畜産物の需給動向

 1 概況 


16年度の畜産物の消費量は、海外のBSEや鳥インフルエンザで牛肉、鶏肉が減少
牛肉の需要量は、1 5年1 2月の米国のB S E発生による牛肉の輸入一時停止措置の影響を受けて1 5年度は前年度を3 . 0%、1 6年度は同1 0 . 9%下回った。また、鶏肉の需要量も国内外における高病原性鳥インフルエンザの発生により1 5年度は前年度を2.6%、16年度同2.2%それぞれ下回った。一方豚肉は、これらの代替需要などにより、1 5 年度の需要量は前年度比2 . 6%増、1 6年度同3 . 3% 増と増加した。

「食料・農業・農村基本計画」(1 7年3月閣議決定)においては、2 7年度における望ましい食料消費の姿として牛乳・乳製品9 5キログラム(うち飲用3 9キログラム、乳製品5 5キログラム)、牛肉7 . 7キログラム、豚肉8 . 8キログラム、鶏肉9 . 1キログラム、鶏卵1 6キログラムとしており、牛乳・乳製品の増加を見込んでいる(図1、2、P.147)。

畜産物の家計消費量(全国1人当たり)についてみると、牛肉は1 4年度に回復傾向で推移したものの、1 5年度は北米におけるB S E発生の影響により再び前年度を下回った(▲3 . 7%)。1 6 年度に入っても米国などからの輸入一時停止措置が継続したことから前年度を6.4%下回った。

豚肉は1 4年度まで5年連続して前年度を上回ったが、15年度は前年度を下回った(▲0.4%)。

1 6年度は牛肉、鶏肉の代替需要から再び増加に転じ、前年度を3 . 5%上回った。鶏肉は1 4年度に牛肉の代替需要により前年度を1 . 2%上回ったが、1 5年度は、国内外における高病原性鳥インフルエンザの発生により減少し、前年度を下回った(▲ 5 . 3%)。1 6年度に入り回復傾向で推移し、前年度を1 . 5%上回った。また、鶏卵は近年安定的に推移していたが、高病原性鳥インフルエンザの発生による供給量の減少などから、1 6 年度は前年度を5.9%下回った(図3、P.148)。牛乳およびバターの家計消費(全国1人当たり)についてみると、牛乳は8年度以降減少傾向であったが、14年度は前年度を4.6%上回った。しかしながら、他の飲料との競合などから減少し、1 5年度は前年度比1 . 5%減、1 6年度1 . 6%減と2年連続で減少した。バターも9年度以降減少傾向で推移しているが、1 6年度は前年度を2 . 6% 上回った(図4、P.148)。

畜産物の生産量は、1 5年度に豚肉、鶏肉が前年度をそれぞれ1 . 6%、0 . 8%上回ったものの、牛肉は、1 3年度の出荷自粛の影響からかなりの程度上回った前年度を1 . 9%下回った。1 6年度は、牛肉・鶏肉が前年度並みとなったものの、豚肉は前年度を0.8%下回った。

鶏卵の生産量は、近年横ばいで推移しているが、16年度は前年度を2.8%下回った。牛乳・乳製品の生産量は1 5年度は前年度を0 . 4%上回ったものの、1 6年度は前年度を1 . 4%下回った(図5、P.147)。

食肉の自給率は、微減傾向で推移しているが、1 6年度(速報)で5 5%となり、前年度を1ポイント上回った。牛肉、鶏肉とも輸入一時停止措置などから前年度をそれぞれ5ポイント、2ポイント上回る44%、69%となった。豚肉、鶏卵、牛乳・乳製品については前年度を下回るそれぞれ5 1%、9 5%、6 7%となった(図6、P.147)。


図1 畜産物の需要量の推移
図2 1人1年当たり供給純食料の推移


資料:農林水産省「食料需給表」 資料:農林水産省「食料需給表」、「食料・農業・農村基本計画」

図3 家計消費量の推移(食肉、鶏卵)

図4 家計消費量の推移(牛乳、バター)

資料:総務省「家計調査報告」 資料:総務省「家計調査報告」

 
図5 畜産物の生産量の推移
図6 畜産物の自給率の推移

資料:農林水産省「食料需給表」、「食料・農業・農村基本計画」 資料:農林水産省「食料需給表」、「食料・農業・農村基本計画」




新たな食料・農業・農村基本計画

平成1 7年3月2 5日、今後1 0年程度の政策展開の基本方向を示した新たな食料・農業・農村基本計画が閣議決定された。

その中で、食料自給率の目標、さらに、目標の達成に向けて生産および消費の両面において重点的に取り組むべき事項を明らかにしている。

また、具体的な施策の展開方向として、@担い手の明確化と支援の集中化・重点化、A経営安定対策の確立、B環境保全に対する支援の導入、C農地・農業用水などの資源の保全管理施策の構築などの新たな政策の方向性が示された。

○食料自給率目標
食料自給率については、基本的に供給熱量の5割以上を目指すことが適当であるとしているが、計画期間内における実現可能性を考慮して、平成27年度の目標を45%(15年度40%) とされた。また、飼料の多くを輸入に頼っている畜産業の現状をより適切に反映するため、生産額ベースの食料自給率目標も併せて設定し、その目標を76%(15年度70%)とした。

畜産関係の食料自給率目標などに関しては以下のとおりである。

(1)平成27年度における望ましい食料消費の姿

牛乳・乳製品:9 5キログラム(うち飲用3 9キログラム、乳製品5 5キログラム)、肉類:2 6キログラム(うち牛肉7 . 7 キログラム、豚肉8 . 8キログラム、鶏肉9 . 1キログラム)、鶏卵:16キログラム

(2)平成2 7年度における生産努力目標および農業者その他の関係者が積極的に取り組むべき課題

(全般)

  • 家畜排せつ物の適正な管理及び有効利用

(生乳:928万トン)

  • 新規就農の促進等による担い手の育成、確保
  • 乳用牛の能力向上や飼養管理技術の高度化等を通じた低コスト化(生産コストの2割程度の低減)
  • 支援組織の活用による省力化等を通じた経営体質の強化
  • 生クリーム等の液状乳製品、チーズ等の需要拡大
  • 流通・加工コストの低減を図るための生産・供給体制の確立

(牛肉:61万トン)

  • 新規就農の促進等による担い手の育成、確保
  • 繁殖雌牛の増頭による規模拡大や産肉・繁殖能力の向上による低コスト化(生産コストの2割程度の低減)
  • 支援組織の活用による省力化等を通じた経営体質の強化
  • 業務用・加工用需要に対応した生産・供給体制の確立

(豚肉:131万トン)

  • 産肉・繁殖能力の向上
  • 飼養管理技術の高度化(人工授精の4割程度の実施)による一分娩当たり生産頭数の増加等を通じた経営体質等の強化(生産コストの1割程度の低減)
  • 業務用・加工用需要に対応した生産・供給体制の確立

(鶏肉:124万トン)

  • 産肉能力の向上(4%程度)、飼養管理技術の高度化、消費者のニーズに対応した高品質鶏肉の生産等を通じて経営体質を強化
  • 業務用、加工用需要に対応した生産・供給体制を確立(鶏卵:243万トン)
  • 産卵能力の向上(2%程度)、飼養管理技術の高度化、消費者のニーズに対応した付加価値の高い鶏卵の生産等を通じて経営体質を強化
  • 需要動向に対応した計画的な生産を実施

(飼料作物:524万トン(可消化養分総量(TDN))

  • 転作田での飼料用稲等の作付の拡大、国産稲わらの利用拡大等により、飼料作物の生産を拡大
  • 低・未利用地等を活用した放牧の拡大、草地の効率的な利用、優良多収品種の育成・普及、支援組織等の育成・活用等を通じて生産コストを3割程度低減

(3)平成2 7年度における食料自給率の目標として、以下のとおりそれぞれ決定された。

牛乳・乳製品:7 5%、肉類:6 2%(うち牛肉3 9%、豚肉73%、鶏肉75%)、鶏卵:99%