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法人経営で島を盛り上げる〜長崎県壱岐市 株式会社野元牧場〜

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最終更新日:2014年9月3日

◆歴史のある島、壱岐

地図

長崎県の壱岐は、対馬よりも九州寄りの玄界灘に浮かぶ風光明媚な島です。
壱岐の歴史は古く、有史においては、中国の歴史書である「魏志倭人伝」にも「一支国」として記されています。

◆麦焼酎発祥の地

壱岐は、麦焼酎発祥の地とも言われています。
長崎県で2番目に広い平野、深江田原(ふかえたばる)を有する壱岐では、昔から米や麦の生産
が盛んに行われてきました。
豊富な地下水と麦から作られる壱岐の麦焼酎は、上品な甘みのなかにある香ばしさが特徴で多くの焼酎
ファンを楽しませています。

◆広く知られる壱岐の子牛

島には水田や麦畑が多く広がり、藁(わら)を使った牛の飼養が昔から盛んに行なわれてきました。
子牛を生産して販売する繁殖農家の間で切磋琢磨し、協力してきた結果、いまでは壱岐の子牛の評価
は非常に高く、島内の子牛市場における子牛の平均価格は全国でも高い水準にあります。
このため、全国各地から、子牛を買い求める肥育農家が多数、集まります。

◆社長を格好良いと思わないか?

昭和58年、現在の野元牧場の社長である野元勝博さんのお父さんが繁殖牛約10頭の家族経営を開始しました。
これが、後の農業生産法人株式会社野元牧場の始まりです。
昭和63年に野元さんは壱岐市農協に就職しますが、この時に受けた熊本県の畜産農家での指導員研修で
「肥育」に強い関心を持ちます。
当時、壱岐では肥育に取り組む農家がまだ珍しかったのです。
肥育とは、繁殖農家から子牛を買って、おいしい食肉になるように牛を育てることです。
野元さんはお子さんの誕生を期に「島に仕事を!」という気持ちで、実家の畜産経営に参加しました。
平成7年に、肥育用の牛舎を新設し、繁殖牛約20頭に肥育牛約50頭を加えて繁殖と肥育を一貫して行う
「一貫経営」を開始しました。

熊本県での研修以来、関心を持っていた肥育にも、取り組み始めることになります。
ほとんどが繁殖農家という島の中において、肥育を始めるために当初は苦慮したとのことですが、順
調に肥育牛の頭数を増やしていきました。
肥育牛が約160頭となった39歳の頃、さらにきめ細かく牛を育てていきたいという気持ちから、農協を退職して専業の畜産農家になりました。
農協を退職した後も野元さんは順調に肥育頭数を増やしていきます。
平成24年1月、肥育牛が約300頭、繁殖牛が約60頭の時に、農業生産法人株式会社野元牧場を立ち上げました。

今では、壱岐生まれ、壱岐育ちのブランド牛「壱岐牛」を生産する肥育部会の部会長としても活躍しており、13名の会員を引っ張る存在です。
法人化に際しては農業会議所や市役所、県の畜産協会等のアドバイスがあったそうですが、法人化した一番の理由は何かとお伺いしたところ、「代表取締役社長というものが、格好良いと思わないか?」と逆に野元さんに聞き返されました。
そうお話しする野元さんは、何より楽しそうでした。
この魅力的な社長の姿を見て育ってきた二人の息子さんは、長男が獣医師として他社で活躍、次男は野元牧場で授精業務を含めた繁殖担当として技術に磨きをかけたのち、今では畜産農家として独立しています。

また、野元牧場では、家族以外にも島内の4人の従業員を雇用しており、1人は今後独立の展望を持って
いるそうです。
「雇用や給与という環境が整っていれば、畜産の世界に入る若者はいる」
と野元さんは語ります。

野元勝博社長と肥育牛(20 か月齢)
野元勝博社長と肥育牛(20 か月齢)

畜産農家の野元久志さん(社長の次男)
畜産農家の野元久志さん(社長の次男)

獣医師である長男の手も借り、牛を大切に育てています。
獣医師である長男の手も借り、牛を大切に育てています。

◆玄界灘発!アスパラガス部会

アスパラガスでは、10 a 当たり50 t もの堆肥を使用します。
アスパラガスでは、10 a 当たり50 t もの堆肥を使用します。

畜産経営の副産物である堆肥は、水田や麦畑で活用されています。
また、焼酎の搾りかすの牛の飼料化への取り組みや、野菜生産への堆肥の活用により、地域資源循環型農業を実践しています。
このような島内の努力の結果、品質管理や耕畜連携による多収穫、後継者の育成などが評価され、壱岐のアスパラガス部会は、平成24年に第41回日本農業賞の大賞を受賞しました。

野元牧場で生産された堆肥は、お米やアスパラガス生産への供給や、稲わらとの交換に用いています。
さらに、堆肥に余裕があること、従業員の1人が園芸分野を得意としていることから、今年から自家堆肥を利用したアスパラガス生産にも取り組んでいます。
このアスパラガスについての取り組みは、家族経営より資金調達の幅が広がる法人経営の強みが活かされたものと言えます。

野元さんは今後、繁殖牛をさらに増やして、「島での畜産を盛り上げていきたい」と熱く語ってくれました。

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