産した場合のATR 1キログラム当たり州平均価格(Luiz de Queiroz農業学校(ESALQ)が算定)をベースに各工場における製品の生産量を勘案して工場ごとのATR 1キログラム当たり価格『B』が算出される。さとうきび生産者には、この『A×B』により求められるトラックごとの単価に搬入量を乗じて得られた代金の8割を毎月末締めの翌月5日に仮払いし、最終的な支払いはその年の生産終了後に額が確定次第、残りの2割を精算払いしている。
ORPLANAによると、2009/10年度の州内のさとうきび平均単価はトン当たり54.144レアル(A:144kg/トン×B:0.3760レアル)であり、1レアル50円とすると約2,707円/トンになる。
なお、製糖過程によるバガスなどの付加価値分は、さとうきび生産者の収益に反映されない。現在、分配率は61%がさとうきび生産者、残りの39%が工場となっているが、焼畑廃止に伴う機械化収穫への移行に伴い、さとうきびの原価が変わるため、分配率についても見直す動きが出始めている。