海外編 |
■■■ IV 東南アジア ■■■ |
表1 主要経済指標 |
表2 アセアン諸国の主要穀物および畜産物生産量
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3. 畜産の動向 |
表3 乳用牛の飼養頭数と生乳生産動向 |
表4 牛乳・乳製品の需給 |
(2)肉牛・牛肉産業 アセアン諸国では、従来から、主に役畜として供されてきた水牛も重要なタンパク質供給源となっているため、ここでは牛肉の生産および消費の中に水牛肉を含めた。 |
表5 肉牛の飼養頭数と牛肉生産動向 |
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A 牛肉の需給動向 |
インドネシアの牛肉輸入量は前年の1万1千トンから1万2千トンに増加した。主な輸入先は豪州、ニュージーランド(NZ)などである。年間1人当たりの牛肉消費量は2.3キログラム程度とされている。畜種ごとの統計はないものの、食肉全体の消費がジャカルタなど一部地域に集中していること、民族・宗教によって食肉に対する慣習が異なることなどから、消費動向における地域差が大きいことが推察される。 タイでは2004年の年間1人当たりの牛肉消費量はおよそ1.5キログラム、2001年以降減少傾向で推移してきたが若干回復している。同年の牛肉の輸入は2千トン程度とわずかで、その大部分が豪州とNZ産である。 |
表6 牛肉の需給 |
マレーシアは人口が少ないこともあり生産規模はわずかであるものの、半島部を中心に生産量が増加しつつあり、2003年の生産量は水牛肉と合わせて2万4千トンとなったが、輸入量が10万トンと消費量の多くを輸入に頼っている。また消費は、年間1人当たり消費量が5.1キログラムとアセアン各国の中では突出している。 フィリピンの1人当たりの消費量は前年とほぼ変わらず4.3キログラムを維持しており、需給は安定している。輸入牛肉11万2千トンのうち水牛肉が6万5千トンと多くを占め、大部分がインド産である一方、牛肉はブラジル、豪州、NZなどからの輸入となっている。 |
(3)養豚・豚肉産業 アセアン諸国では、インドネシアをはじめ宗教上の理由から豚肉を消費しないイスラム教徒の人口が多い。このため、国によって食肉における豚肉の重要度には大きな格差があり、国の政策上の位置付けもさまざまである。しかし、イスラム教徒の多い国においても、中国系住民などの豚肉需要をまったく無視することはできず、種々の規制は設けながらも養豚を許容している。 |
図1 豚の飼養頭数の推移 |
表7 養豚の現状と豚肉生産動向 |
図2 豚肉の生産量の推移 |
表8 豚肉の需給 |
(4)養鶏・鶏肉産業 |
図3 ブロイラーの飼養羽数の推移
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表9 鶏の飼養状況と鶏卵・肉の生産動向
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図4 ブロイラー肉の生産量の推移
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表10 ブロイラー肉の需給
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B鶏卵の需給動向 |
東南アジア各国には鶏卵を粉卵や液卵に加工する施設がほとんどないため、市場動向に応じて価格が乱高下しやすい傾向がある。また、価格の変動に伴って生産量を調整する需給安定システムがうまく機能していないため、頻繁に供給過剰の問題を抱えることとなる。2004年の1人1年当たりの鶏卵消費量は、タイが6.3キログラム、インドネシアが3.5キログラム、フィリピンが3.3キログラムとなっており、タイを除き2003年に比べ消費量は増加している。2003年のマレーシア半島部における1人1年当たりの鶏卵消費量は14.2キログラムとなっており、2002年より4%増加した。マレーシアを除き、各国とも依然として低い消費水準にあるため、各国は供給過剰対策として消費拡大キャンペーンに力を入れている。 | 表11 鶏卵の需給
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東南アジアではタイのほか、シンガポール向けに輸出しているマレーシアを除き、輸出入の実績はほとんど無い。タイの2004年輸出実績は、AIの発生により前年比67%減の約4千トンと大幅に減少した。なお、シンガポールは鶏卵の1日当たり国内消費量の約2/3に相当する2百万個をマレーシアから輸入していたが、鶏肉の需給動向で述べたとおり、2004年8月のマレーシアにおけるAI発生により、同国からの家きん製品などの輸入を停止した。不足分については、豪州およびニュージーランドから手当てすることとしたが、その後、鶏肉と同様にシンガポールへの輸出可能な生産農場を限定した上で同国からの輸入停止措置を一部解除している。 |
2003年12月に韓国において発生が確認されたAIは、日本、香港、中国などで相次いで発生が確認された。その後、東南アジア各国でも発生が確認され、東南アジア地域の鶏肉・鶏卵産業に大きな影響を与えた。2004年はインドネシア、カンボジア、タイ、ベトナム、ラオスおよびマレーシアでAIの発生が確認されている。2004年時点において、東南アジアでは、シンガポール、ブルネイ、フィリピンおよびミャンマーがAI未発生国であるが、フィリピンでは2005年にAI発生が疑われたものの、その後の検査では毒性の低い低病原性であることが判明している。また、ミャンマーでは、周辺国であるタイ、中国およびラオスでAIの発生が確認されていたことから、同国においてもAIの発生が疑われていたが、ミャンマー政府による公式発表は行われていない(同国政府によるAI発生の公式確認は、2006年3月12日)。主要国におけるAIの発生状況は以下のとおり。 ○タイ:鶏肉輸出に大きな影響 ○インドネシア:予算不足で苦しい対応 ○ベトナム:AI感染者数が29名に ○マレーシア:シンガポールの鶏肉需給にも大きな影響 |
2004年は経済連携協定(EPA)やWTOなどの貿易交渉がアセアン地域において活発化した。地域における平和と安定を背景に各国における経済が活性化しており、各国政府は一層の経済発展を求めて域内および域外の諸外国と貿易自由化を進める政策を推し進めた。中でも、域内各国とわが国との交渉が開始されるとともに、域内ではタイが積極的に対外交渉を推し進めた。 ○日本との交渉が本格化 ○積極的なタイのEPAへの対応 ○カンボジア、WTO加盟へ |