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さとうきび総合利用、真の狙いと新機能商品

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最終更新日:2012年3月9日

さとうきび総合利用、真の狙いと新機能商品

2012年3月

株式会社沖縄さとうきび機能研究所
もったいないバイオマス株式会社
 代表取締役 高村 善雄

1.さとうきび総合利用技術への取り組み

 中国の紙パルプ輸入量は毎年前年比20%前後増の勢いで増加している。中国の紙需要も2005年の年間約6000万トンから2010年には同8000万トン以上に達したとみられる。この急激な需要の増加を充たすための材料として、伐採まで8年かかるユーカリでは間に合わず、成長が早く、甘味資源でもある、さとうきび(作付から収穫までの期間:1年)、スイートソルガム(同4カ月)、そして油糧資源でもあるヒマワリ(同4カ月)の外皮がセルロース資源として有望になる時代が必ず来ると感じていた。しかし紙(セルロース)だけでは事業性は弱いので、さとうきびに含まれる糖、脂質、内実部(ヘミセルロース)などの機能性を追求して、外皮(セルロース)を最後の副産物として分離活用できる総合利用技術を確立し、少しでも孫の世代の資源問題に役に立つ技術を残そうと、商社(キューバでさとうきび副産物ワークを始める)から製紙メーカー(さとうきび外皮はがきサクラメール、インクジェットはがきなど開発)そして農業6次元化ベンチャー(表記2社)へ転身し5年になる。

2.ケーンセパレーションシステム

 前述のさとうきび成分の分離活用にはケーンセパレーションシステム(CSS)と呼ばれるさとうきびの総合利用システムを利用している。同システムは、さとうきびの茎の表面に付着する脂質(ワックス)、硬い外皮、内実部・ジュースを機械的に分割し、器官別に含有される特性を有効利用するシステムである。世界の製糖工場がミルシステムでさとうきびを丸ごと搾汁し、黒いジュースを白い砂糖にするのにその繊維質(バガスと呼ばれている)の大半を燃やして、エネルギーにしているのに対して、CSS は内実部だけを搾汁するので、外部の汚れのない淡い茶色のジュースが絞り出され、製糖エネルギーも大幅に少なくてすむ、省エネシステムである。

3.CSSを利用して得られる新素材

 使用機械であるケーンセパレータで図1のように内実部だけを分離し、残った外皮、脂質も順次分離する。以下、同セパレータを利用して生成される各新素材について紹介する。


1) 内実部からつくるアンチエイジングシュガー(ブランド名:生なり糖(抗酸化能を有する含みつ糖として特許出願済))

  内実部だけから搾汁して、マイクロフィルターを通すと、そのまま透明感のある植物水ができあがる。シロップにはポリフェノールが410mg/100g含まれている。また、シロップを炊き上げた含蜜糖もポリフェノールを多く含み、郡山女子大で行った、ラード入りクッキーの酸化試験では、白糖は1日目で、黒糖は5日目で、トコフェロール(ビタミンE抗酸化剤)は130日目で酸化が始まったのに対し、この含蜜糖は300日後も酸化していなかった。374mg/100gのポリフェノールの抗酸化能が非常に強いことが分り、日持ち効果もある同製品はアンチエイジングシュガーであることが証明された。

 味についても、英国の業界誌で世界レストラン12位、アジア1位の評価を受けた東京青山のレストランのシェフ、成澤由浩氏がこの含蜜糖の味を気に入られ、そのメニューにまで載せて頂いている。何故マイルドな甘味で香味があるのか、それはグルコース、アミノ酸だけでない、高温、高圧で可能となる、キシロース、ポリフェノールをもミックスした新しい蜜を生成しているからである。
 
 
2) ピスPith(茎内実部)焙煎食物繊維(特許出願済)

 茎の内実部は、水分、養分の通り道でヘミセルロースリッチな親水性の多孔質構造である。搾汁した後は腐りやすく、一日も持たない。乾燥は難しいだけでなく非常にコスト高である。焙煎することによって、完全滅菌し、抗菌、抗カビ効果だけでなく、生なり糖と同様、新しい蜜の香味を得ることができた。細胞壁の粉砕物である燐ペン状の構造は保水力が非常に強く、腸内で膨らみ、下痢は繋がる、便秘は治るという老廃物洗浄効果をもたらせた。ポリフェノールは200mg/100gと多く、上記含蜜糖以上の抗酸化能が期待できる。

 コーヒー、ココアでもない第3の焙煎の香り、ポリフェノールによる抗酸化(日持ち)効果、繋ぎ力を利用した高濃度ファイバー食品、など高機能ファイバーとして、用途開発が進んでいるところである。 現在はパン、アイスクリーム、ソーセージの繋ぎ材として使われている。
 
 
 
 
3) 脂質 さとうきびワックス

 New Food Industry 2011年11月号 論説、昭和女子大学 渡辺睦行先生の「疲労軽減効果を有する食品成分」で、さとうきびワックスが血中乳酸濃度と血漿クレアチンキナーゼ活性値の優位的減少をもたらせ、筋肉のグリコーゲン量を高め、疲労軽減効果があることが証明できたことを発表された。

 さとうきびワックスは主成分がオクタコサノール(C28直鎖アルコール)のポリコサノール(C24-34直鎖アルコール群)であるが、オクタコサノールの運動持続能力に関しては1972年に米国イリノイ大学クレトン教授により発表されており、1992年頃から、キューバではLDL悪玉コレステロールの低下とHDL善玉コレステロールの増加の薬剤として使われ、同国からの輸出もされている。その効果を認めたインド、オーストラリアが同じポリコサノールの生産を始めた。これら海外のさとうきびワックスが、製糖工程での熱、アルカリの影響を受けているのに対し、弊社は表皮のワックスを直接分離しているので、代謝的に有利なオクタコサナールが壊されずに天然のまま残っているところに特徴があり、エーザイと三菱製紙の共同委託研究で行った、琉球大学知念功教授によるマウス試験では、オクタコサナールがオクタコサノールより常に優位な代謝効果を示した。

 弊社ではさとうきびの力をサプリにして 生なり糖、ピス焙煎食物繊維、沖縄ポリコサナール、ノールを配合して製造した丸剤をインターネットを通じて販売しているが、トライアスリート、登山家、ヘビースモーカー、ピアニスト、キャビンアテンダント、ゴルファーなど多くのリピーターがいる。運動持続能力=頭で考えたことを行動に移せる能力であることは他の効力も考えられるとして研究継続中である。

4.泉重千代翁とマヤ民族

 
 
 最長寿120歳の泉重千代翁は畑でさとうきびをかじり、舐めろとも言っておられた。かじると得られるのが低分子ポリフェノールで体内の抗酸化に役立つ、舐めると得られるのがポリコサノールという、疲労軽減効果成分を含む、さとうきびワックスである。

 中米駐在時代に取引をしていたマヤ民族の生活様式、そして、その人間的優しさが忘れられない。白髪、禿げが少ないのは有名だが、何千年も同じ食事を取り、現代病はなく、エコ(近くにある資源を有効活用している)でヘルシーな理想的生活をしている。A.タコス、トルテイーヤは、今はトウモロコシだが、元はソルガムである。B.砂糖はパネラという円錐の含みつ糖でプラタノという甘くないバナナにパネラから作ったキャラメルで味付けする。C.赤豆はそのまま煮て食べる。このABC三つの主食があれば、十分なのである。

 長寿でヘルシーな原理原則がそこにあり、白糖では得られない機能成分が隠れている。

5.今後に向けて

 現在さとうきびからさらに範囲を広げ、農薬も使わず4カ月で栽培できる、スイートソルガム、ヒマワリにも力を入れており、世界の資源問題や日本の耕作放棄地対策に役立てると判断し、新しい分離技術と新素材開発に注力している。2011年11月、私はヒマワリの研究に注力し始めたが、昭和女子大学のマウス試験でヒマワリピスが想定以上の脂質(中性脂肪、コレステロール)排泄効果を上げ、しかもマウスは健常であった。その痩身効果を特許出願し終えたところである。これからこの発明をベースに研究を深め、商品化へ仕上げて行く。二つのベンチャーは事業的には未だよちよち歩きの状態ではあるが、技術的には、幸運にも常に世界的にも負けない特許と新素材が生まれており、何かに後押しされているように感じている。

 読者の皆様には、今後の未利用植物資源利用技術向上のため、有用な情報をご教示いただければ幸いです。

ホームページ:http://www.kibimaru.com/company/index.html
E-mail:takamur@mb1.suisui.ne.jp
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グル―プ)
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