(2)−2 最近の運用状況
(a)Aクオータ割当量と国内販売価格 〜国内供給確保のため割当量を増加〜
2010/11年度のAクオータは、200万トンから250万トンに引き上げられた。これは、2010年に国内向け砂糖が不正に輸出され、輸入が必要な事態となったことに起因している、と政府関係者も認めている。国際価格が上昇している中で国内向け割当量が引上げられたことについては、国内製糖業者からの反発もあったものの、「第一に優先されるべきは国内供給の確保であり、輸出余力減はやむを得ない(政府関係者)」という姿勢で決定となった。しかしながら、年度途中であってもこのAクオータ数量は変更できることから、年度内に変更されるのではないか、との見方が強い。一方、国内飲料メーカーなどの加工業者にとっては、国内の砂糖価格が国際価格を下回った場合、Aクオータの砂糖を使用した製品を輸出できる、というメリットが生まれる可能性も考えられるが、これまで加工業者は輸出向け製品にはCクオータの枠を利用しているため、それをAクオータに切り替えることは取引上容易でないと思われる。
一方、国内販売価格については前年度から据え置きのキログラム当たり20.33バーツ(工場卸売価格、付加価値税7%含む)とされた。これには2008/09年度に基金の赤字(最大で224億バーツ、約623億円)解消の目的で措置されたキログラム当たり5バーツの拠出金が含まれる。この措置は2年間の時限措置と言われ、現在は基金の赤字額も大幅に改善できていることから(現在は約40億バーツ)、需要者からは廃止を望む声があったものの継続されることとなった。なお、拠出金や付加価値税を除くと、製糖業者が実際に得る額は白糖でキログラム当たり14バーツ、精製糖同14.65バーツとなる。
(b)さとうきび価格 〜過去最高の水準に〜
2010/11年度のさとうきび1トン当たりの期首価格は、1トン当たり945バーツ(2,627円)となった。これはCCS(Commercial Cane Sugar、可製糖率)10%の価格となっており、1%上昇するごとに56.7バーツが上乗せされる。前年度の期末価格1000バーツ(CCS10%)と比較すると、5.5%安となっているが、この要因としては、(ア)バーツ高ドル安傾向を踏まえ、為替を1ドル=30バーツと想定したこと(イ)Bクオータ価格、すなわち粗糖の輸出価格自体もポンド当たり20セントと現在の水準から見れば低めに見積もっていること―が挙げられる。
これに加え、政府は2010年12月、農家へさとうきび1トン当たり105バーツを支払うことを決定した。この措置は、(ア)干ばつや洪水被害によって単収が低下したこと(イ)肥料価格など生産コストの上昇(ウ)バーツ高ドル安による輸出収入の減少―による農家の収入減を緩和するためとしているが、一部には総選挙に向けた農家対策と見る向きもある。この財源は、基金の資金が充てられることとなっているが、実際は農業銀行からの融資によって賄われ、その予算額は約68億バーツ(105バーツ×6800万トン、約189億円)に上り、再び基金の赤字として計上される。
この措置を含めた実質的なさとうきび1トン当たりの価格は、945+56.7×(11.98―10)+105=1,162バーツ(3,230円、CCSは過去3年間の平均値11.98%を使用)になり、過去最高値となる。