紅茶と砂糖の関係〜イギリスのコーヒー・ハウスにて〜
最終更新日:2017年4月25日
今月は、皆様の食生活に関連した情報として、身近な飲み物である紅茶と砂糖の歴史的な関係を紹介します。
ヨーロッパへの砂糖の伝播
砂糖の起源は、仏教典の記述などからインドといわれています。
その後、7世紀にはアラビア人が高い砂糖製糖技術を既に持っており、砂糖の生産は、これ以降イスラム教徒進出とともにヨーロッパなどの地域に広く伝播され、8世紀にはスペインでサトウキビの栽培が始まっています。
15世紀末にコロンブスが、第2回目の航海時にサトウキビの苗を西インド諸島の島に移植し、アメリカ大陸へ砂糖をもたらしました。それを皮切りに、16世紀から19世紀にかけてイギリスを中心としたヨーロッパ諸国は、アメリカ大陸で大規模な砂糖プランテーションを展開しました。
コーヒー・ハウスの出現
17世紀のロンドンのコーヒー・ハウスの様子
イギリスでは1650年に、コーヒー・ハウスという喫茶店のようなものが初めてオックスフォードに誕生したといわれています。
コーヒー・ハウスの名前の由来は、最初にコーヒーが主体だったからですが、コーヒーのほか、紅茶やチョコレートなど高価な舶来品が提供されていました。コーヒー・ハウスは、貴族やジェントルマンの「社交の場」であるとともに、情報センターとして、経済や科学などの情報交換、議論の場としての役割を果たし、イギリス社会で「みえない大学」とみなす人も少なくありませんでした。
紅茶に砂糖を入れて商品として提供するようになったのは、このコーヒー・ハウスが始まりであろうといわれています。イギリスの貴族やジェントルマンの間では、紅茶や砂糖は体面を保つための高価なものとしてステイタス・シンボルとなっていました。紅茶と砂糖をあわせて飲むことで、贅沢の極みとして「二重の効果」が期待できました。
コーヒー・ハウスは、1700年前後にはロンドン市内に数千軒もの店があったといわれるほど大流行しましたが、その後、イギリス社会の変化とともに衰退していきました。
そのコーヒー・ハウスに代わって家庭で飲まれるものとして主流となっていったのが紅茶です。紅茶は、コーヒーに比べて入れ方も手軽に飲むことができました。また、イギリスの東インド会社が中国貿易で成功して紅茶を輸入することができたことも背景にありました。
砂糖の大量消費
17世紀は高価であった紅茶と砂糖も、19世紀になると庶民にも定着し、紅茶に砂糖を入れて飲むことで砂糖は大量に消費され、イギリスでは欠かせない国民的飲料になりました。
今日では、世界の人々が砂糖入りの紅茶を飲んでいますが、そこにはコーヒー・ハウスでの習慣が広がっていったからなのです。
一杯の紅茶に砂糖を入れるとき、歴史のロマンを感じてみてはいかがでしょうか。
おわりに
alicでは、消費者の皆様の身近で生活に欠かせない砂糖の供給が安定的に継続されるよう「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づき、安価な輸入糖から調整金を徴収し、これを主な財源として国内の生産者や製造業者を支援しています。
また、砂糖について正しく理解していただくため、砂糖に関する様々な情報をホームページ(消費者コーナー)で提供していますので、ぜひご利用ください。
□参考文献
『砂糖の知識』(2005年 砂糖を科学する会発行)
『砂糖の世界史』(1996年 川北 稔著 岩波書店)
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