1.一般経済の概況
米国経済は、2001年3月に10年間にわたって安定成長を続けた景気が後退局面に入った。さらに2001年9月11日に発生した同時多発テロが既に減速を始めていた景気にも影響を与え、2001年の実質国内総生産(GDP)成長率は0.5%となった。しかし、消費者心理の回復、企業の設備投資の促進、失業者支援を目的とした景気刺激法案の成立や金融当局の利下げの実施などを行ったことから経済は回復基調に転じ、2002年のGDP成長率は2.2%となり、また、 2002年の消費者物価指数は前年比1.6%増、生産者物価指数は1.3%減となった。2002年の貿易収支は、貿易赤字(国際収支ベース)が前年より13.0%、金額にして557億ドル増加し、4,829億ドルとなった。
2.農・畜産業の概況
米国経済における農業の位置付けは、他産業の発展に伴い時代の経過とともに低下しており、2002年においては、GDPのうち農業生産(農産物販売額:現金収入の暫定値)の占める割合は1.8%と前年比0.2%減となった。しかしながら、世界の農業生産および農産物貿易における米国農業が占める割合は依然高い水準にあると言える。
2002年の農業経営体数(農産物の年間販売額1千ドル以上)は213万5千戸であった。また、1経営体当たりの農用地面積は、440エーカー(178ヘクタール)であり、農用地面積全体としては9億4,030万エーカー(3億8,100万ヘクタール)であった。なお、年間10万ドル以上の農産物販売実績のある経営体は全体の16.1%で、全農用地面積の57.7%を占めている。
2002年の農産物販売額(現金収入の暫定値)は、1,929億ドルと前年を3.5%下回った。その内訳を見ると、作物部門は995億ドルで、前年を2.4%上回った。一方、畜産部門は、前年を12.1%下回る935億ドルとなり、農産物全体に占めるシェアが48.5%となった。
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資料:USDA「United States and State Farm Income Data」 |
畜産部門の品目別の販売額を見ると、肉用牛が380億ドル(農産物全体に占める割合は19.7%)と第1位であり、次いで酪農が205億ドル(同10.6%)となっている。約6割が家畜飼料となるトウモロコシの販売額が175億ドル(同9.1%)となっており、畜産部門の重要性がうかがえる。
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資料:USDA「United States and State Farm Income Data」 |
3.畜産の動向
(1)酪農・乳業
米国は年間約7,700万トンの生乳を生産しており、世界最大の酪農国である。しかしながら、国内に巨大な消費市場を抱えていることなどから、国際乳製品市場における米国の地位は比較的低いものとなっている。
ア 主要な政策
酪農の主な制度には、加工原料乳価格支持制度と連邦生乳マーケティングオーダー制度(FMMO)がある。加工原料乳価格支持制度は、米国農務省(USDA)の1機関である商品金融公社(CCC)が、加工原料乳の支持価格水準に見合う価格でチーズ、バターおよび脱脂粉乳を買い上げることにより、加工原料乳の価格を間接的に支持する制度である。
この制度は96年農業法に基づき、2000年1月1日以降廃止されることとなっていたが、生産者の強い反対などを反映して、延長が繰り返された結果、今日まで実施され続けている。
2002年新農業法では、これまで延長された支持価格を固定したまま、法律の実施期間と同じく2007年12月まで延長することとされた。
一方、FMMOは、オーダー地域内で取引される飲用規格生乳について、用途別の最低取引価格を設定するとともに、生乳取扱業者に対して、生産者へのプール乳価での支払いを義務付けることにより、生産者に対しては安定的な市場を確保すること、また、消費者に対しては合理的な価格で十分な量の良質な飲用乳を供給することを目的としたものである。2000年1月からは紆余(うよ)曲折を経て、(1)オーダー数の再編統合(31から11へ)、(2)生乳の用途区分の再分類(3区分から4区分へ)、(3)最低取引価格の設定に用いられる価格について、これまでの基礎公式価格(BFP)に代えて、多成分価格形成システムに基づく新基礎価格の導入などの変更が加えられた。なお、2002年新農業法においては、前述の変更後の制度を維持する形で2007年12月末まで継続されることとなっている。
なお、これらの詳細については、農畜産業振興事業団「畜産の情報」海外編2000年3月号「特別レポート」、同2002年4、8、9月号「特別レポート」を参照されたい。
イ 生乳の生産動向
(ア)酪農経営体数
酪農経営体数は、小規模層を中心に一貫して減少傾向で推移しており、2002年には前年比5.7%減の9万2千戸となった。
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資料:USDA「United States and State Farm Income Data」 |
(イ)飼養頭数と生産量
経産牛の飼養頭数は、87年以降減少傾向で推移してきたが、99年、2000年と飼養頭数は増加したものの、2001年は再び減少に転じた。2002年は、ほぼ前年と同じ914万頭となった。
2002年の生乳生産量は、2.6%増の7,700万トンとなった。
(ウ)経産牛1頭当たり乳量
2002年の経産牛1頭当たり乳量は、前年比2.3%増の8,424kgとなった。
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資料:USDA「United States and State Farm Income Data」 |
(エ)地域別生産動向
生乳は、すべての州において生産されているが、生産量の半分以上は上位5州(カリフォルニア、ウィスコンシン、ニューヨーク、ペンシルベニア、ミネソタ)によって占められており、上位10州(6位以下:アイダホ、ニューメキシコ、ミシガン、ワシントン、テキサス)では全体の約7割に達する。特に93年にウィスコンシン州を抜いて首位になったカリフォルニア州は、その後も生産拡大を持続し、2002年の年間生産量は前年比5.0%増の1,582万トンとなった。ウィスコンシン州は、1,001万トンで前年比0.6%減となった。カリフォルニア州を代表とする西部の新興生産地域は、冬期でも比較的温暖で乾燥しているために畜舎などへの投資コストが低く、さらに安価な労働力も確保しやすいことなどから、大規模化が図りやすいという利点がある。カリフォルニア州で500頭以上の経営体による生産量の州全体に占める割合が80.0%であるのに対し、ウィスコンシン州では14.0%となっている。
ウ 牛乳・乳製品の需給動向
(ア)生産動向
2002年のチーズの生産量(カッテージチーズを除く)は、前年比4.1%増の390万トンとなった。チェダーチーズを中心とするアメリカンタイプの生産およびモッツァレラチーズなどイタリアンタイプの生産ともに増加した。このイタリアンタイプの生産増加は、宅配ピザやファストフードでの需要の増加によるところが大きい。なお、チーズ生産の内訳は、アメリカンタイプが43.1%、イタリアンタイプが40.8%となっている。
また、脱脂粉乳の生産量は、生乳生産量の増加から前年比11.0%増の71万2千トンとなった。一方、バター生産量についても、前年比10.0%増の61万5千トンとなった。
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資料:USDA「United States and State Farm Income Data」 |
(イ)消費動向
1人1年当たりの飲用乳・クリーム消費量(製品ベース、以下同じ)は、他の飲料との競合などにより、おおむね減少傾向で推移しているが、2002年も前年比0.5%減の93.4kgとなった。なお、飲用乳の消費は、全脂牛乳から低脂肪牛乳、脱脂牛乳へと低脂肪化への移行が進んでいる。
一方、1人1年当たりのチーズ(カッテージチーズを除く)消費量は、近年一貫して増加傾向で推移してきており、2001年は14年ぶりに前年を下回ったものの、2002年は前年比2.0%増の13.9キログラムとなっている。また、1人1年当たりのバター消費量は、2000年と同じ2.0キログラムであった。
エ 牛乳・乳製品の価格動向
(ア)生乳価格
加工原料乳価格(グレードB規格生乳の農家販売価格)の推移を見ると、2002年は生乳生産が増加したことを反映して、年平均では前年比18.8%安の100ポンド当たり10.92ドルとなった。平均生乳販売価格は、加工原料乳価格の値下がりを反映し、前年比19.7%安の12.11ドルとなった。
(イ)乳製品の卸売価格
2002年の乳製品の卸売価格は、生乳生産の増加から前年を下回って推移した。チェダーチーズ価格は供給増により値下がりし、年平均価格は、前年比18.2%安のポンド当たり115.5セントとなった。また、脱脂粉乳価格は、生産量が増加したことなどからそれぞれ前年比6.7%安の92.0セント、およびバター同33.5%安の110.6セントとなった。
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有機(オーガニック)食品の生産、表示、認証などに関する新たな規則が、2002年10月21日から施行された。米国農務省(USDA)は、ホームページを使いメディアや消費者などに対し、オーガック制度に関する普及啓発を図っており、この中でオーガニック制度導入の意義、オーガニック製品の表示内容や不当表示の場合の罰則などを掲載している。オーガニック製品の表示(ラベリング)内容の概要は次のとおりである。
1. 100%オーガニック製品(重量の100%がオーガニック生産されたものであること。)
(1)製品名の形容に「100%オーガニック」と表示可能。
(2)オーガニック原材料が明記される。
(3)製品の取扱業者・流通業者を明記する記述の下に、「〜によりオーガニック認定」といった記載を行うとともに、「〜」部分に製品の取扱業者を認定したオーガニック認定機関名が明記される。
(4)USDA認定マークの使用可(図参照)。
(5)オーガニック認定機関のマーク、ロゴなどの使用可。この場合、USDAのマークよりも目立たないように表示する。
2. オーガニック製品(重量の95%以上がオーガニック生産されたものであり、残りの部分には、有機的に生産されていない農産物由来の原材料などを含むことが可。)
(1)製品名の形容に「オーガニック」と表示できる。
(2)から(5) 1 の(2)から(5)に同じ。
3. オーガニック原料使用製品(重量の70%以上の複数原材料が、オーガニック原材料であること。)
(1)製品のパッケージに「オーガニック原料(農産物の名称あるいはオーガニック原材料の食品群使用)と表示できる。(これらについては、
3 つまで記載することが可能)
(2)および(3)1の(2)および(3)に同じ。
(4)USDA認定マークの使用不可。
(5)オーガニック認定機関のマーク、ロゴなどの使用可。
4. その他(オーガニック原材料が70%未満の製品の複数原材料がオーガニック原材料であれば製品の有機性を原材料表示欄に記載できる。)
(1)原材料表示欄に各オーガニック原材料を記載。(その際、該当原材料に「オーガニック」表示するか業者任意のマークを原材料表示欄の下に記載。)
(2)USDA認定マークの使用不可。
(3)オーガニック認定機関のマーク、ロゴなどの使用不可。
注:重量は水分と塩分を除いたもの
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オ 乳製品の政府買い上げ
2002年の商品金融公社(CCC)による余剰乳製品の買い上げ数量は、価格の下落を反映して軒並み大幅に増加し、乳脂肪分ベースで215.5%の増加となった。
(2)肉牛・牛肉産業
米国は、世界の牛肉生産量の約4分の1を占める最大の生産国であり、豪州、ブラジルに次ぐ輸出国である。また、同時に世界最大の牛肉の輸入国でもある。国内的にも、肉牛産業は農産物販売額に占める割合が最大となっており、米国農業の中でも最も重要な部門の1つとなっている。
子牛生産は、家族経営による粗放的な生産・管理が行われる一方、育成された肥育素牛は、大規模なフィードロットで効率的な穀物肥育が行われている。肉牛の流通面では、大手パッカーによる寡占化が顕著となっている。
ア 肉牛の生産動向
(ア)肉用牛繁殖経営体数
肉用牛繁殖経営体数(年間に1頭以上飼養)は、減少傾向で推移しており、2002年は前年比1.1%減の80万5千戸となった。
(イ)飼養頭数
米国の牛飼養頭数は、約10年のサイクルで増減を繰り返している。2003年1月1日現在の牛の総飼養頭数は、前年比0.6%減の9,611万頭となった。
88年に1億頭を下回り、90年に底を打ったキャトルサイクルは、91年以降上昇局面に転じていた。96年には、肥育素牛価格の低迷などにより、繁殖経営体の収益性が急速に悪化したことに加えて、テキサス州などの南西部を襲った干ばつの影響もあり、キャトルサイクルは下降に転じた。その後も繁殖雌牛頭数が減少傾向にあることから、総飼養頭数は98年以降1億頭を下回って推移している。
飼養頭数の内訳を見ると、2002年1月1日の500ポンド以上の肉用種繁殖雌牛が前年比0.5%減と、6年ぶりの増加となった2001年から反転して再び減少となった。2003年1月1日の肉用種繁殖雌牛も引き続き前年比0.5%減の3,295万頭となった。一方、500ポンド以上の肉用種更新用未経産牛頭数は、前年比0.8%増の561万頭となった。
2002年における子牛生産頭数(乳用種を含む)は、カナダからの肥育素牛の輸入頭数増大や繁殖雌牛飼養頭数の減少により、前年比0.2%減の3,819万頭となった。
イ 牛肉の需給動向
(ア)生産動向
002年の成牛と畜頭数(コマーシャルベース)は、前年比1.1%増の3,573万頭となった。
種類別(連邦政府検査ベース)では、去勢牛が前年比2.5%増となっている一方で、未経産牛および経産牛とも前年比0.3%の減少となった。このうち、肉用経産牛は、前年を1.3%下回る305万頭となった。
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資料:USDA「United States and State Farm Income Data」 |
一方、2002年の成牛のと畜時平均生体重(連邦政府検査ベース)は、前年比13キログラム増の568キログラムとなった。また、平均枝肉重量(連邦政府検査ベース)は、前年比9.5キログラム増の347.0キログラムとなり、前年を大幅に上回り、これまでの高水準を維持している。
この結果、2002年の牛肉生産量(枝肉ベース)は、前年比3.8%増の1,229万トンとなり、再び増加に転じた。
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米国農務省(USDA)は2002年11月、いくつかの酪農・乳業政策の実施に関する発表を行った。この中には、過剰な政府在庫の削減を図るための脱脂粉乳買上価格の引き下げや、一部のチーズに対する数量ベースの特別セーフガード(SSG)の発動などが含まれている。
国内の酪農・乳業関係者から最も大きな注目を集めたのが、およそ 1 年半ぶりに実施されることとなった脱脂粉乳とバターの政府(商品金融公社:CCC)買上価格の見直しである。これは「ティルト」と呼ばれるCCCの運営コスト削減のための手法であり、農務長官には、加工原料乳の支持価格の水準を固定したままでこれらの買上価格を年2回以内変更できるという権限が与えられている。
前回2001年5月末の見直しでも、脱脂粉乳の過剰在庫削減のためにその買上価格を引き下げる一方でバター買上価格を引き上げるという価格操作が行われた(「畜産の情報・海外編」2002年
4 月号・特別レポート参照)。しかし、それでも脱脂粉乳在庫は、減少するどころか逆に増加し、2002年 9 月末現在では、 1 年半前のほぼ
2 倍の約54万トンにまで積み上がった(この水準は、脱脂粉乳の年間国内消費量の実に166%に相当する)。このため、干ばつ対策の一環としての脱脂粉乳在庫の補助飼料としての活用や、海外食糧援助への仕向けなどに次ぐ今回の買上価格引き下げとなった。乳業団体の国際乳食品協会(IDFA)からは、前回同様「感謝する」とのコメントが発表された。
○乳製品買上価格の見直し状況(単位:ドル/100ポンド)
<前回> <今回>
・脱脂粉乳 :90.00(△10.32) → 80.00(△10.00)
・バター :85.48(+19.99) → 105.00(+19.52)
(加工原料乳支持価格:9.90ドル/100ポンドで不変) |
一方、生産者団体の全国生乳生産者連盟(NMPF)の見方は、今回も否定的である。NMPFの声明文によれば、低迷する乳価に追い討ちをかけるように、(1)今回の脱脂粉乳買上価格の引き下げは、(連邦ミルク・マーケティング・オーダー制度における最低取引価格の低下を通じ)2003年の農家生乳販売価格を平均0.74ドル/100ポンド引き下げ、全米の酪農家の収入を総額12億ドル減少させる、(2)このうちの
3 億 3 千万ドルは、2002年農業法で創設された生乳所得損失契約(Milk Income Loss Contract:MILC。同法条文上の「全国酪農市場損失支払い(National
Dairy Market Loss Payments)」に同じ)プログラムによる追加的な価格補てんによって埋め合わせされるとしても、残りの
8 億 7 千万ドルは、実質的な酪農家の損失になる、(3)政府の支出も、こうしたMILCプログラムの追加額に加え、脱脂粉乳在庫が減っても、冷蔵によるため保管料がかさむバターの買上げ量が増えることなどから、さらに財政負担が増えると指摘している。
また、今回USDAは、輸入が急増しているアメリカンタイプのチーズに対する数量ベースSSGを同日付けで発動する旨、さらには、今年
9 月に続く今年度(2002年 7 月〜2003年 6 月) 2 回目の米国産乳製品に対する輸出補助金(乳製品輸出奨励計画:DEIP)の交付を行う旨を併せて発表した。
このSSGの発動は、NMPFがUSDAに対して求めていた措置であり、今年の発動水準3,600万ポンド(約 1 万 6 千トン)を超える4,800万ポンド(約
2 万2千トン)の輸入が 9 月末現在で行われたため、今年12月末までの間、関税割当数量を超える輸入に対し、通常の関税水準の 3
分の 1 が上乗せされた1.407ドル/kgが適用されることとなった。しかしNMPFは、この決定を歓迎しつつも、適用期間が短すぎるため、今回のティルトの影響を和らげるには十分ではないとしている。DEIPの追加交付については、NMPFと米国乳製品輸出協会(USDEC)が、前回分も含め、補助金受給のための入札案内が脱脂粉乳とチーズだけでなくバターに対しても早期に行われるべきであるとコメントしている。
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(イ)輸出入動向
2002年の輸入量(枝肉ベース)は国内牛肉生産量(枝肉ベース)が増加したものの、国内需要の増大や国産加工用牛肉の供給が不足したため、前年比1.7%増の146万トンとなった。国別に見ると、豪州からの輸入は前年よりも1.3%減となったものの、前年に引き続き第1位となった。カナダからの輸入が前年比10.5%増の49万5千トンとこれまでで最大の輸入量を記録した。
また、2002年の生体牛の輸入は、前年比2.7%増の250万3千頭となった。国別では、2001年に引き続きメキシコからの輸入が前年比27.6%の大幅な減少となった。カナダからの輸入が前年比29.1%増の168万7千頭と大幅に増加し、昨年に引き続き第1位になった。
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資料:USDA「United States and State Farm Income Data」 |
2002年の牛肉輸出量(枝肉ベース)は、前年比7.8%増の111万トンであった。国別では、最大の輸出相手国である日本向けが、日本でのBSE発生による国内需要減などにより、前年比23.2%減の34万9千トンと大幅に減少した。これに対し、メキシコ向けは、前年を18.2%上回る28万5千トンになるとともに、韓国向けが前年を72.9%上回る27万4千トンと大幅に増加した。
(ウ)消費動向
1人1年当たりの牛肉消費量(小売重量ベース)は、健康志向の高まりなどから減少傾向が続いたが、小売価格の値下がりや消費拡大キャンペーンが奏功し、94年以降わずかながら増加傾向で推移している。2002年は同時多発テロ発生などで一時的に落ち込んだ景気も回復し、国内需要が増大したことから、前年比2.1%増の30.7キログラムとなった。
ウ 肉牛・牛肉の価格動向
(ア)肥育素牛価格
肥育素牛価格(オクラホマシティー、600〜650ポンド)は、2002年平均では、100ポンド当たり86.73ドルと前年を9.0%下回った。
(イ)肥育牛価格
肥育主要7州(アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、アイオワ、カンザス、ネブラスカ、テキサス州)における肥育素牛導入頭数は、前年比2.0%減の2,016万頭となった。また、肥育牛出荷頭数は前年比1.6%増の2,027万頭となった。
チョイス級肥育牛価格(ネブラスカ、1,100〜1,300ポンド、去勢牛)は、2002年平均で100ポンド当たり67.1ドルとなり、前年に比べて7.4%の値下がりとなった。
(ウ)牛肉卸売価格
2002年の卸売価格(チョイス級、550〜700ポンド、カットアウトバリュー)は、前年比6.7%安の100ポンド当たり114.4ドルとなった。
(エ)牛肉小売価格
牛肉の2002年の平均小売価格(チョイス級)は、前年比1.9%安のポンド当たり331.5セントとなった。
(3)養豚・豚肉産業
米国の養豚産業は、アイオワ州やイリノイ州を中心とするコーンベルト地帯において、伝統的に穀物生産や肉牛経営の副業として営まれてきた。一方、ノースカロライナ州を代表とする地域でのインテグレーションの出現が、養豚産業に対し、生産・流通などの面で大きな変化をもたらしている。
また、豚肉輸出は近年大幅な伸びを示しており、95年には40数年ぶりに純輸出国に転じた。一方で、大規模経営体による環境問題が顕在化しており、各州において環境規制を強化する動きが見られている。
ア 豚の生産動向
(ア)養豚経営体数
養豚経営体数は、小規模層を中心として減少傾向で推移しており、2002年12月1日現在では、前年比6.8%減の7万5千戸となった。1経営体当たりの飼養規模別では、100頭未満の層が全経営体数の56.7%を占めているものの、飼養頭数では全体の1.0%を占めるに過ぎない。一方、5千頭以上の層は、経営体数全体の3.0%に過ぎないが、全飼養頭数の53.0%を占めている。
(イ)飼養頭数
豚飼養頭数は、87年から増加傾向で推移してきたが、95年以降、飼料価格の値上がりの影響を受けて減少に転じた。その後、飼料価格の下落や台湾における口蹄疫の発生による輸出意欲の高まりに伴い、97年後半から増加に転じたが、98年に豚価が下落し、以降、前年水準を下回って推移した。2001年は3年ぶりに増加したものの、2002年(12月1日現在)は前年比1.4%減の5,894万頭と再び減少に転じた。
飼養頭数の内訳を見ると、繁殖豚は前年比3.2%減の601万頭に、また、肥育豚は前年比1.2%減の5,293万頭となった。
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資料:USDA「United States and State Farm Income Data」 |
2002年(2001年12月〜2002年11月)の子豚生産頭数は、一腹当たり産子数が前年比0.1%減の8.82頭となったものの、繁殖母豚が前年比0.4%増となったことなどから、10,076万頭と前年より0.3%増加した。
イ 豚肉の需給動向
(ア)生産動向
2002年のと畜頭数(コマーシャルベース)は、前年比2.5%増の10,026万頭と増加したことにより、豚肉生産量も、前年比3.1%増の896万トンとなった。
なお、2002年のと畜時平均生体重(連邦政府検査ベース)は、前年同の120.2キログラム、また、平均枝肉重量(連邦政府検査ベース)は、前年より0.5%増の89.6キログラムとなった。
(イ)輸出入動向
豚肉の輸入量(枝肉ベース)は、97年以降おおむね前年を上回ってきており、2002年は、前年比12.8%増の48万6千トンとなった。国別に見ると、カナダが39万9千トン(総輸入量に占める割合は82.2%)、デンマークが5万6千トン(同11.5%)となっている。
また、生体豚の輸入は、ほぼ100%がカナダからのものであり、2002年の同国からの輸入頭数は、米国内での生産頭数が減少していることから、その代替として輸入子豚への需要が高まったことにより、前年比7.5%増の574万頭となった。
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資料:USDA「United States and State Farm Income Data」 |
一方、輸出量(枝肉ベース)も、毎年前年を上回って推移しており、昨年大幅に増加した(対前年比80.9%増)第2位の輸出先であるメキシコ向けが、昨年とほぼ同じ14万2千トンとなったことや、韓国向けが、前年を83.1%上回る大幅な伸びとなってことから、2002年は前年比3.4%増の73万1千トンとなった。最大の輸出先である日本向けは、前年比4.5%増と引き続き好調であった。
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資料:USDA「United States and State Farm Income Data」 |
(ウ)消費動向
1人1年当たりの豚肉消費量(小売重量ベース)は、近年ほぼ横ばいで推移している。2002年は小売価格が値下がりしたことなどにより、前年比2.6%増の23.4キログラムとなった。
ウ 肥育豚・豚肉の価格動向
(ア)肥育豚価格
肥育豚取引価格(5大市場の平均;オマハ、スーシティー、セントジョセフィン、セントポール、スーフォールズ)は、20年来の安値となった94年を底に、生産の減少および輸出需要の増加から好調に推移し、96年には100ポンド当たり53.4ドルとなった。しかし、97年以降、生産の増加などから、価格(97年以降は全米の平均)は下落傾向で推移し、99年には34.0ドルまで下落した。その後、2000年、2001年と価格は上昇したものの、2002年は、生産量の増加などから再び下落し、前年比23.8%安の34.9ドルとなった。
(イ)豚肉価格
(1)部分肉卸売価格
2002年の部分肉卸売価格(カットアウトバリュー)は、前年比19.9%安の100ポンド当たり53.5ドルとなった。
(2)豚肉小売価格
2002年の豚肉の平均小売価格は、前年比1.3%安の1ポンド当たり265.8セントとなった。
(4)養鶏・鶏肉産業
米国の養鶏産業は、飼料穀物の大生産国という利点を生かし、生産から流通までの一貫したインテグレーションの進展により、極めて効率的な生産が行われている。また、不需要部位のもも肉を中心として、鶏肉の生産量の約2割を輸出すると同時に、米国内では、消費者の健康志向からむね肉を中心として消費を大きく伸ばしている。
ア ブロイラーのふ化羽数の動向
2002年のブロイラーふ化羽数は、前年に比べブロイラー価格が持ち直し、生産者の収益性が改善されたことなどから、ふ化羽数は前年比1.9%増の90億7,461万羽であった。
イ 鶏肉の需給動向
(ア)生産動向
2002年のブロイラー生産は、ブロイラーふ化羽数の増加など(ふ化羽数は前年比1.9%増、1羽当たり重量は1.6%増)により、前年を3.7%上回る1,465万トンとなった。生体ベースでの1羽当たり重量は、骨なしむね肉への需要増に伴うブロイラーの大型化を背景に近年増加傾向にあったが、その動きも一段落し、前年同の2.3キログラムとなっている。
(イ)輸出動向
ブロイラーの輸出量は、85年以降一貫して増加傾向で推移していたものの、2002年は前年比12.4%減の218万トンとなった。国別では、2001年に前年比82.6%増の104万5千トンと大幅に増加し再び1位となったロシア向けがロシアの国内生産者の保護を目的とした関税割当制度の実施、米国のブロイラー輸出業者に対する新たな衛生条件の設定などにより輸出量が制限され、2002年は対前年比34.0%減の69万トンとなった。一方で、昨年第2位の香港向けは前年比18.5%減の27万6千トンとなった。
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資料:USDA「United States and State Farm Income Data」 |
(ウ)消費動向
1人1年当たりの鶏肉消費量(小売重量ベース)は、健康志向の高まりや加工度の高いアイテムの増加などから、順調な伸びを示してきており、2002年は前年比3.9%増の36.3キログラムとなった。
ウ ブロイラーの価格動向
(ア)ブロイラー価格
2002年のブロイラー価格(生体ポンド当たりの生産者販売価格)は、前年比21.3%安の31.2セントとなった。
(イ)鶏肉価格
(1)卸売価格
2002年のブロイラーの丸どり卸売価格(中抜き、12都市平均)は、前年比6.0%安のポンド当たり55.5セントとなった。なお、国内向けが主体となっているむね肉がポンド当たり133.6セント(前年比2.0%安)であるのに対し、輸出向けが主体であるもも肉は35.4セント(同16.9%安)となっており、日本と違いむね肉の方がもも肉より3倍以上高くなっている。
(2)小売価格
ブロイラーの丸どり小売価格(中抜き)は、前年比2.8%安の1ポンド当たり107.4セントとなった。
(5) 飼料穀物
米国は、世界最大の飼料穀物の生産・輸出国である。代表的な飼料穀物であるトウモロコシについては、世界の生産量の約4割、輸出量についてはその約6割強を占めていることなどから、需給などに与える影響力は極めて大きいものとなっている。
ア 主要な政策
飼料穀物については、96年農業法により、政府の定める目標価格と市場価格(またはローンレート)の差を補てんする不足払い制度とこれに関連する減反計画が廃止され、農産物の作付け(野菜、果物を除く)が自由化された。一方、その代替措置として、市場価格とは切り離された形で、過去の作付面積などの実績に基づき、一定の漸減する直接支払いを2002年度までの7年間受給できる農家直接固定支払い制度が導入された。このほかの主なものとしては、生産者が農産物を担保に商品金融公社(CCC)からローンレート(過去の市場価格を基に算出)での融資を受けるマーケティング・ローン(価格支持融資制度)などがある。なお、飼料穀物価格が需給緩和の影響で、96年の秋をピークに下落し、生産者所得が減少したことを受け、農家直接固定支払い制度の単価に上乗せする形で、98年から毎年緊急支援措置が講じられている。こうした中、紆余曲折を経て成立した2002年新農業法では、価格支持融資や農家直接固定支払いを存続させるとともに96年農業法で廃止された不足払い制度に類似した直接支払い制度(価格変動対応型支払い:価格の変動に応じ目標価格との差額を補てん)を新設している。
なお、これらの詳細については、農畜産業振興事業団「畜産の情報」海外編2002年8月号「特別レポート」を参照されたい。
イ 穀物の生産動向
2002/03年度(9〜8月)のトウモロコシ(サイレージ用を除く)の生産量は、前年度比5.2%減の90億766万ブッシェル(2億2,880万トン)となった。1エーカー(約0.4ヘクタール)当たりの収穫量は、前年度と比べて5.9%減の130.0ブッシェル(=8.2トン/ヘクタール)となった。作付面積については、前年比4.8%減の7,905万エーカー(3,199万ヘクタール)であった。
2003年8月末現在の在庫量は、前年比15.9%減の10億9,600万ブッシェル(4,055万トン)と大幅に減少した。
ウ 穀物の輸出動向
2002/03年度のトウモロコシの輸出は、韓国、エジプト向けなどが大幅に減少したことから、前年度比17.2%減の4,031万5千トンとなった。なお、日本への輸出も前年度比2.6%減の約1,451万トンで、全体に占める割合は36.0%となっている。
エ 穀物の価格動向
2002/03年度のトウモロコシの生産者販売価格は、エタノール原料向けなどへの需要が伸びたことなどから、前年度を大きく上回り、17.8%高の1ブッシェル当たり2.32ドルとなった。
全米食肉関連企業販売額第1位は2年連続でタイソン・フーズ社に
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米国の食肉業界誌である「ミート・アンド・ポルトリー」において、2002年の食肉関連企業各社の販売金額に基づく上位50社のランキングが公表された。
今回は、企業の吸収合併による動きも落ち着きを見せつつあり、従前と同様な顔ぶれがそろっているが、第 1 位のタイソン・フーズ社は、IBP社の買収、一部ブランドの廃止や自社の養豚場の改革により、販売額は前年比120.8%増となった。IBP社との合併による影響のなかった鶏肉部門は、国内での販売は増加したものの輸出が振るわなかったことから販売額は前年比
2.3%増となった。同 2位のエクセル社の販売額は、施設の拡張などに伴い前年比 4.2%増となったものの、タイソン・フーズ社はエクセル社に約110億ドルと大きく水をあけ、単独首位となった。昨年同
2 位で販売額が近接していたコナグラ・フーズ社が牛肉・豚肉部門を売却(腸管出血性大腸菌O157による汚染問題などにより収益が悪化したため、スイフト&カンパニー社に売却)したことにより同
3 位となり、また、コナグラ社の旧牛肉・豚肉部門を基礎とするスイフト&カンパニー社が同 4 位となった。 昨年同4位であったスミスフィールド社はスイフト&カンパニー社に押される形で同5位となった。
同 5 位のスミスフィールド社については、自社の養豚場の規模を100万頭増やしたことなどもあり、販売額は54.9%増となった。
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