欧州の子牛肉生産と消費〜フランスを中心に〜
最終更新日:2015年1月5日
調査情報部 宅間 淳
はじめに
2014年6月に、日本国内の設備などがEUの輸入基準を満たしたため、欧州に向けた和牛の輸出が始まりました。
一方、欧州産牛肉も日本への輸入が再開されています。
欧州産の牛肉は、牛海綿状脳症(BSE)の発生を原因として、2001年から日本への輸入は禁止されていましたが、発生数の減少と安全管理体制が構築されたことから、2013年2月から輸入が解禁されました。
日本の牛肉輸入動向を見ると、今年は、フランス産の冷蔵牛肉が輸入されています。
輸入量全体に占める割合では、0.02%とわずかなものですが、単価(金額÷量)では、豪州産や米国産の約4倍となっています(表1)。
これは、一般的な牛肉ではなく、高級食材として利用される「子牛肉」が中心となっているためです。
子牛肉とは
「子牛肉」を召し上がったことはありますか?
一般的に日本の家庭料理では、子牛肉の利用はわずかなものとされていますが、イタリアやフランスでは、定番の食材であり、これらの国々を含め欧州では、様々な子牛の部位が利用されています。
このため、現地では成牛から生産される「牛肉(BEEF)」とは別の食材と認識されており、「子牛肉(VEAL)」として、幅広く流通しています。
また、子牛は肉そのものが料理として用いられるのはもちろんですが、副産物に分類される顔の肉や胸腺(リードヴォー)、内臓、足なども食用に利用されています。
伝統的な食材の一つである顔の肉は、煮込み料理として提供され、シラク元フランス大統領の好物としても知られています。
なお、欧州委員会の規則では、「子牛肉」を表2のように定義しています。
このように、子牛肉は、肥育期間により2種類に分けられますが、主に高級食材として利用されるのはホワイトヴィールです。ホワイトヴィールは、その名前のとおり肉色が淡く、白っぽい色をしているの
が特徴であり、粉ミルクなどで育てられます。
生産農場の様子
フランスの南西部に位置し、フォアグラの産地としても知られるペリグーの子牛農家を訪問しました。
ゆとりのある牛舎で飼養されている子牛
訪問先の農家は、子牛肉の加工・販売を行う専門企業と提携しており、飼料の供給や、技術支援を受けながら年間約800頭の子牛を出荷しています。
農家には、生後2週間の子牛(体重60〜70キログラム)が導入され、6カ月齢まで飼養された後、出荷されます。出荷時の体重は280キログラム程度で、枝肉の重量は140キログラム程度になります。
冷蔵庫で保管される子牛の枝肉
また、EUでは子牛の飼養に当たって、表3のようなアニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮した飼養管理が定められています。
まとめ
健康志向や食の多様化などにより、牛肉の消費量が伸び悩む中で、低カロリー高タンパクな食材である子牛肉は、栄養学的に見ても利用価値が高い食肉になると考えらます。
また、副産物の内臓肉(胸腺、腎臓など)や足など利用できる部位も多く、無駄のない、日本の食卓に新たな彩りを添えるものです。
日本の子牛肉の生産量はわずかですが、今後、市場の開拓とともにわが国に適した生産技術、流通体系の整備が進めば、乳用種であるホルスタインから産出される雄子牛の利用用途の一つとなり得ます。
このように、国内の畜産経営や食肉産業にとって、子牛肉は有望な食肉となる可能性を秘めています。
参考:月報『畜産の情報』2014 年6 月号
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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