畜産物の需給動向

 1 概況 


14年度の畜産物の消費量は、牛肉が回復、豚肉は代替需要で増加
 平成13年9月のわが国におけるBSEの発生により13年度の牛肉の需要量は大幅に前年度を下回った(▲16.1%)が、14年度に入り、回復傾向で推移し、前年度を2.2%上回った。また、豚肉は、牛肉の代替需要などにより、13年度は前年度比2.2%増、14年度5.1%増と5年連続で前年度を上回った。

 「食料・農業・農村基本計画」(12年3月閣議決定)においては、「望ましい食料消費の姿」を実現することを見込んでいる。22年度における望ましい食料消費の姿は、牛乳・乳製品については1,318万トンと伸びを見込んでいるが、食肉については534万トン、鶏卵については252万トンと見込んでいる。なお、食料・農業・農村基本法において、食料・農業・農村をめぐる情勢の変化、施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね5年ごとに見直しをすることとされており、その見直し作業が15年度から開始されている(図1、2、P.65)。

 畜産物の家計消費(全国1人当たり)についてみると、牛肉は13年度のBSE発生により需要が減少したことから、前年度を大幅に下回った(▲24.1%)が、14年度は回復傾向で推移した。しかし、15年度は15年12月の米国におけるBSE発生の影響により再び前年度を下回った(▲3.7%)。豚肉は10年度以降連続して前年度を上回り、さらに13年度以降はBSEによる牛肉の代替需要により増加した。15年度は、牛肉の消費が回復傾向で推移する中で豚肉の家計消費量は減少傾向となったものの、年度後半の米国BSEの発生や高病原性鳥インフルエンザの発生による代替需要により、ほぼ前年度並みとなった。鶏肉は12年度までほぼ横ばいで推移したが、13年度からBSEによる牛肉の代替需要によりやや増加した。15年度後半には、国内外における高病原性鳥インフルエンザの発生により減少(▲5.3%)したため、15年度全体でもやや減少した。また、鶏卵は安定的に推移しており、15年度は前年度をわずかに下回った(図3、P.66)。

 牛乳およびバターの家計消費(全国1人当たり)についてみると、牛乳は8年度以降減少傾向であったが、14年度は前年度をやや上回った(4.6%)が、15年度は冷夏の影響などから減少した。バターも9年度以降減少傾向で推移しており、15年度は前年度をやや下回った(図4)。

 畜産物の生産量は、食肉はおおむね微減傾向で推移している。13年度はBSEの影響による肉用牛の出荷自粛もあり前年度をわずかに下回ったが、14年度は牛肉、豚肉、鶏肉ともに前年度をそれぞれ10.6%、1.2%、1.1%上回った。

 鶏卵の生産量は、近年横ばいで推移している。
牛乳・乳製品は近年、減少傾向で推移したが、14年度は前年度わずかに上回った(図5、P.65)。

 食肉の自給率は、微減傾向で推移し、14年度(速報)で53%となり、前年度並みとなった。牛肉は輸入量の減少により前年度を3ポイント上回る39%、豚肉は代替需要の増加に伴う輸入量の増加から2ポイント下回る53%、鶏肉は中国、タイなどからの輸入一時停止措置などから前年度を1ポイント上回る65%となった。

 鶏卵については前年度と同様96%となった。

 牛乳・乳製品については、微減傾向で推移していたが、14年度は前年度を1ポイント上回る69%となった(図6、P.65)。


図1 畜産物の需要量の推移
図2 1人1年当たり供給純食料の推移


資料:農林水産省「食料需給表」、「食料・農業・農村基本計画」 資料:農林水産省「食料需給表」、「食料・農業・農村基本計画」

図3 家計消費量の推移(食肉、鶏卵)

図4 家計消費量の推移(牛乳、バター)

資料:総務省「家計調査報告」 資料:総務省「家計調査報告」

 
図5 畜産物の生産量の推移
図6 畜産物の自給率の推移

資料:農林水産省「食料需給表」、「食料・農業・農村基本計画」 資料:農林水産省「食料需給表」、「食料・農業・農村基本計画」




食品安全への取組み

 平成15年7月1日に内閣府に食品安全委員会、農林水産省に消費・安全局がそれぞれ新設された。

 食品安全委員会は食品安全基本法(平成15年5月23日法律第48号)に基づき設立された。同法は、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に、食品供給の各段階において適切に、かつ科学的知見に基づいて必要な措置が講じられなければならない旨が定められている。

 食品安全委員会は、リスク(食品を食べることによって有害な要因が健康に及ぼす悪影響の発生確率と程度)を科学的知見に基づいて客観的かつ中立公正に評価する機関として13の専門調査会を設置している。

 また、リスク管理を行う農林水産省および厚生労働省とともに、リスクコミュニケーションを実施し、消費者や食品関連事業者等の関係者にわかりやすい情報を提供している。

 食の安全・安心を求める声が高まる中、BSEや高病原性鳥インフルエンザなどに対する適切なリスクコミュニケーションの実施が強く求められている。

メキシコとのFTA大筋合意
 世界貿易機関(WTO)の新ラウンドは、2004年末までの合意を目指しWTO加盟国における交渉が実施されているが、加盟国の増加により、交渉が複雑化、長期化しているが実情となっている。その一方、2国間や地域で貿易障壁を引き下げる自由貿易協定(FTA)の締結は世界各国で行われている。各国がFTAに力を入れるのは、WTOと比較してFTAは比較的調整が早いためである。

 このような中、日本、メキシコ両国政府は16年3月12日、日・メキシコ経済連携協定に関して大筋で合意した。日本にとって、FTAの締結は2002年のシンガポールに続き2カ国目となる。ただし、農産品や鉱工業品を含めた包括的なFTAの締結は、これが初めてである。

 日・メキシコFTAにおいては、豚肉関係では、(1)差額関税制度を維持する、(2)1キログラム当たり393円(枝肉)を超す従量税が適用されるものにかけられる現行の関税4.3%を半分にした2.2%の関税割当枠をメキシコに設定する(初年度3.8万トン→5年後8万トン)とした内容となっている。

 なお、FTAに関しては、韓国のほかタイ、マレーシア、フィリピンなど東南アジア諸国との交渉が進められている。

 農業問題と自由貿易のバランスは難しいが、工業製品の資源および食料の大部分を輸入に頼らなければならないわが国の経済構造と、「農業の多面的機能、食料安全保障の追求」の両面を考え、かつ国際化に適応した農業の構造改革が望まれている。