米国の砂糖制度の要点は、以下の6点である。
(1)価格支持(ローンプログラム)
国内の生産者を保護するため、砂糖を担保にしてCCC(Commodity Credit Corporation:商品金融公社)が製糖業者に融資を行う制度である。
融資の資金は生産者へ直接支払われるのではなく、製糖業者へ支払われ、製糖業者を通じて生産者へ支払われる仕組みとなっている。
また、この価格支持制度はノンリコースローン(nonrecourse loans)とも呼ばれ、期末に担保価値が融資額を下回った場合でも融資を受けている者は担保以外の責任を負わない仕組みとなっている。(いわゆる「質流れ」に相当する。)
2010/11年度の融資単価は、次のとおりとなっている。
・甘しゃ糖(粗糖)2010年18.50セント/ポンド
・てん菜糖2010年23.77セント/ポンド
(2)在庫削減(PIKプログラム)
減反した面積に応じてCCC所有の在庫砂糖を減反報奨金の代わりに支給し、農家はそれを市場で販売できる制度である。(PIK=Payment in Kind)
既に作付済みのてん菜・さとうきびを減反の対象とする場合は、バイオエネルギー用に販売されなければならない。
(3)販売割当(アロットメントシステム)
前年度の8月に決定したOAQ(砂糖の年間推定消費量)(*1)の85%を食用として製糖事業者に対して割り当てる。
(*1)OAQ:Overall allotment quantity、USDAがWASDE(世界農産物需給予想)及び官報で公表する予想値。
(参考)2010年の推定消費量:923万5250ショートトン(1ショートトン=0.9072トン)
(4)関税割当(TRQs)
粗糖と精製糖に関して、国際貿易協定に従い、最低水準(年間推定消費量の15%に相当)の関税割当を行う。災害など緊急事態の場合は、4月1日を基準日にして割当数量を増やすことが可能で、また、割当が不十分であれば、再度の追加も可能である。国内市場に影響がないと判断されれば、粗糖の関税割当を増やすことも出来る。
(5)貯蔵施設融資制度
てん菜およびさとうきびの経営安定に資するため、倉庫および製糖設備の建設若しくは増強を行う製造事業者に対して融資を行うもの。
(6)エタノールプログラム
NAFTA(北米自由貿易協定)により2008年からメキシコの砂糖を無税・無枠で輸入することが認められことから、国内砂糖の国内価格暴落を防ぐため、2008農業法で新たに導入された。この制度では、仮にメキシコからの輸入量が増えた結果、国内供給量が需要量を上回った場合、その余剰分を食用ではないエタノール用へと転用する。
余剰が発生した場合は、CCCは入札を行い、エタノール製造業者へ砂糖を売り渡す。この砂糖は、粗糖、精製糖、精製過程の製品すべてが対象となり、アメリカ米国内の市場取引者すべてが購入できる。ただし、製糖業者が販売できる数量は(3)の販売割当の範囲内である。
なお、入札で差損が生じた場合はCCCの財政負担となる。