4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
最終更新日:2011年5月9日
4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向
2011年5月
ブラジル
(1)2011年4月における生産見通し
〜生産量は過去最高の4090万トン〜
2010/11ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)の生産は終了した。同年度のさとうきび収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰による作付け増加を受け、788万ヘクタール(前年度比4.4%増)に増加する見通しである。さとうきび生産量は、主産地の中南部地域で乾燥した天候による単収の低下や一部の工場が糖度を高めるため収穫を翌年度に回したことが影響し、6億1970 万トン(同2.2%増)と昨年7月の予測から4400万トン下方修正されたものの、過去最高に達したとみられている。これにより、砂糖生産量も過去最高の4090万トン(粗糖換算、同13.5%増)と見込まれているが、昨年7月時点の予測を130万トン下回る。なお、エタノール生産量は2760万キロリットル(同8.7%増)と予測される。
生産の約9割を占める中南部地域では、一部の砂糖・エタノール工場が既に2011/12年度の生産を開始したとみられているが、大半の工場は、糖度を高めるため、さとうきびの生育期間を延長し、4月後半以降の操業となる見通しである。前年度に比べ1カ月以上遅くなるものの、糖度の上昇が期待されることから、砂糖生産にとってはプラスになるとみられる。
ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)によれば、2011/12年度の中南部地域におけるさとうきび生産量は5億6850万トン(前年度比2.1%増)、砂糖生産量は3460万トン(同3.3%増)、エタノール生産量は2550万キロリットル(同0.5%増)と予測されている。なお、砂糖価格高騰を背景に工場の砂糖生産能力が拡大された影響により、製糖向けの割合は45.3%と、前年度(44.7%)に比べ高まると見込まれている。
(2)貿易状況
〜輸出量は前年度比10.1%増加〜
2010/11年度の砂糖輸出量は2840万トン(粗糖換算、前年度比10.1%増)と、生産量と同様、過去最高に達する見通しである。ただし、昨年7月の予測から140万トン引き下げられた。消費量は1250万トン(粗糖換算、同1.9%増)と見込まれている。なお、UNICAによれば、2011/12年度における中南部地域の砂糖輸出量は2490万トン(同2.5%増)に増加すると予測されている。
3月の砂糖輸出量は前年同月の実績(130万トン)を上回る140万トンとなり、主要輸出先はロシア、ナイジェリア、モロッコであった。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, April 2011”
ブラジルさとうきび産業協会(UNICA) “Media Center” 2011/4/1記事
インド
(1)2011年4月における生産見通し
〜砂糖生産量は前年度から大幅増加〜
2010/11インド砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰による作付け増加を受け、496万ヘクタール (前年度比20.0%増)に増加するとみられる。さとうきび生産量は3億4510万トン(同23.2%増)と大幅増加が見込まれている。砂糖生産量は、さとうきびの増産に加え、アルコール生産に利用されるグル*注1の需要減少により、さとうきびが製糖向け割合高位水準(約7割)で維持されることから、2660万トン(粗糖換算、同31.0%増)と、前年度から大幅に回復すると見込まれている。
主産地の製糖開始時期が例年に比べ遅れたにもかかわらず、インド全体の砂糖生産量は3月15日までに1850万トン(前年同期比20.9%増)に達し、前年度を大幅に上回った。懸念材料はある。悪天候などの影響でさとうきびの単収および糖度が当初見込みを下回っており、さとうきびおよび砂糖のいずれの生産量も予測を下回るとの懸念も生じている。
最大の生産地マハーラーシュトラ州では、3月15日までの砂糖生産量が645万トン(前年同期比19.2%増)に達した。増産に反して、不安材料もある。砂糖歩留まりが前年度を下回ったほか、製糖工場の圧搾能力不足も問題となっている。州政府は、さとうきびの搬送先を分散させるため、生産者がほ場から50キロメートル以上離れた工場にさとうきびを搬送する場合、1キロメートル毎に3ルピーの補助金(さとうきび1トン当たり)を支払うこととした。ただし、さとうきびは収穫後、時間の経過とともに糖度が低下する。長距離の搬送は砂糖歩留まりが低下し、砂糖生産に悪影響が懸念される。
ウッタル・プラデーシュ州では、3月15日までの砂糖生産量が530万トン(前年同期比9.2%増)と、前年度をかなり上回ったが、昨年の長雨の影響で単収が低下し、さとうきび生産量が最終的には当初予測を下回るとみられている。
中央政府は、2009年12月以降、従来の法定最低価格に代わって適正価格制度(FRP:Fair and Remunerative Price)を導入した(なお、インドの砂糖制度については砂糖類情報2010年4月号「インドの砂糖産業の概要〜砂糖生産と政策〜」を参照されたい)。この価格について、2011/12年度は前年度比4.2%高の1,450ルピー(2,958円、1ルピー=2.04円*注2)に設定した。価格の引き上げは、生産意欲の向上が期待できるものとみられている。
*注1:インドの伝統的な含みつ糖
*注2:TTS相場3月最終日
(2)貿易状況
〜輸出量は220万トンの見込み〜
2010/11年度の砂糖消費量は2550万トン(粗糖換算、前年度比2.2%増)と、年々消費は伸びている一方で、生産量も堅調であることから、約100万トンの余剰が見込まれている。
政府は3月下旬、OGL*注1方式による国産原料由来の砂糖50万トンの輸出を許可した。輸出許可は、昨年12月に決定されたものの、国内食料価格の高騰を理由に実施が保留されていた。インドは今年度において約100万トンの余剰が見込まれているが、3月末で撤廃予定であった国内業者に対する砂糖在庫の保有規制が9月末まで延長されるなど、国内食料価格上昇への懸念が依然として強いことから、同方式による輸出がさらに追加されるかは不透明である。今年度においてはALS*注2制度に基づく白糖120万トンの輸出も許可された。生産量が予測通り前年度から大幅に増加した場合、全体の輸出量は220万トン(粗糖換算)に達すると見込まれている。なお、2010年9月における粗糖・白糖輸出については、パキスタンを中心に国内需給の緩和の恩恵もあり10万6000トンとなった。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, April 2011”
*注1:OGL(Open General Licence)とは、登録を行った業者に対し、個別のライセンスを取得せずに輸出を許可する制度。
*注2:ALS(Advanced Licensing Scheme)とは、輸入粗糖を精製後、一定期間内に再輸出することを条件に輸入関税を免除する制度。
中国
(1)2011年4月における生産見通し
〜砂糖生産量は前年度並みの1170万トン〜
中国における砂糖生産の約9割は南部で生産されるさとうきびを原料とし、残りは北部のてん菜に由来する。2010/11中国砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰による作付け増加を受け、151万ヘクタール (前年度比3.9 %増)に増加するとみられている。さとうきび生産量は前年度から微増の8460万トン(同4.3%増)と予測されるものの、夏季の干ばつや昨年12月から1月にかけて発生した寒害の影響により糖度が低下したため、さとうきび由来の砂糖生産量は1080万トン(粗糖換算、同2.4%減)と、前年度からわずかに減少するとみられている。主産地の広西壮族自治区では、約6割の製糖工場がすでに今年度の操業を終了したと伝えられる。
てん菜生産地では、2010/11年度の生産が終了した。同年度のてん菜収穫面積は、黒龍江省を中心に作付けが伸びたことから19万ヘクタール(前年度比47.6%増)と、前年度から大幅に増加した。このため、てん菜生産量は710万トン(同41.9%増)に回復し、てん菜由来の砂糖生産量は前年度から大幅増加の90万トン(粗糖換算、同31.3%増)に達したとみられている。
これらのことから、中国全体の砂糖生産量は前年度並みの1170万トン(粗糖換算、同0.6%減)とみられる。
(2)貿易状況
〜輸入量は前年度比39.2%増の見通し〜
2010/11年度の砂糖消費量は前年度並みの1500万トン(粗糖換算)と予測され、生産量との差は300万トンを超えるとみられている。政府は需給ひっ迫に対応するため、今年度において4回にわたり合計77万トン(白糖換算)の国家備蓄を放出した。国家備蓄については、前年度にも171万トン(白糖換算)が放出されており、減少が見込まれている。このような需給ひっ迫と国家備蓄の減少を受け、輸入量は前年度から大幅増加の230万トン(粗糖換算、前年度比41.8%増)と予測されている。国内砂糖価格の上昇を反映し異性化糖の生産が増加しているため、砂糖輸入量は予測を下回る可能性もある。
2月の粗糖・白糖輸入量は2万トン(前月比36.8%増)と、前月から増加したものの、昨年12月の実績を10万トン以上下回った。これは、2月が国内の製糖期間であり、また、国際価格の記録的な高騰も影響したとみられている。輸入先の大半は韓国であった。
資料:LMC “Monthly Sugar Report, April 2011”
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