平成22年度甘味料需要実態調査の概要
最終更新日:2011年6月10日
平成22年度甘味料需要実態調査の概要 〜砂糖は味覚面で依然高評価〜
2011年6月
はじめに
平成21砂糖年度(10月〜9月)における砂糖の需要量は、農林水産省によると、前年度を1.7%下回る209万9000トンとなった。また、異性化糖については、同2.4%増の80万3000トンと前年度を上回った。一方、加糖調製品(含糖量ベース)の需要量は、33万1000トンと前年度から4.9%の増加を見せ、アスパルテールやスクラロースなどの代替甘味料も低カロリー嗜好の広まりに伴って、その需要量が増加しているところである。
こうした状況を踏まえ、当機構では、甘味料の需要動向を把握するため、砂糖、異性化糖、加糖調製品および代替甘味料を調査対象として、平成22年度甘味料需要実態調査を行ったので、その概要を報告する。
1.調査概要
甘味料使用企業36社に対して、2010年(1〜12月)における砂糖、異性化糖(ぶどう糖果糖液糖*注1)、果糖ぶどう糖液糖*注2))、加糖調製品(ソルビトール調製品、ココア調製品、ミルク調製品、加糖あん)、代替甘味料(果糖(フラクトース)、アスパルテーム、マルチトール、アセスルファムK(カリウム)、スクラロース)の使用状況について調査を行った。
調査項目は、使用している甘味料の種類ごとに、(ア)使用動機、(イ)調査対象年およびその前年の仕入量と今後の見込み、(ウ)仕入価格とその動向、(エ)評価、(オ)使用甘味料の変更の状況、(カ)使用商品例とし、聞き取りにより調査した。
また、製品分野では、菓子、清涼飲料、乳製品、洋生菓子、パン、調味料類、漬物、佃煮・煮豆、水産練物・珍味を調査の対象とした。
*注1)JAS(日本農林規格)による異性化糖で、果糖含有率50%未満のもの
*注2)JAS(日本農林規格)による異性化糖で、糖含有率50%以上のもの
2.調査結果
(1)砂糖
〜価格の先高感から、仕入は横ばい、あるいは減少傾向〜
2010年の状況
砂糖を使用していたのは34社で、菓子、清涼飲料、乳製品、洋生菓子、パン、調味料類、漬物、佃煮・煮豆、水産練製品・珍味など幅広い分野で使用されている。
使用理由としては、多くの企業が味覚面で「自然な(素直、適度、癖がない、スタンダード等の回答を含め)甘みが出せる」という点でユーザーから高い評価を得ていることを挙げていた。また、物性面での「高温下での甘味の持続からコクが望める」、「加熱による色付けに重要なメイラード反応として必要」などの意見も寄せられた。
仕入量について回答のあった31社における2010年の仕入量の合計は13万9670トンで、前年比0.1%の減少となった。企業別では、前年に比べて増加した企業は3社、前年並みだった企業は19社、減少した企業は9社であった。増加理由は、「新製品の導入に伴う」、「対象商品の生産量増加」などが挙げられた。一方、減少理由は「減産によるもの」を多くの企業で挙げていたが、「調製品への移行」、「夏場の猛暑のため、砂糖使用製品の売れ行きが芳しくなかった」、「米食離れを背景に売上が減少」など、気候要因や食生活との結びつきに関する声も聞かれた。
仕入価格に関しては、34社すべてで上昇しているとのことであった。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業が3社、横ばいを見込む企業が12社、減少を見込む企業が8社、売上に比例するとした企業が4社、価格により変動させる企業が1社となり、価格の先高感から、横ばい、あるいは減少を見込んでいる企業が多く見られた。コストに関して「嗜好品であるため、値上げによる売上減は避けたい」、「代替甘味料へのシフトを進める」、「価格を抑えるため、調製品にシフトせざる得ない」などの回答が得られた。
原料の変更については、多くの企業が現時点で切り替えの検討は行っておらず、基本的に一度決定したレシピの変更は行わないとする方針を持つ企業が多く見られた。また、「その飲料との相性の面で砂糖が好まれるものもある」との声もあり、単純に切り替えができない一面もあるとのことであった。切り替える場合の理由としては、「味の好みの変化から、消費者の要望に応じた」、「砂糖から還元水あめや異性化糖に切り替えた」などの声が聞かれた。
(2)異性化糖
a)ぶどう糖果糖液糖〜とうもろこし価格の値上がりで価格も上昇〜
2010年の状況
ぶどう糖果糖液糖を使用していたのは12社で、菓子、清涼飲料、パン、調味料類、漬物、佃煮・煮豆、水産練製品・珍味などの製品分野で使用されている。
使用理由としては、「さっぱりとした甘さ」、「砂糖とは別の甘さ」、「味のバランス調整」などの味覚面に加えて、工業原料としての「作業性」、「コストダウン」などの点を評価したとの回答が得られた。
仕入量について回答のあった8社における2010年の仕入量の合計は5,432トンで、前年比7.8%の減少となった。企業別では、前年に比べて増加した企業は1社、前年並みだった企業は3社、減少した企業は4社であった。「生産量の増減により仕入量が増減する」との回答のほか、「米食離れを背景に、売上が減少した」という総菜の小売りや食生活との結びつきに関する声が聞かれた。
仕入価格に関しては、原材料のとうもろこし価格の値上がりに伴い、多くの企業で値上がりしたとの回答が得られた。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業はなく、横ばいを見込む企業が4社、減少を見込む企業が2社、売上に比例するとした企業が3社、価格により変動させる企業が1社となった。
原料の変更については、現在規定しているレシピを変更してまで、他の材料を使用する利点が見出せないということで、ほぼ全ての企業が現時点での切り替えの検討は行っていなかった。
b)果糖ぶどう糖液糖 〜清涼飲料分野から味覚面で高い評価〜
2010年の状況
果糖ぶどう糖液糖を使用していたのは15社で、菓子、清涼飲料、乳製品、パン、調味料類、佃煮・煮豆などの製品分野で使用されている。
使用理由としては、「砂糖に比べて安価」であるコスト面、「さっぱりとした甘味」、「砂糖の代替」などの味覚面を挙げていた。また、低温下で濃厚な甘味を引き出せることから「チルド製品の生産に使用」などの声も聞かれた。
仕入量について回答のあった11社における2010年の仕入量の合計は16万807トンで、前年比1.1%の増加となった。企業別では、前年に比べて増加した企業は5社、前年並みだった企業は3社、減少した企業は3社であった。「対象商品の売上増減により仕入量が増減する」との回答が多かった中、増加した企業では「炭酸飲料の需要が増えた」、「デザート部門が好調であった」、減少した企業では「代替甘味料へシフトした」などの声が聞かれた。
仕入価格に関しては、多くの企業で値上がりしたとの回答が得られた。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業が1社、横ばいを見込む企業が5社、減少を見込む企業が2社、売上に比例するとした企業が2社となった。増加を見込む理由としては、「レシピ変更に伴う増加」を挙げていた。また、「原材料の生産地であるアメリカの天候不安が心配」との声が聞かれた。
原料の変更については、「ゼロ系飲料の強化に伴い各種の代替甘味料に変更」との意見が得られた。清涼飲料メーカーの意見として、「あくまでも消費者ニーズに合わせていく」としながらも、「特定の飲料との相性があるので、従来の砂糖が好まれる商品も多い」などの回答があり、季節や飲料の種類によってきめ細かな対応を図っていることがうかがわれた。
(3)加糖調製品
a)ソルビトール調製品 〜ソルビトール調製品の価格も砂糖に連動して上昇〜
2010年の状況
ソルビトール調製品を使用していたのは13社で、菓子、洋生菓子、パン、調味料類、漬物、佃煮・煮豆、水産練製品・珍味などの製品分野で使用されている。
使用理由としては、「味のバランス調整に必要」、「食感、すっきりとした甘み、保湿力がある」、「砂糖よりさっぱりした味が得られる」、「特定食品(グミ)の必須材料」などが挙げられた。
仕入量について回答のあった11社における2010年の仕入量の合計は6,954トンで、前年比0.2%の減少となった。企業別では、前年に比べて増加した企業は2社、前年並みだった企業は6社、減少した企業は3社であった。増減した主な理由は、「対象商品の生産量の増減による」であった。
仕入価格に関しては、多くの企業が砂糖の値上がりに連動して調製品も値上がりしているため、仕入れ先に対して価格据え置きの交渉を行っているとのことであった。また、調製品について、必ずしも「安価である」と言い切れなくなっているとの声も聞かれた。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業が1社、横ばいを見込む企業が6社、減少を見込む企業が1社、売上に比例するとした企業が2社となっている。増加を見込む企業からは、「甘さを補う上で適しているので仕入量を増やしたい」とする回答が得られた。
原料の変更については、ほぼ全ての企業が現時点で原材料の切り替えの検討は行っていないとのことであった。また、調達先についても変更予定はないとの回答を得た。「配合の変更を行うにしても、製造ラインの変更は困難」であるため、調達リスクが殆ど無い現状では、製造ラインを変更してまで原材料の変更を行うメリットが見出せないとの意見も得られた。
2010年の状況
ココア調製品を使用していたのは、3社で、菓子、調味料類といった製品分野で使用されている。 使用理由としては、「チョコレート製品を作る上での必須原料」、「(チョコレートの)風味付け」、「国内で砂糖を手当てしきれないため」、「コストダウンのため使用」などが挙げられた。
仕入量について回答のあった2社における2010年の仕入量の合計は1万5710トンで、前年比6.5%の減少となった。企業別では、前年並みだった企業、減少した企業ともに1社ずつであった。減少理由としては、「夏場の猛暑の影響から、チョコレートの売れ行きが悪かった」ことを挙げていた。
仕入価格に関しては、すべての企業で上昇となっている。砂糖価格の上昇に連動し、ココア調製品も必ずしも安価ではなくなってきているとの声が聞かれた。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業はなく、横ばいを見込む企業が2社、売上に比例するとした企業が1社となっている。気候要因や、チョコレートが嗜好品であることから、その売上は景況感にも敏感であり、増減について各社とも読みにくい状況がうかがわれた。
原料の変更については、全ての企業が現時点で原材料の切り替えの検討は行っていないとのことであった。また、調達先についても変更予定はないとの回答を得た。
c)ミルク調製品 〜分離調達からミルク調製品へ切り替えがさらに進展〜
2010年の状況
ミルク調製品を使用していたのは10社で、菓子、清涼飲料、乳製品、パン、調味料類などの製品分野で使用されている。
使用理由としては、「対象商品のミルク成分の配合を変えるため」、「バターの代替」、「国産乳に味覚が近い」などの味覚面のほか、「原材料の不足を補うため」、「コスト面で有利」などを挙げていた。
仕入量について回答のあった7社における2010年の仕入量の合計は6,097トンで、前年比11.3%の増加となった。企業別では、前年に比べて増加した企業は4社、前年並みだった企業は2社、減少した企業は1社であった。増減した主な理由は、「対象商品の生産量の増減による」であった。
仕入価格に関しては、多くの企業で上昇しているとの回答が得られた。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業が1社、横ばいを見込む企業が4社、減少を見込む企業が1社、売上に比例するとした企業が2社、価格により変動させる企業が1社となった。増加を見込む企業からは、「品質の向上を前提として仕入量を増やしたい」とする回答が得られた。一方、減少を見込む企業は、「嗜好品であり売上が減少」との理由を挙げていた。
原料の変更については、多くの企業が現時点で原材料の切り替えの検討は行っていないとのことであった。また、調達先や仕入先についても変更予定はないとの回答を得た。
2010年の状況
加糖あんを使用していたのは6社で、菓子、乳製品、洋生菓子、パンなどの製品分野で使用されている。
使用理由としては、「和風の味付けを演出できる」などの理由を挙げていた。この意見は必ずしも和菓子メーカーだけではなく、洋菓子メーカーからも出されており、加糖あんが製菓部門の和洋の融合に有益な甘味料であるといえる。
仕入量について回答のあった4社における2010年の仕入量の合計は4,734トンで、前年比6.8%の増加となった。企業別では、前年に比べて増加した企業は1社、前年並みだった企業は2社、減少した企業は1社であった。
仕入価格に関しては、多くの企業で上昇しているとの回答が得られた。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業はなく、横ばいを見込む企業が2社となっており、減少を見込む企業が1社、売上に比例するとした企業が2社となった。積極的に増加を見込む企業は特に見られず、前年並みあるいは減少とする見方が多数を占めた。
原料の変更については、仕入先のメーカー、商社、原産国とも特に変更を行っていない。中国産製品の品質が従来と比較して著しく向上したとの意見がある一方、国産の加糖あんは、価格が中国産の数倍に及ぶため、原材料として使用する際、どうしても販売価格を高めに設定することが必要となる中、「『国産あん使用』と銘打って販売しており、ブランドイメージにも関わる問題のため切り替えることはできない」とする意見が聞かれた。
(4)代替甘味料
a)果糖(フラクトース) 〜仕入量が大きく減少〜
2010年の状況
果糖(フラクトース)を使用していたのは8社で、菓子、清涼飲料、調味料類などの製品分野で使用されている。
使用理由としては、「さっぱりとした甘さ」、「風味、旨味の改善」などの味覚面に加えて、「特定の製品に必要」、「カロリーオフ商品のコンセプトに合う」などの回答が得られた。
仕入量について回答のあった6社における2010年の仕入量の合計は6,060トンで、前年比10.3%の減少となった。企業別では、前年に比べて増加した企業は2社、前年並みだった企業は1社、減少した企業は3社であった。
仕入価格に関しては、多くの企業が上昇傾向にあるとの回答を得た。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業が2社、横ばいを見込む企業が1社、売上に比例するとした企業が1社となった。減少を見込むとした企業はなく、清涼飲料メーカーを中心に需要は増加するのではとの意見が聞かれた。
原料、製造元、仕入れ先等について、ほとんどの企業が現時点で切り替えの検討は行っていないとする回答を得た。「味わいや、使用商品のコンセプトが変わってしまうため、材料の切り替えはできない」との考え方を持つ企業が多く見られた。また、特に清涼飲料メーカーについて、ゼロ系飲料の消費者ニーズの動向を引き続き見守っていき、需要にあわせた対応を図るとの意見も聞かれた。
b)アスパルテーム 〜仕入価格に大きな変動なし〜
2010年の状況
アスパルテームを使用していたのは6社で、菓子、乳製品、パン、漬物、水産練製品・珍味などの製品分野で使用されている。
使用理由としては、「ゼロカロリー化、あるいはカロリーオフ製品に必要」、「少量で甘味料として使用できる」などの意見が挙げられた。一方、「単品では自然な甘さは出ない」などマイナスの部分についての声が聞かれた。
仕入量について回答のあった4社における2010年の仕入量の合計は23.14トンで、前年比1.2%の増加となった。企業別では、前年に比べて増加した企業は1社、前年並みだった企業は1社、減少した企業は2社であった。減少理由として、「使用していた特定の商品からの撤退」、「売上に連動して減少」などが挙げられた。
仕入価格に関しては、多くの企業が横ばいとの回答を得た。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業、横ばいを見込む企業、減少を見込む企業、売上に比例するとした企業、いずれも各1社ずつとなった。「対象製品の増加に伴い使用が増加」と回答する企業がある一方、「コストによっては減少」など原材料の値上がりを懸念する声も聞かれた。
原料、メーカー、仕入れ先等については、多くの企業が現時点で切り替えの検討は行っていないとする回答を得た。
c)マルチトール 〜仕入価格は上昇〜
2010年の状況
マルチトールを使用していたのは7社で、菓子、清涼飲料、調味料類、佃煮・煮豆、水産練製品・珍味などの製品分野で使用されている。
使用理由としては、多くの企業が味覚面で「砂糖の甘さ、味覚のバランス調整、旨味の改善」、「さっぱりしている」という点でユーザーから高い評価を得ていることを挙げていた。また、物性面での「安定性(店頭で光に当たっても見た目の色、ビタミン組織を壊さないなど、品質を確保できる)」、「保湿性」、「カロリー減」などの機能性が評価されているという意見も寄せられた。
仕入量について回答のあった5社における2010年の仕入量の合計は1,898トンで、前年比4.2%の減少となった。
仕入価格に関しては、すべての企業で上昇との回答を得た。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、横ばいを見込む企業が2社、減少を見込む企業が1社、売上に比例するとした企業が1社となった。
原料、原産国、仕入れ先については、多くの企業が現時点で切り替えの検討を行っていないとする回答を得た。他の甘味料と同様、一度決定したレシピの変更は行わないとする企業が多く見られた。また、消費者のニーズを取り入れて開発・商品化したものもあるため、素材の変更は困難との声が聞かれた。
d)アセスルファムK(カリウム) 〜仕入量が大幅増加〜
2010年の状況
アセスルファムKを使用していたのは13社で、菓子、清涼飲料、乳製品、パン、漬物、水産練製品・珍味などの製品分野で使用されている。
使用理由としては、「すっきりした味を出せる」、「味覚特性が対象商品に合致している」、「カロリーオフと相まって少量で使える」との評価が得られた一方、「単品では自然な甘さが出ないので使えない、苦味が出る」などの声も聞かれた。
仕入量について回答のあった10社における2010年の仕入量の合計は104トンで、前年比30.0%の増加となった。企業別では、前年に比べて増加した企業は4社、前年並みだった企業は5社、減少した企業は1社であった。
仕入価格に関しては、現在、下落傾向にあるものの、一層の値下げを希望する声が多く聞かれた。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業が4社、横ばいを見込む企業が4社、減少を見込む企業が1社、売上に比例するとした企業が2社となった。清涼飲料メーカーを中心に販売増を見込んだ企業がある一方、「販売量の減少から、需要が減少」とする声も聞かれた。
原料の変更については、果糖ぶどう糖液糖から、アセスルファムKに移行した企業があった。また、中国産の安価な製品が流通することにより、従前と比較して価格は下落基調にある。この点については、仕入価格が上昇したとの回答が多かった他の甘味料と著しく異なる点であった。
e)スクラロース 〜低カロリー商品向け代替甘味料と同様に仕入量が増加〜
2010年の状況
スクラロースを使用していたのは17社で、菓子、清涼飲料、乳製品、パン、調味料、漬物、佃煮・煮豆、水産練製品・珍味などの製品分野で使用されている。
使用理由としては、多くの企業が「シュガーレス・カロリーオフの製品に必需品である」との回答のほか、「すっきりした味を出せる」、「あっさりかつ後味に含みを持っている」、「砂糖の旨味改善」、「焼き色を付けなくする」、「保湿性がある」などの評価が得られていた。一方、他の甘味料と同様、単品では使用できないとの声も聞かれた。
仕入量について回答のあった13社における2010年の仕入量の合計は58トンで、前年比9.4%の増加となった。企業別では、前年に比べて増加した企業は5社、前年並みだった企業は7社、減少した企業は1社であった。増加理由としては、「ゼロ系飲料の増加、果糖ぶどう糖液糖からのシフト」と清涼飲料メーカーが積極的に使用量を増やしたことによるものであった。一方、減少理由として「使用製品部門からの撤退」とする企業もあった。
仕入価格に関しては、10社が横ばいで、上昇、下落が各2社となっており、商品販売先からの値下げ要請に苦慮している企業が多数みられた。
今後の見通し
今後の仕入量に関しては、増加を見込む企業が4社、横ばいを見込む企業が6社、減少を見込む企業が1社、売上に比例するとした企業が1社となった。増加の理由としては、「清涼飲料メーカーがゼロ系飲料を強化する目的で使用したいと考えている」とすることに加え、「食品メーカーもカロリーオフ商品の強化を考えている」との意見が聞かれた。
原料の変更については、「果糖ぶどう糖液糖から切り替わった」などが挙げられた。逆にスクラロースを他の材料に変更する動き、仕入先、原産国、商社の切り替えの動きは特にないとの意見であった。
まとめ
2010年を調査対象期間とした本調査において、品目においてばらつきはあるものの前年から仕入量が大きく伸びたのは、アセスルファムKなどのカロリーオフ・シュガーレスといった低カロリー製品に利用される高甘味度甘味料であった。低カロリー製品は消費者ニーズを反映し、高甘味度甘味料の使用量も年々増加傾向で推移してきたが、砂糖が自然な甘みを出すことができるなど味覚面で高い評価を得ているため、使用原料を砂糖から他の甘味料へ完全に切り替えることはないとする声が多数であった。
2009年から上昇が続いていた砂糖の国際価格は、2010年11月9日には30年ぶりの高値を記録し、国内の日経相場もこれに連動して上昇した。一方、砂糖を他の甘味料と比べた場合、価格面で評価を受けることは少ない。昨年度の調査では、コスト削減のため砂糖から他の甘味料への切り替えが見られたものの、本年度の調査では、多くの企業が現時点で切り替えの検討は行っていなかった。しかし、製品のロットを小さくしたり、価格動向次第で切り替えの可能性を示唆する声が聞かれた。こうしたことを踏まえ、国際需給など砂糖国際価格に影響を与える要因について、引き続き注視する必要があろう。
最後に、ご多忙の中、本調査に対してご協力いただいた各企業に、この場を借りて厚くお礼を申し上げたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713