海外編 |
■■■ III オセアニア【豪州】 ■■■ |
1. 一般経済の概況 |
豪州経済は、1990年に入り、個人消費や住宅建設の増加などの内需の拡大を背景に実質国内総生産(GDP)成長率は比較的高い水準で推移していた。しかし、2000/01年度に導入した物品サービス税(GST)の影響により、シドニーオリンピック終了後の2000年末、一時的にマイナス成長を記録した。だが、再び個人消費や住宅建設などの内需回復や、第一次産品を中心とした輸出の増加も手伝って経済は回復に向かい、その後は順調に推移している。2004/05年度の実質GDP成長率は前年度から1.5ポイント低下の2.5%であったが、世界的な景気低迷感の中で安定した成長を持続している。また、GDPも8,590億6千万豪ドルと前年度を上回った。 2004/05年度の平均失業率は、安定した経済活動を反映し、前年度から0.7ポイント改善して5.2%と過去最低水準になった。平均失業率は、1994/95年度以降、継続的に1ケタ台を維持している。 一方、貿易収支については、主要通貨に対して豪ドル高で推移する為替動向やおう盛な国内需要などにより、2004/05年度は243億9千万ドルの損失を計上し、3年連続での記録的な赤字となった。 なお、日本は、輸出入を合わせた貿易総額で米国を上回り、豪州にとって引き続き最大の貿易相手国となっているが、最近は、中国との貿易の伸びが著しくなっている。 |
表1 主要経済指標
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2. 農・畜産業の概況 |
豪州の農業(林業、水産業を除く)は、GDPで全体の約2.9%(2004/05年度)、就業人口で全体の約3.5%(林業、水産業を含む)を占めるにしか過ぎず、産業全体に占める割合は必ずしも高くない。しかし、2004/05年度の全商業輸出額に占める農産物の割合は20.1%と鉱物資源(44.6%)に次いで高く、輸出産業の中で重要な位置を占めている。 豪州では、国土面積の約6割に相当する約4億6千万ヘクタールが農業可能地となっているが、そのうちの約9割は牛や羊の放牧のみに利用可能な自然草地である。この中で、2004年3月末現在の農場数は、前年より1.8%減の約13万1千戸となった。農場数は97年まで減少傾向で推移し、その後、1農場当たりの農業粗収入の向上に伴い増加傾向で推移していたが、2000年の酪農乳業制度改革や、2002/03年度の大規模な干ばつなどを背景に、再び減少傾向にある。 一方、経営面では、肉牛、羊、酪農などの専業経営のみならず穀物などとの兼業も多いことから、農業従事者全体の約8割が何らかの形で畜産経営に携わっているとみられている。 |
表2 農場数などの推移
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近年、上昇を続けていた農業粗生産額は、2002/03年度の干ばつの影響により大きな落ち込みをみせたが、その後はおおむね増加基調にある。2004/05年度は畜産物生産が好調だった反面、穀物生産が前年度を下回ったことから、前年度比3.9%減の約353億6千万豪ドルとなった。 内訳については、畜産物粗生産額が前年度比7.2%増の約176億5千万豪ドル、一方、穀物など畜産以外の農産物の粗生産額が前年度比13%減の約177億1千万豪ドルであった。干ばつの影響などにより農業全体の過半数割れとなっていた畜産物の粗生産額は、肉牛・牛肉や乳製品需要の高まりを背景に、再び、過半数に迫る勢いをみせてきた。 なお、畜産物のうち、肉牛・牛肉は約77億豪ドル(15.5%増)、牛乳・乳製品は約31億豪ドル(11.8%増)である。 前年度に2ケタの落ち込みとなった農産物総輸出額(FOB)は、2004/05年度に入り牛肉や乳製品輸出を中心に好転がみられたことから、前年度比6.2%増の約276億8千万豪ドルまで回復した。 このうち、畜産物輸出額は、前年度比11.3%増の約140億豪ドルとなった。その内訳は、肉牛・牛肉が約49億豪ドル(19.8%増)、羊・羊肉が約13億豪ドル(3.5%増)、羊毛が約28億豪ドル(1.7%増)、牛乳・乳製品が約24億豪ドル(11%増)であり、いずれも増加した。 2004/05年度の畜産物輸出額は、好調な輸出を背景に農産物総輸出額全体の50.6%と、再び、過半数を上回る結果となっている。 |
図1 農業粗生産額(2004/05年度)
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図2 農産物総輸出額(2004/05年度)
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表3 乳牛飼養頭数等の推移
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図3 酪農家戸数と乳牛飼養規模の推移
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図4 生乳生産量と乳牛1頭当たり乳量の推移
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図5 州別生乳生産量(2004/05年度)
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表4 牛乳・乳製品生産量の推移
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表5 主要乳製品の輸出量の推移
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図6 地域別乳製品輸出額(2004/05年度)
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表6 1人当たり乳製品消費量の推移
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C乳価の動向 |
1999/2000年度までの生産者乳価は、飲用乳価と加工原料乳価の差が2倍以上に拡大していたが、2000年6月末をもって飲用向け生乳に対する最低価格保証制度が廃止されたため、それ以降、飲用向けの乳価が大幅に低下した。2004/05年度の平均乳価は、国際的な乳製品市況の上向きを反映して前年度比12.9%高の1リットル当たり31.5豪セントと上昇した。 | 表7 生産者乳価の推移
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@主要な政策 肉牛や牛肉の需給を管理する制度政策は特になく、生産者は国内外のマーケット動向を勘案しつつ経営を行っている。また、豪州家畜検疫検査局(AQIS)などの政府機関が防疫政策を、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)などの業界団体が販売促進、研究開発、マーケット情報の提供などを行っているが、これらの事業財源の多くは、生体の販売時に課される生産者課徴金(強制徴収)によるものである。 |
図7 牛飼養頭数の長期的推移
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表8 牛飼養頭数の推移
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図8 州別肉牛飼養頭数(2005年6月末現在)
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表9 牛肉需給の推移
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表10 牛肉の国別輸出量の推移(船積み重量ベース)
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表11 生体牛の国別輸出頭数の推移
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表12 1人当り食肉消費量の推移
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C肉牛価格の動向 |
肉牛の販売価格は、1996〜97年にかけて、英国などにおけるBSE報道やアジア経済危機などによる世界的な牛肉需要減退の影響を受けて低迷した。その後は需要が回復した反面、供給がタイトであったことから、肉牛販売価格は回復基調に転じ、2001年9月には、過去最高水準の高値となった。 2004/05年度は、干ばつの影響が緩和してきたことから肉牛生産者が出荷を抑制する傾向がみられた中で、豪州産牛肉に対する需要が高まったことから、肉牛価格は上昇基調で推移し、再び最高水準に達している。 |
表13 肉牛価格の推移(枝肉換算)
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豪州フィードロット協会(ALFA)は7月27日、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)との共同調査による四半期ごとの全国フィードロット飼養頭数調査結果を発表した。これによると、2005年6月末時点の総飼養頭数は87万9千頭と、前回調査(2005年3月末)に引き続き、過去最高の飼養頭数を記録した。また、フィードロットの収容可能頭数は、全体で102万9千頭と初めて100万頭を突破し、稼働率も前回調査に引き続き85%の高水準を維持するなど、全体的に好調な結果となった。 飼養頭数の増加要因についてALFAでは、通常の季節的要因と併せ輸出、国内需要が依然として高かったことを挙げた上で、6月中旬まで続いた干ばつの影響で素牛出荷増加による肉牛価格の低下も、フィードロットの飼養頭数増加を後押ししたとみている。 飼養頭数を仕向け先別に見ると、輸出向け飼養頭数は55万1千頭でフィードロット全体の63%となり、前期比で4ポイント低下した。一方、国内向けは31万4千頭で同36%と前期比で6ポイント上昇した。 高まる需要を背景にフィードロット飼養頭数は増加基調で推移してきたが、6月中旬以降の全国的な降雨で、肉牛生産者が素牛出荷を抑制する動きが出てきたことから、市場価格は上昇に転じており、フィードロットへの影響が懸念されている。
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