海外編

 II EU 

1. 一般経済の概況

2 0 0 3年における欧州連合(E U)の実質国内総生産(G D P)の成長率は0 . 8%となり、9 4年から回復基調を維持していたE U経済も世界的な景気後退を受けて、このところ低迷している。E U経済は、9 8〜9 9年にかけてのロシアの金融・経済危機の影響などにより一時的に減速したものの、9 9年第2四半期から、個人消費や設備投資など内需拡大に支えられて回復基調を維持していた。ただし、2 0 0 0年下半期以降、原油価格の高騰を背景にした個人消費の伸び悩みなどによる減速感が徐々に顕著なものとなった。EUの失業率は、9 4年(1 1 . 1%)をピークに低下傾向にあったが、2 0 0 3年は前年に比べ0 . 3ポイント増加の8 . 0%となった。このことは欧州の景気が後退していることを表している。

E Uでは、9 9年1月から単一通貨ユーロが導入され、参加条件(インフレ率是正、財政赤字解消、政府債務残高縮減、為替安定、長期金利安定)を満たせなかったギリシャ、また、参加を見合わせたイギリス、デンマークおよびスウェーデンを除く1 1ヵ国が参加した。2 0 0 1年1月からギリシャもユーロに参加し、2 0 0 2年1月1日からは参加1 2カ国でユーロ紙幣・硬貨の流通が開始されている。

2. 農・畜産業の概況

E Uは、加盟1 5カ国全体で1億3 , 0 0 0万ヘクタール(2 0 0 3年)の農用地面積を有し、農業経営体数は6 7 7万1千戸(2 0 0 0年)、1戸当たりの農用地面積は、18.7ヘクタール(2000年)である。

G D Pのうち農業生産の占める割合は、近年低下傾向にあるが、2 0 0 3年は前年同の1 . 6%であった。また、労働人口に占める割合は4 . 0 %(2 0 0 3 年)であり、他の先進国と同様に、その割合は高くない。農業生産額は2 , 8 6 4億2千万ユーロ(2 0 0 3年)となり、前年を0 . 0 2%上回った。このうちの4 1%に相当する1 , 1 6 2億4千万ユーロを畜産が占めており、E U農業の主要部門となっている。畜産の内訳を見ると、生乳が3 8 0億4千万ユーロ(同約1 4%)、牛肉・子牛肉が2 8 2億9千万ユーロ(同約1 0%)、豚肉が2 2 2億6千万ユーロ(同約8%)、卵・家きんが1 6 4億7千万ユーロ(同約6%)である。

2 0 0 3年のE U農業を概観した中で、特徴的な事項として天候不順による穀物、畜産物の生産の低下が挙げられる。欧州の大部分において、春の終わりから夏にかけて、少雨および猛暑にみまわれた。このような中、加盟国の一部において家畜、特に豚や家きんが死亡した。また、穀物の収穫量も著しく減少した。

2 0 0 3年の農業経済を部門別に見ると、畜産部門では、子牛や鶏卵などの価格が上昇した一方、生乳や豚肉の価格が下落したことにより、生産者価格は前年比1 . 9%安となった。また、生産額も生産者価格の低下により、前年比1 . 7%減となった。耕種作物部門においては、猛暑により、生産量は前年を6 . 3%下回り、生産額も前年比1.9%減となった。

農業者1人当たりの農業所得(実質)は、ドイツ(同1 4 . 2%減)、デンマーク(同7 . 9減)など8カ国が前年を下回ったものの、イギリス(前年比2 0 . 5%増)、ベルギー(同8 . 6%増)など7カ国において前年を上回り、E U 1 5カ国では前年を0.9%上回ることとなった。

3. 畜産の動向

(1)酪農・乳業

2 0 0 3年のE Uの生乳生産量は約1億2 , 2 2 0万トンに上り、全世界(約5億1,656万トン:FAO資料) の約2 4%を占めている。これは、単一国としては世界最大である米国の生産量の約1 . 6倍に相当する。E Uは、牛乳・乳製品の自給率が1 1 9%の純輸出市場であり、国際乳製品市場に大きな影響力を持っている。2 0 0 3年において、E Uが世界の乳製品貿易量に占める割合は、チーズが3 7%、バターが3 3%、脱脂粉乳が1 7%で、いずれも世界最大となっている。

@主要な政策

ア.生乳生産割当(クオータ)制度

国別に生産割当枠(クオータ)を定め、クオータ超過に対しては、指標価格の1 1 5%の課徴金が課せられる。加盟国間でのクオータの譲渡は認められていないが、農家間では、売却・リースや加盟国によるクオータの買い上げ・再配分などを通じて移動・調整することができる。なお、2 0 0 0年度および2 0 0 1年度にイタリア、アイルランド、スペイン、ギリシャ、北アイルランドでクオータの追加配分が行われた。

イ.乳製品の介入買入れ

バターや脱脂粉乳の介入買い入れを通じた乳製品の価格支持により、間接的に生乳価格を支持している。バターについては、市場価格が介入価格(1 0 0キログラム当たり3 2 8 . 2 0ユーロ)の9 2%を下回った場合、加盟国の介入機関により、入札方式による一定規格のバターの介入買い入れが行われる。

また、一定規格の脱脂粉乳については、3月1日〜8月3 1日の間、加盟国の介入機関が介入価格(1 0 0キログラム当たり2 0 5 . 5 2ユーロ)で買い入れる。なお、その年の介入買い入れ量が1 0 万9千トンを超えた場合、介入買い入れは停止され、入札による買い入れが実施できることとなっている。

ウ.輸出補助金

E U産乳製品の国際競争力を維持し、輸出を促進するため、チーズ、バター、脱脂粉乳などの輸出に対して輸出補助金が交付されている。輸出補助金の単価は、域内の市場価格と国際価格との差に基づき、品目ごと、輸出先ごとに販売・輸送コストなどを勘案して設定される。

エ.域内消費の促進

脱脂乳、脱脂粉乳の飼料用消費やバターのアイスクリームおよびベーカリー用消費に対する補助のほか、牛乳の学校給食用消費に対する補助などが行われている。

A生乳の生産動向

ア.酪農経営体数

E U 1 5カ国の酪農経営体数は、小規模層を中心に減少傾向にあり、2 0 0 1年には6 8万9千戸となった。9 9年に行われた前回の調査(7 4万9千戸) と比較すると、2年間で8.1%減少している。

イ. 飼養頭数

2 0 0 3年1 2月時点の乳用経産牛飼養頭数は、前年を1 . 5%下回る1 , 9 2 6万2千頭となり前年に引き続き減少した。クオータ制度の下で生乳生産の増加が抑えられている一方、経産牛1頭当たりの乳量が着実に増加していることが、飼養頭数減少の要因となっている。

1戸当たりの乳用経産牛飼養頭数は、1 5カ国平均で2 9 . 4頭(2 0 0 1年)である。しかし、最も飼養規模の大きいイギリスが7 3 . 9頭であるのに対し、規模が小さいオーストリアでは8.0頭など、加盟国間で差が大きい。

ウ.生乳生産量

E Uでは、共通農業政策(C A P)によるクオータ制度により、近年、生乳生産量は安定的に推移している。2 0 0 3年の生乳生産量は、1億2 , 2 2 0 万トンで前年とほぼ同水準(前年比0 . 2%増)であった。国別では、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、オランダの5カ国がいずれも1 千万トンを超えている。

なお、2 0 0 3年度( 2 0 0 3年4月〜2 0 0 4年3月) の生乳出荷量は1億1 , 5 9 4万トンで、E U全体ではクオータを0 . 9%上回った。この結果、国別クオータを上回ったイタリア、ドイツ、オーストリアなどに対して超過課徴金(スーパーレヴィー) が課せられた。

2 0 0 3年の経産牛1頭当たり乳量は、育種改良の進捗や飼養管理技術の向上などにより、前年比0 . 6%増の6 , 2 5 0キログラムとなった。ただし、加盟国間での差は大きく、スウェーデンの8 , 0 7 3 キログラム(同2 . 8%増)、デンマークの7 , 8 8 9キログラム(同5 . 1%増)に対し、ギリシャでは4 , 5 9 7キログラム(同2 . 2%増)と1 . 7倍程度の開きがある。

B牛乳・乳製品の需給動向

ア.飲用乳

2 0 0 3年の飲用乳生産量(販売量)は、前年比0 . 2%増の2 , 9 7 0万トンであった。国別の1人当たりの飲用乳(乳飲料、ヨーグルトなどを含む) 消費量は加盟国間でかなりの差があり、2 0 0 3年は、フィンランドの1 7 4 . 5キログラムからドイツの9 5 . 0キログラムとなっている。近年の飲用乳消費は、全脂肪乳の割合が5割以下に減少する一方、低脂肪乳の割合が増加する傾向となっている。また、発酵乳などの消費は引き続き増加している。

イ.バター

2 0 0 3年のE Uのバター生産量は、前年比0 . 5%増の1 8 9万トンであり、この量は、全世界のバター生産量の(約8 0 6万トン:F A O資料)の2 3%を占める。E Uはインドに次ぐ世界第2位のバター生産地域である。

2 0 0 3年の域外輸出量は3 1万5千トンで、前年を4 3 . 8%上回った。これは、その前年の豪州における干ばつの影響による在庫の減少で、豪州の輸出余力が低下したことなどによるものである。主な輸出先は、モロッコおよびエジプトなどの中東諸国やロシアである。域外輸入量は1 1 万5千トンで前年を0.9%下回った。

1人当たりのバター消費量は、消費者の健康に対する関心の高まりにより9 0年代から減少傾向にあったが、2 0 0 3年は前年同の4 . 4キログラムとなった。国別では、フランス(7.8キログラム)、ドイツ(6 . 6キログラム)での消費が多いが、マーガリンやデイリースプレッドの消費が多いデンマーク(1 . 7キログラム)などの北欧や、オリーブ油など植物油脂の消費が多いスペイン(0 . 5 キログラム)などの南欧では少なくなっている。

ウ.脱脂粉乳

E Uは、脱脂粉乳の生産量では全世界(約3 6 5 万トン:F A O資料)の3 0%(2 0 0 3年)のシェアを占める世界最大の生産地域である。

2 0 0 3年の生産量(バターミルクパウダーなどを含む)は1 1 2万7千トンで、前年を3 . 1%下回った。

2 0 0 3年の域外輸出量は、前年比4 4 . 2%増の2 2 万2千トンとなった。これは、その前年の豪州における干ばつの影響による在庫の減少で、豪州の輸出余力が低下したことなどによるものである。主な輸出先は、アルジェリア(2万2千トン)、エジプト(1万3千トン)などの北アフリカやインドネシア(2万7千トン)、タイ(1 万6千トン)、マレーシア(1万3千トン)などの東南アジア、メキシコ(1万9千トン)などである。生産量の減少に伴い需給が引き締まったことから、2 0 0 0年1 0月以降、介入在庫はゼロであった。しかし、2 0 0 2年には脱脂粉乳の生産量が大きく伸びたこともあり、2 0 0 2年3月以降介入在庫が生じている。

エ.チーズ

E Uは、チーズの生産量では全世界(1 , 7 4 3万4 千トン:F A O資料)の4 1%(2 0 0 3年)のシェアを占める世界最大の生産地域である。

チーズ生産量は、堅調な域内需要に加え、世界的な需要増加を背景に9 4年から2 0 0 3年までの1 0年間で約2 0%増加した。9 9年には、ロシアの経済悪化による同国向け輸出の停滞の影響で一時的に生産の伸びが鈍化したものの、その後回復している。2 0 0 1年には、B S E問題の再燃による代替需要生産の拡大により、最近では最大の伸びを示したが、その後落ち着き、2 0 0 3年の生産量は前年比1.0%増の729万3千トンとなった。

2 0 0 3年の域外輸出量は5 0万9千トンで、前年を4 . 5%上回った。これの原因としては、堅調なチーズの国際価格およびロシアの経済発展が挙げられる。主な輸出先は、米国(1 1万トン)、ロシア(9万2千トン)、日本(5万1千トン)である。とりわけロシアへの輸出は、前年比32.8%増と大きく伸びている。

一方、域外からの輸入量は、1 7万6千トンで前年を1 2 . 8%上回った。これは、主要な輸入先であるニュージーランドからの輸入が、2 0 0 2年には、同国における干ばつの影響により減少したが、2 0 0 3年に回復したためである。主な輸入先は、ニュージーランド(5万1千トン)、スイス(3万9千トン)、豪州(2万1千トン)である。

2 0 0 3年の消費量は7 1 6万9千トンで、前年を0 . 9%上回った。また、1人当たりのチーズ消費量は1 8 . 9キログラムで、前年を1 . 1%上回った。国別の1人当たりの消費量には、加盟国間でかなりの差があり、ギリシャ(2 8 . 7キログラム)、フランス(2 5 . 3キログラム)、ドイツ(2 1 . 7キログラム)などで多く、スペイン(9.5キログラム)、イギリス( 1 1 . 1キログラム)、アイルランド(11.2キログラム)などで少ない。

C生乳および牛乳・乳製品の価格動向

ア.生乳生産者価格

生乳生産者価格はバター、脱脂粉乳の介入買い上げ措置を通じて、間接的に支持される仕組みとなっており、価格支持の目標となる生乳指標価格が設定されている。

2 0 0 3年の国別生乳生産者価格(農家渡し、脂肪分3 . 7%)は、量販店の牛乳・乳製品市場に及ぼす力が強まり、価格引下げ圧力が高まったことから、前年度を3 . 1%下回る1 0 0キログラム当たり2 8 . 6 0ユーロとなった。国別でもほとんどの国で前年度を下回った。なお、イタリア、フィンランドなど4カ国で生乳指標価格(1 0 0キログラム当たり30.98ユーロ)を上回った。

イ.牛乳小売価格

ドイツの2 0 0 3年の全脂乳(回収ビン)の小売価格は、1リットル当たり0.87ユーロであった。

ウ.バター卸売価格

2 0 0 3年のE U各国のバター卸売価格(工場渡しまたは倉庫渡し)は、近年に需要が伸びているチーズやその他の高付加価値乳製品の生産が増加し、バターの生産が減少したためほとんどの国で前年を上回った(フランス:前年比1.7%高、ドイツ:同2.0%高)。

エ.脱脂粉乳卸売価格

2 0 0 3年のE U各国の脱脂粉乳卸売価格(工場渡し)は、近年に需要が伸びているチーズやその他の高付加価値乳製品の生産が増加し、脱脂粉乳の生産が減少したためほとんどの国で前年を上回った(ドイツ:前年比2 . 6%高、フランス: 同1.5%高)。

オ.チーズ卸売価格

2003年のEU各国のチーズ卸売価格(工場渡し) は、全体的には生産量の増加により低下している。こうした中、チェダーチーズなどは、ロシアなどからの需要の増大により、前年を上回った(イギリス:前年比10.0%高)。

CAP改革に合意

E U農相理事会は2 0 0 3年6月2 6日、共通農業政策(C A P)の改革に合意した。これにより2 0 0 2年7月に欧州委員会からC A Pの中間見直しに関する提案が出されて以来、議論を重ねてきたC A P改革が決着した。E U農相理事会は、6月1 1〜1 2日、1 8日〜1 9日に議論を重ねたが、結論に至らなかったため2 5日に再び開催され、夜を徹しての議論の末、26日朝に合意された。

この合意を受け、欧州委員会のフィシュラー委員(農業担当)は、「今回の合意は、新たな時代の始まりを示すものである。われわれの農業政策は根本的に変わった。直接支払いの大部分は生産と結び付かなくなる。今回の改革は、全世界に強いメッセージを送るものである。われわれの新たな政策は、世界貿易に役立つものである。今日の合意でE Uは、世界貿易機関(W T O)交渉において非常に有利となる。E Uは自分たちの宿題を済ませた。W T O交渉を成功させるためには、今度は他の国が行動を起こす番である。ボールは他の国にある。例えばアメリカの農業政策は、非常に貿易わい曲的であり、その程度を次第に強めている」とコメントしている。

今回の合意の概要は以下の通りである。

1 単一の直接支払い(デカップリング)

2 0 0 0年から2 0 0 2年の間の受取実績を基に、生産とは切り離した直接支払いを2 0 0 5年から実施する(加盟国の農業の状況で実施が遅くなる場合は、どんなに遅くとも2007年までには実施)。

しかしながら、欧州委員会の規則案では、すべての直接支払いを単一の直接支払いに統合することとしていたが、E U最大の農業予算の享受国であるフランスなどの反対で耕種部門や肉用牛部門で以下の例外措置が取られた。

(1)耕作放棄を防ぐため、加盟国の裁量により、穀物への直接支払いの一部を生産とリンクした直接支払いとすること、また、肉用牛部門のと畜奨励金については金額を減額した上で、継続することを可能とする。

(2)肉用牛部門の繁殖雌牛奨励金は現行のままとする。

一方、酪農家に対する直接支払いは、規則案で示された額を引き上げ、2 0 0 4年の酪農家の生乳出荷量1トン当たり1 1 . 8 1ユーロ、2 0 0 5年は2 3 . 6 5 ユーロ、2006年以降は35.5ユーロとし、2008年から、酪農家に対する直接支払いは、単一の直接支払いに統一する。

2 価格支持政策(酪農関係)

(1)生乳生産割当(クオータ)制度

2 0 0 6年までは追加的な枠の拡大はない。また、クオータ制度は2014年度までは継続する。

(2)介入価格など

介入価格等の引き下げについては、規則案に比べ下げ幅を縮小することなどで合意した(規則案では、バターは2 0 0 8年までに1 0 0キログラム当たり2 1 3 . 9 5ユーロ、脱脂粉乳は同年までに1 6 9 . 7 4 ユーロまで引き下げを実施)。

また、規則案では、バターの介入買入れ限度数量を新たに設定し、年間3万トンとしていたが、合意案では2 0 0 4年度は7万トン、2 0 0 5年度は6万トン、2006年度は5万トン、2007年度は4万トン、2008年以降は3万トンと設定された。

(2)肉牛・牛肉産業

2 0 0 3年のE Uの牛肉生産量は7 3 6万8千トンで、世界の牛肉生産量(約6 , 1 4 5万トン: F A O資料) の1 2%を占めている。幅広い気候・地理・歴史的条件の下、さまざまなタイプの牛(肉用種、乳用種、乳肉兼用種)が飼養されており、牛肉の生産構造や生産する牛肉のタイプ(子牛、経産牛、去勢牛、非去勢牛など)は、国によってかなり異なっている。このような中、E Uにおける牛肉自給率は、2 0 0 2年までは1 0 0%を超えていたが、2 0 0 0年末に発生したB S E問題の再燃によって低下した消費が回復し、消費量が生産量を上回ったことから、2 0 0 3年からは牛肉の純輸入地域となっている。

@主な政策

ア.介入買い入れ

域内の牛肉価格が下落した場合、加盟国の介入機関を通じ、一定基準を満たす牛肉を買い入れ、市場から隔離することにより、価格を一定以上に維持している。2 0 0 2年6月3 0日までは、域内および加盟国・地域の牛肉市場平均価格がそれぞれ介入価格の8 4%、8 0%を2週間連続して下回った場合に発動される通常介入(買い入れ数量上限あり)と、価格が極端に低下した場合に実施されるセーフティーネット介入(買い入れ数量上限なし)の2つの方式が実施されていたが、通常介入については、2 0 0 2年6月3 0日に廃止され、同年7月1日以降、民間在庫補助に移行した。

セーフティーネット介入は、規則( E C/ 1 2 5 4/9 9)に基づく枝肉の欧州平均市場価格が、2週間にわたって1 , 5 6 0ユーロ/トンを下回る場合に実施される。

イ.民間在庫補助

E U市場でR3に格付けされた雄牛の枝肉基本価格を1 0 0キログラム当たり2 2 2 . 4ユーロと定め、E U平均市場価格が基本価格の1 0 3%を下回り、それが継続する可能性がある場合に助成が行われる。

ウ.直接支払い

2 0 0 0年度からの介入価格の引き下げにより減少した農業所得を補償するため、繁殖雌牛奨励金などの奨励金について、単価が引き上げられたほか、2 0 0 0年には新たにと畜奨励金が新設された。

(ア)繁殖雌牛奨励金(Suckler cow premium) 繁殖雌牛を飼養する肉用牛生産者(生乳出荷量がゼロまたは生乳生産枠(クオータ)が1 2 0トン以下の生産者)に対し、1頭当たり2 0 0ユーロ(2003年)の奨励金が交付される。

(イ)特別奨励金(Beef special premium) 雄牛や去勢牛を飼養する生産者に対し、肉牛の生存中に2回(1 0カ月齢および2 2ヵ月齢(雄牛は1回のみ))まで、各農家90頭を限度として、去勢牛1頭当たり1 5 0ユーロ、雄牛1頭当たり2 1 0ユーロ(いずれも2 0 0 3年)の奨励金が交付される。

(ウ)と畜奨励金

牛を一定期間飼養後、と畜または域外に輸出した生産者に対し、8カ月齢以上の牛1頭当たり8 0ユーロ、1カ月齢超7カ月齢未満の子牛1 頭当たり5 0ユーロ(いずれも2 0 0 3年)の奨励金が交付される。

エ.輸出補助金

E U産牛肉の国際競争力を維持し、輸出を促進するため、輸出補助金が交付されている。輸出補助金の単価は、域内の市場価格と国際価格との差に基づき、品目ごと、輸出先ごとに設定される。

オ.BSE関連対策

動物性たんぱく質の飼料利用全面禁止などのB S E撲滅対策、牛肉の安全性を確保するための3 0カ月齢超の食用向けの健康な牛に対するB S E 全頭検査などが実施されている。

A肉牛の生産動向

ア.牛飼養経営体数

2 0 0 1年のE U 1 5カ国の牛飼養経営体数(乳牛飼養を含む)は、9 9年の前回調査に比べ7%減の148万4千戸で、減少が続いている。

牛飼養経営体数は、E U全農業経営体数(6 7 7 万戸)の2 2%を占めていることから、E U全農業経営体の5分の1は何らかの形で牛を飼養していることになる。牛飼養経営体数の多い国は、フランス(2 6万5千戸)、ドイツ(2 1万8千戸)、イタリア(20万3千戸)、スペイン(18万6千戸) の順となっている。

イ.飼養頭数

2 0 0 3年1 2月時点の牛飼養頭数は7 , 7 4 7万9千頭(乳用経産牛を含む)で、前年同期比1 . 3%減となった。

1戸当たりの飼養頭数は5 4 . 3頭(2 0 0 1年)で、9 9年と比較して2 . 3頭増加しており、引き続き飼養規模が拡大している。国別では、ルクセンブルグ(1 1 6 . 6頭)やオランダ(9 3 . 1頭)、イギリス(9 0 . 0頭)からポルトガル(1 6 . 0頭)やギリシャ(1 6 . 5頭)まで飼養規模の差が大きい。スペイン(3 3 . 7頭)やイタリア(3 4 . 4頭)を含めた南欧諸国では、飼養規模が相対的に小さい。

B牛肉の需給動向

ア.牛と畜頭数および牛肉生産量

2 0 0 3年の牛と畜頭数は2 , 6 3 3万4千頭となり、前年を3.0%下回った。また、国別のと畜頭数は、フランス(5 7 0万頭)、イタリア(4 2 1万頭)、ドイツ(3 6 7万頭)、スペイン(2 7 6万頭)、イギリス(2 2 6万頭)の順で、これら5カ国でE Uの全と畜頭数の約7割を占めている。

牛肉生産量は、過去最高の866万トン(12カ国) を記録した9 1年以降減少傾向にある。2 0 0 3年(1 5カ国)においても、7 3 8万7千トンと前年を1.5%下回った。

1頭当たりの平均枝肉重量(2 0 0 3年)は、成牛で前年比0 . 4%増の3 1 7 . 7キログラム、子牛は0.7%増の136.9キログラムであった。

イ.輸入および輸出

輸入については、ガット・ウルグアイラウンド合意に基づき、さまざまな関税割当や東欧諸国との特恵制度が設けられている。輸入量は、生産量の減少に加え、域内の消費量が増加したため、前年比5 . 8%増の4 7万5千トンとなった。主な輸入先は、ブラジル、アルゼンチンなどである。

輸出については、従来から北アフリカおよび中東などが主要輸出先となっている。しかし、2 0 0 1年秋以降のB S E問題の再燃や2 0 0 2年2月の口蹄疫(F M D)の発生により、多くの国で一時的にE U産牛肉の輸入禁止措置が講じられた。2 0 0 3年の域外輸出量は、生産量の減少に加え、域内の消費量の増加により大きく減少し、前年比22.1%減の35万7千トンとなった。

ウ.消費

2 0 0 0年1 0月のフランスでのB S E感染牛の販売疑惑や同年1 1月にドイツ、スペインでB S Eの初発例が発見されたことなどにより、牛肉の安全性に対する疑念がE Uの消費者に広がったことから、2 0 0 1年の消費量は前年比5 . 9%減の6 8 0万3千トンと大きく落ち込んだ。しかし、2 0 0 2年以降回復し、2 0 0 3年には、牛肉の消費は前年比2.6%増の759万2千トンと99年の水準を超えた。

1人当たりの牛肉消費量も同様に、2 0 0 1年には1 8 . 3キログラムと前年を1 . 0キログラム下回ったが、2 0 0 3年には2 0 0 1年のレベルから1 . 9キログラム増加し、20.2キログラムとなった。

エ.介入在庫

9 6、9 7年にB S E問題の影響による価格下落に伴い、介入買い入れが実施されたことにより急激に増加した介入在庫も、9 8年末の5 0万4千トンをピークに減少し、2 0 0 0年末にはわずか2千トンにまで減少した。しかし、2 0 0 0年末のB S E 問題の再燃により、牛肉価格が落ち込んだため、通常介入だけでなくセーフティーネット介入も実施された。また、従来介入買い上げの対象となっていなかった経産牛を買上対象とした特別買い上げも実施された結果、2 0 0 1年末の介入在庫量は、前年同期の1 1 1倍に当たる2 2万2千トンに達していた。その後消費の回復により、在庫は減少し2 0 0 3年末には前年比8 2 . 7%減の2万9 千トンとなった。

C肉牛・牛肉の価格動向

ア.成牛の参考価格

成牛の市場参考価格(以下「参考価格」という)は、加盟国の代表的市場における成牛(生体)の加重平均価格をベースとして算出され、E Uにおける肥育牛の市場価格の動向を把握するものとして、欧州委員会が毎週ごとに公表する公式価格である。

2 0 0 1年の参考価格は、2 0 0 0年秋以降のB S E問題再燃の影響で、前年比1 4 . 8%安の1 0 0キログラム当たり1 1 0 . 7 9 4ユーロと記録的な落ち込みを見せたが、2 0 0 2年には、前年比5 . 5%高の1 0 0キログラム当たり116.912ユーロと回復している。

イ.枝肉卸売価格

2 0 0 3年の枝肉卸売価格は、生産量の減少に加え、域内の消費量の増加により多くの国で前年を上回った。

ウ.小売価格

2 0 0 3年の小売価格は、多くの国では生産量の減少に加え、域内の消費量の増加により前年とおおむね同水準または前年を上回った。

オランダ、ベルギー、ドイツで鳥インフルエンザが発生

オランダ農業自然管理漁業省は2 0 0 3年3月1 日、養鶏の盛んな地域である中東部のヘルデルラント州の6農場で鳥インフルエンザが発生した疑いがあると発表した。翌2日には、同国の国立獣医学研究所での確定診断により、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)であることが確認された。

オランダ政府は、欧州委員会の担当部局と協力して、E U指令(理事会指令9 2/4 0/E E C)に基づく以下の防疫対策を直ちに実施した。

  1. 国内の生きた家きんの市場、展示会、その他のイベントの禁止
  2. 発生が疑われる農場の周囲1 0キロメートル以内での生きた家きん、卵、ふん尿の移動禁止
  3. 生きた家きん、卵(消費用卵を除く)、ふん尿の移動禁止措置のオランダ全域への拡大
  4. 生きた家きんおよび卵の輸出禁止
  5. (感染源となり得る)接触のあった生産物、飼料、家畜に対する家畜・食肉検査局による追跡

オランダ政府の迅速な対応にもかかわらず、その後、感染は拡大したが、8月にはすべての制限措置が解除された。欧州委員会によれば、オランダにおける鳥インフルエンザの被害は、感染農場数2 5 2カ所、とうたされた家きんの羽数は2千8 百万羽であった。

また、ベルギー連邦食品安全庁( A F S C AF A V V)は同年4月1 5日、オランダ国境近くのリンブルグ州で、鳥インフルエンザが発生した疑いがあると公表した。翌1 6日には、H P A Iであることが確認された。

H P A Iの発生確認に伴い、ベルギー政府は欧州委員会の担当部局と協力して、E U指令(理事会指令9 2/4 0/E E C)に基づき、4月1 6日正午から生きた家きんおよび卵のベルギーからの輸出禁止や、生きた家きん、卵(消費用卵を除く)、ふん尿の運搬禁止などの防疫対策を実施したほか、発生農場および発生農場から3キロメートル以内の防疫区域内の農場で飼養された約2 5万羽の家きんの殺処分を行った。

こうした状況を受けて、欧州委員会は4月16日、ベルギーでのH P A Iの発生に対するE Uレベルでの防疫措置を決定し、4月2 5日まで、生きた家きんおよび卵について、ベルギーから他の加盟国およびEU域外への輸出を禁止した。

欧州委員会の発表によると、ベルギーにおける鳥インフルエンザの被害は、感染農場数は8カ所、とうたされた家きんの羽数は300万羽であった。

さらに、H P A Iがオランダやベルギーで猛威を振う中、ドイツ連邦政府衛生当局は5月9日、同国でも鳥インフルエンザが発生した疑いのあることを欧州委員会や国際獣疫事務局(O I E)に対し通報した。

鳥インフルエンザの発生が疑われた農場は、ドイツ中西部のノルトライン・ヴェストファーレン州のオランダ国境に近いシュヴァルムタール(S c h w a l m t a l)に在り、飼養している約3万羽の家きんの一部に鳥インフルエンザの臨床症状を呈するものが認められた。

H P A Iに対する防疫措置として、ノルトライン・ヴェストファーレン州では、@州内の生きた家きん、種卵および家きんのふんなどの移動禁止、A発生農場から半径約1 0キロメートルの監視区域の設定、B発生農場から半径約3キロメートル以内で飼養されるすべての家きんの殺処分−などが直ちに実施された。

こうした状況を受けて、欧州委員会は5月12日、ドイツに対するE Uレベルでの防疫措置を定めた委員会決定(2 0 0 3/3 3 3/E C)を採択した。これにより、生きた家きん、種卵および加熱処理を施していない家きんのふんなどに関して、ノルトライン・ヴェストファーレン州からドイツの他地域、E U加盟国および域外国への輸出が禁止された。ドイツにおける鳥インフルエンザの発生は、この1農場だけであった。

なお、各国の関係者の努力により、8月にはすべての地域で制限措置が解除された。

(3)養豚・豚肉産業

2 0 0 3年のE Uの豚肉生産量は、1 , 7 7 9万5千トンで世界の豚肉生産量(約9,858万トン:FAO資料) の1 8%を占めている。E Uは豚肉自給率1 0 7%の純輸出地域であり、世界の豚肉輸出量(約3 8 6万トン)に占める割合は6 9%(2 0 0 3年)と最大である。特に、デンマークの輸出量はE U全体の輸出量の約4割を占め、米国の輸出量の約2倍に相当する。E Uでは、加盟国間で差が大きいものの、食肉消費量に占める割合は豚肉が最も大きい。

@主な政策

ア.民間在庫補助

域内の豚肉価格が下落した場合、特定の豚肉を一定期間在庫する者に対し補助金が交付される。

イ.輸出補助金

E U産豚肉の国際競争力を維持し、輸出を促進するため、輸出補助金が交付されている。輸出補助金の単価は、域内の市場価格と国際価格との差に基づき、品目ごと、輸出先ごとに設定される。

A肉豚の生産動向

ア.養豚経営体数

2 0 0 1年のE U 1 5カ国の養豚経営体数は7 4万4千戸で、減少が続いている。E U全農業経営体数(6 7 7万戸)に占める割合は1 1%であり、9 7年と比較して6ポイント下回った。国別では、イタリア(2 3万戸)、ポルトガル(1 2万1千戸)、ドイツ(11万6千戸)が上位である。

イ.飼養頭数

2 0 0 3年1 2月現在の豚飼養頭数は1億2 , 1 6 6万1 千頭で、前年を0 . 5%下回った。なお、E Uでは、主要生産国で生産が拡大した結果、9 8年末から9 9年前半にかけて豚肉価格は記録的に暴落し、養豚農家の経営の悪化により廃業や規模縮小が進み、飼養頭数が減少した。

1戸当たりの飼養頭数は166.0頭(2001年)と、9 9年と比較して4 2 . 7頭増加している。国別では、規模が大きいアイルランドの1 , 3 0 2 . 0頭、オランダの1 , 0 7 8 . 3頭からポルトガルの1 9 . 8頭やイタリアの38.1頭まで加盟国間で大きな差が見られる。

B豚肉の需給動向

ア.と畜頭数と豚肉生産量

2 0 0 3年の豚と畜頭数は2億2 1 0万7千頭となり、前年を0 . 4%上回った。また、豚肉生産量は1,779万5千トンと前年を0.4%下回った。

2 0 0 3年の1頭当たりの平均枝肉重量は、8 8 . 0 キログラムと前年を0.2キログラム上回った。

イ.輸入および輸出

2 0 0 3年の輸入量(生体豚、調製品およびラードを含む)は、前年比3 2 . 8%増の7万2千トンと大幅に増加した。主な相手国は、ハンガリー、ポーランドなど東欧諸国である。

2 0 0 3年の輸出量は、前年比1 . 5%減の1 4 8万トン7千トンなった。

ウ.消費

2 0 0 3年の消費量は、前年比1 . 9%増の1 , 6 5 0万トンであった。2 0 0 3年の1人当たりの豚肉消費量は、43.8キログラムと前年を0.9%上回った。

C肥育豚、豚肉の価格動向

ア.豚肉の市場参考価格

豚枝肉市場参考価格(以下「参考価格」という)は、加盟国の代表的市場における豚枝肉の加重平均価格をベースとして算出される。

9 0年代の参考価格の動きを見ると、生産の増減に伴い大きく乱高下している。参考価格は、9 6年のB S E問題の影響による豚肉への需要のシフトや、9 7年のオランダにおける豚コレラの大流行による生産の減少などが需給をひっ迫させ、豚肉価格は急騰した。その後、価格高騰に刺激を受けた主要国における豚の増産により、一転して需給が急速に緩和した結果、価格が急落し、9 8年末から9 9年にかけて記録的な低水準となった。その後、2 0 0 0年末に発生したB S E問題の再燃により上昇したものの、その沈静化により下落をたどった。2 0 0 3年には、前年比6 . 1%安の100キログラム当たり127.255ユーロとなった。

イ.小売価格

2 0 0 3年の豚肉の小売価格は、牛肉の代替需要によって生じた消費の増加が収まったため、ほとんどの国で前年を下回った。

欧州委、猛暑による農家の被害に追加援助対策を決定

イタリア、ドイツ、スペイン、フランスおよびポルトガルに加え、ポーランドやハンガリーなどのE U加盟予定国など、欧州の南部および中部で、夏の日照り、熱波および森林火災により、穀物収量の大幅な減少、農産物の生産性や市場価値の低下、生産費用の増加を招いた。また、地域により被害の大きさは異なるが、農業分野で被害が大きいものは、青刈り飼料(green fodder)、耕種作物、鶏肉または鶏卵生産などの家畜生産部門などであった。また、ジャガイモやワイン部門も被害を受けた。

欧州委員会は2 0 0 3年8月1 4日、猛暑による被害のあった欧州各地の農家に対する追加援助対策を決定した。

穀物

  • 穀物生産農家に対し作物収穫後に支払われる直接支払いを、通常の給付開始時期より1カ月前倒し、10月16日から開始
  • 飼料として介入在庫から穀物(ライ麦7 3万トン、大麦6 1万トン、ソルガム1 2万トン) を放出

牛肉および羊・ヤギ

  • 繁殖雌牛奨励金と雄牛特別奨励金および羊・ヤギに対する奨励金の支払いは、通常時の給付開始時期を前倒し、9月1日から開始

なお、欧州委員会は、追加援助対策の決定前に、すでに以下の対策を実施した。

@猛暑による被害が特に大きいフランス、ドイツ、イタリア、オーストリアなど8カ国における、休耕地(セットアサイド)への飼料向け作物の作付けの許可

A家畜用飼料として米を介入在庫からの放出

B牛肉分野における生産奨励金の前払い金に係る上限を60%から80%へ引き上げ。

一方、欧州農業組織委員会/欧州農業共同組合委員会(COPA/COGECA)は2003年10月10日、同年の夏に欧州を襲った猛暑や森林火災による被害額がその時点の推計で、1 3 0億ユーロであるとする「農業および林業に与える2 0 0 3年夏の熱波と日照りによる影響額の評価額」と題する研究結果を公表した。

農業分野への主な影響は次のとおり。

1 牧草地

青刈り飼料への影響が最大で、生産量はドイツ、オーストリア、スペインで前年比3 0%減、イタリアで同4 0%減、フランスで同6 0%減とその被害は幅があるものの、生産量が大幅に減少すると推計。このことにより不足する飼料を確保するためには、全体で6億2,500万ユーロの費用が必要。

なお、青刈り飼料の不足で、肉用牛や乳用牛の一部の早期と畜を実施。

2 肉用牛

フランス1国だけで、被害額は1 5億ユーロと推計。肉用牛農家1戸当たりの不足する飼料の購入に係る費用は平均3万ユーロと推計。

3 牛乳

同年7月から9月の生乳の集荷量は地域により差はあるものの、フランス全体では、前年同期に比べ2 . 6 5%(1億8 , 3 0 0万リットル)減少し、5 , 6 0 0万ユーロの販売収入が減少したと推計。なお、同年の夏の猛暑による生乳生産への影響は、翌年の春に新たな飼料が生産されるまで続くものと推定。

4 養鶏

フランスとスペインで大きな被害が発生。フランス国内では、主要産地を中心に全体で約4百万羽のブロイラーが暑熱により死亡。さらに、生産性が約1 5%低下し、1 5 0万羽(全体の4%)の採卵鶏に被害。以上の被害額は4 , 2 0 0万ユーロと推計。

5 養豚

フランスおよびスペインでの被害額は、それぞれ5,500万ユーロ、2,700万ユーロと推計。

6 穀物

穀物は、作付面積が前年に比べ2 . 7%(約百万ヘクタール)減少したことや、単位面積当たりの収穫量が8 . 6%減少することから、生産量は前年に比べ1 1 . 1%(約2 , 3 0 0万トン)減少し、約1億8,600万トンになると推計。