畜産物の需給動向

 3 豚肉 


▼生 産
15年度の生産量は、89万2千トン(2.4%)とわずかに増加
 豚肉の生産量は、子取りめす豚頭数のわずかな増加を反映し、前年を2万1千トン上回る891,779トン(2.4%)となった。平成14年度から2年連続で前年を上回った。(図4、P.88、89)

 と畜頭数は、堅調な需要を背景に13年度を底に徐々に回復し、15年度は16,563,051頭(1.8%)となった。

 平均枝肉重量は、産肉性などに重点をおいた改良効果により、依然として微増傾向にあり15年度は、平均76.9kg/頭(0.6%)となった(図5、P.88)。


図4 子取り用めす豚の頭数と豚肉の生産量
図5 豚のと畜頭数と枝肉重量の推移


資料:農林水産省「畜産統計」、「食肉流通統計」
注1:生産量は、部分肉ベース
 2:子取り用めす豚の頭数は、各年とも2月1日現在
資料:農林水産省「食肉流通統計」
 注:平均枝肉重量は全国平均


15年11月に調整保管実施
 15年度の豚肉の卸売価格(東京・省令)は、BSE特需による豚肉の消費が平年ベースに戻りつつあったこと、豚肉の在庫量が高水準を維持したことなどから、8月下旬に安定基準価格である365円/kgを割り込む日が目立ち始め、9月に入り給食の開始とともに一時420〜430円台に戻したものの、再び360円〜390円台と前年同期を大幅に下回る水準で推移した。さらに10月下旬に入ると断続的に安定基準価格を下回り始め、11月に入ってもやや下回るような状況となった。

 このような状況の中で、今後、価格回復の見込まれる要因が乏しいことから、豚肉価格の回復を早急に図ることが必要となった。そのため11月25日から上記の「豚肉価格安定緊急対策事業実施要綱」等に基づき、豚肉の買入・保管が開始された。これを受けて当機構は、事業実施主体が豚肉を保管するのに要する経費について、「豚肉価格安定緊急対策事業実施要綱」等に基づき、その経費の一部の補助を実施した。実施は、前回の12年10月から3年ぶりとなった。この事業は、実施主体である全国連等(全国の区域をその地区とする農業協同組合連合会等)が、保管計画に基づき、保管の対象となる「省令」規格の豚肉(「極上」および「上」)に格付けされた部分肉を市場等で買入・保管することにより、出回り数量を減少させることにより、豚価の早期回復を図るものである。

 適切な時期での調整保管の実施と冬場の季節的な需要の高まりや鳥インフルエンザの発生などから12月末に価格は急激に回復し始めた。

 
豚肉を使った新メニュー続々登場
 15年1月、それまでの輸入牛肉のかなりのシェアを占めていたカナダ・米国でBSE発生し、輸入停止措置が講じられた。更に、国内外での鳥インフルエンザの発生が、豚肉の需要に拍車をかけた。

 米国産牛肉や輸入鶏肉は、業務加工用、外食用、弁当用の材料としての需要があり、その不足から多くの外食産業で、代替えメニューが考案された。その素材の一つとして注目されたのが豚肉であった。

 2月、和風ファーストフード店からは、「牛丼」の代替えとして主にデンマーク産豚バラなどを使った「豚丼」や「豚どんぶり」、「豚飯」、「豚キムチ丼」が新メニューとして続々と登場した。焼肉店では豚肉や魚介類、鶏肉を主体的に焼材として取り入れ、豚骨付きあばら肉をタレに漬け込んだ骨付きカルビなどが登場した。弁当業者では、ショウガ焼きやトンカツにデンマーク産カラー(かたロース)を使ったものが目立った。

 当然、この時期、輸入豚肉の卸売価格は急速に上がり、国産豚肉については例年なら取引頭数が減る2、3月に生産量が増えることとなった。