3. 畜産の動向 |
(1)酪農・乳業 米国は年間約7,800万トンの生乳を生産しており、世界最大の酪農国である。しかしながら、国内に巨大な消費市場を抱えていることなどから、国際乳製品市場における米国の地位は比較的低いものとなっている。 |
B 牛乳・乳製品の需給動向
イ.消費動向 1人1年当たりの飲用乳・クリーム消費量(製品ベース、以下同じ)は、他の飲料との競合などにより、おおむね減少傾向で推移しているが、2004年も前年比0.5%減の93.6キログラムとなった。なお、飲用乳の消費は、全脂牛乳から低脂肪牛乳、脱脂牛乳へと低脂肪タイプへの移行が進んでいる。 一方、1人1年当たりのチーズ(カッテージチーズを除く)消費量は、近年おおむね増加傾向で推移してきており、2004年は前年比2.6%増の14.2キログラムとなっている。また、1人1年当たりのバター消費量は、前年比2.2%増の2.1キログラムであった。 |
C 牛乳・乳製品の価格動向
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D 乳製品の政府買い上げ
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(2)肉牛・牛肉産業
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A 牛肉の需給動向
イ.輸出入動向 2004年の輸入量(枝肉ベース)は国内牛肉生産量(枝肉ベース)が減少したものの、国内需要も減少したため、前年比22.5%増の166万9千トンとなった。国別に見ると、豪州からの輸入は前年よりも0.9%減となったものの、前年に引き続き第1位となった。さらに、カナダからの輸入は、2003年5月のBSE患畜牛発見による輸入停止措置が解除されたことに伴い前年比43.6%増の48万2千トンと大きく増加した。 一方、2004年の生体牛の輸入はカナダ産の輸入停止措置が継続した影響を受け、前年比21.8%減の137万1千頭となった。国別では、2003年に引き続きメキシコからの輸入が前年比10.6%の増加となった一方で、カナダからの輸入は輸入停止措置によりほぼゼロとなった。 2004年の牛肉輸出量(枝肉ベース)は、2003年12月にワシントン州でBSEが発生した影響を受け、前年比81.7%減の20万9千トンであった。国別では、最大の輸出相手国である日本向けが、米国産牛肉の輸入停止措置により、前年比98.8%減の5千トンと大幅に減少した。また、メキシコ向けも、前年を43.4%下回る15万1千トンになるとともに、カナダ向けも前年を74.8%下回る2万6千トンとなった。
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B 肉牛・牛肉の価格動向 ア.肥育素牛価格 肥育素牛価格(オクラホマシティー、600〜650ポンド)は、2004年平均では、100ポンド当たり111.8ドルと前年を17.4%上回った。
ウ.牛肉卸売価格 2004年の卸売価格(チョイス級、600〜750ポンド、カットアウトバリュー)は、前年比2.0%安の100ポンド当たり140.7ドルとなった。 エ.牛肉小売価格 牛肉の2004年の平均小売価格(チョイス級)は、前年比8.5%高のポンド当たり406.5セントとなった。 |
(3)養豚・豚肉産業 米国の養豚産業は、アイオワ州やイリノイ州を中心とするコーンベルト地帯において、伝統的に穀物生産や肉牛経営の副業として営まれてきた。一方、ノースカロライナ州を代表とする地域でのインテグレーションの出現が、養豚産業に対し、生産・流通などの面で大きな変化をもたらしている。 また、豚肉輸出は近年大幅な伸びを示しており、95年には40数年ぶりに純輸出国に転じた。一方で、大規模経営体による環境問題が顕在化しており、各州において環境規制を強化する動きが見られている。
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@ 豚の生産動向
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A 豚肉の需給動向
イ.輸出入動向 豚肉の輸入量(枝肉ベース)は、97年以降おおむね前年を上回ってきているが、2004年は、前年比7.2%減の49万9千トンとなった。国別に見ると、カナダが40万2千トン(総輸入量に占める割合は80.6%)、デンマークが6万3千トン(同12.6%)となっている。 また、生体豚の輸入は、ほぼ100%がカナダからのものであり、同国からの輸入頭数は、米国内での生産頭数が減少していることなどから、その代替として輸入子豚への需要が高まったことにより、前年比14.3%増の851万頭となった。 一方、輸出量(枝肉ベース)も、毎年前年を上回って推移しており、最大の輸出先である日本向けが、前年比16.1%増の41万8千トンと引き続き好調であったことや、2001年に大幅に増加した第2位の輸出先であるメキシコ向けが、前年比52.2%増の24万2千トンとなったこと、ロシア向けが、前年の4倍強の大幅な伸びとなったことから、2004年の輸出量全体は前年比27.0%増の98万9千トンとなった。 ウ.消費動向 1人1年当たりの豚肉消費量(小売重量ベース)は、近年ほぼ横ばいで推移している。2004年は小売価格が前年を上回ったことなどにより、前年比0.9%減の23.3キログラムとなった。 |
B 肥育豚・豚肉の価格動向
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(4)養鶏・鶏肉産業
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@ ブロイラーのふ化羽数の動向 2004年のブロイラーふ化羽数は、前年同様にブロイラー価格が大幅に上昇したことから、前年比2.8%増の93億3千万羽であった。 |
A 鶏肉の需給動向 ア.生産動向 2004年のブロイラー生産は、ブロイラーふ化羽数が増加したことにより、前年を4.0%上回る1,545万トンとなった。生体ベースでの1羽当たり重量は、骨なしむね肉への需要増に伴うブロイラーの大型化を背景に近年増加傾向にあり、前年比1.5%増の2.39キログラムとなっている。 イ.輸出動向 ブロイラーの輸出量は、85年以降一貫して増加傾向で推移したが、近年、その伸びは鈍化しており、2004年には前年比2.8%減の217万トンとなった。国別では、最大の輸出先であるロシア向けは、ロシアの国内生産者の保護を目的とした関税割当制度の実施などにより2002年以降輸出量が制限されていることもあり、2004年は対前年比3.0%増の68万1千トンとなった。また、ロシア以外の旧ソ連諸国向けは、前年比112.6%増の26万トンと大幅な伸びを示した。昨年第2位の香港向けは前年比55.7%減の12万トンとなった。さらに、メキシコ向けは前年比18.5%増の19万6千トンとなっている。 ウ.消費動向 1人1年当たりの鶏肉消費量(小売重量ベース)は、健康志向の高まりや加工度の高いアイテムの増加などから、順調な伸びを示してきており、2004年は前年比3.2%増の38.2キログラムとなった。 |
B ブロイラーの価格動向 ア.ブロイラー価格 2004年のブロイラー価格(生体ポンド当たりの生産者販売価格)は、前年比28.0%高の45.2セントとなった。 イ.鶏肉価格 @卸売価格 2004年のブロイラーの丸どり卸売価格(中抜き、12都市平均)は、前年比19.5%高のポンド当たり74.1セントとなった。なお、国内向けが主体となっているむね肉がポンド当たり181.1セント(前年比16.2%高)であるのに対し、輸出向けが主体であるもも肉は43.4セント(同24.8%高)となっており、日本と違いむね肉の方がもも肉より4倍以上高くなっている。 A小売価格 ブロイラーの丸どり小売価格(中抜き)は、前年比3.5%高の1ポンド当たり107.0セントとなった。 |
(5)飼料穀物
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@ 主要な政策 飼料穀物については、96年農業法により、政府の定める目標価格と市場価格(またはローンレート)の差を補てんする不足払い制度とこれに関連する減反計画が廃止され、農産物の作付け(野菜、果物を除く)が自由化された。一方、その代替措置として、市場価格とは切り離された形で、過去の作付面積などの実績に基づき、一定の漸減する直接支払いを2002年度までの7年間受給できる農家直接固定支払い制度が導入された。このほかの主なものとしては、生産者が農産物を担保に商品金融公社(CCC)からローンレート(過去の市場価格を基に算出)での融資を受けるマーケティング・ローン(価格支持融資制度)などがある。なお、飼料穀物価格が需給緩和の影響で、96年の秋をピークに下落し、生産者所得が減少したことを受け、農家直接固定支払い制度の単価に上乗せする形で、98年から毎年緊急支援措置が講じられている。こうした中、紆余曲折を経て成立した2002年新農業法では、価格支持融資や農家直接固定支払いを存続させるとともに96年農業法で廃止された不足払い制度に類似した直接支払い制度(価格変動対応型支払い:価格の変動に応じ目標価格との差額を補てん)を新設している。 なお、これらの詳細については、「畜産の情報」海外編2002年8月号「特別レポート」(ホームページでも閲覧可能:http://www.alic.go.jp/livestock/index.html)を参照されたい。 |
A 穀物の生産動向 2004/05年度(9〜8月)のトウモロコシ(サイレージ用を除く)の生産量は、前年度比17.1%増の118億1千万ブッシェル(3億トン)となった。1エーカー(約0.4ヘクタール)当たりの収穫量は、前年度と比べて12.8%増の160.4 ブッシェル(=10.1トン/ヘクタール)となった。作付面積も、前年比3.0%増の8,093万エーカー(3,275万ヘクタール)であった。 2004年8月末現在の在庫量は、前年比120.6%増の21億1千万ブッシェル(5,380万トン)と大幅に増加した。 |
B 穀物の輸出動向 2004/05年度のトウモロコシの輸出は、エジプト、シリア向けなどが増加した一方、韓国、イスラエル向けなどが減少したため、前年度比4.3%減の4,618万トンとなった。なお、日本への輸出は前年度比6.2%増の約1,551万1千トンで、全体に占める割合は33.6%となっている。 |
C 穀物の価格動向
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米国では、2003年12月23日にワシントン州内でと畜されたカナダ由来のホルスタイン種の起立不能牛(ダウナー)においてBSE陽性が確認されたことに伴い、2004年1月12日に米国農務省食品安全局(USDA/FSIS)が特定危険部位(SRM)の食用としての流通禁止などの連邦食肉検査規則の暫定改正を行った。また、これに引き続き、食品医薬品局(FDA)が食料などへのダウナー由来原料の使用禁止、反すう家畜由来動物たんぱくの反すう家畜への給与禁止に関する例外の廃止などの対策を実施した。さらに、サーベイランスの強化により2006年までに75万頭を超える牛のBSE検査を実施し、この中で2005年6月にはテキサス州で生産された牛に米国初の国内由来のBSEを確認するなど、さらに2例の感染例を発見した。
米国におけるBSEの発生を受け、大半の輸入国は米国産牛肉の輸入を停止する措置を講じた。このうち、カナダについては2004年4月、メキシコについては同年3月に米国産牛肉の輸入を再開したが、日本をはじめとするアジア各国などは米国からの牛肉および牛肉製品の輸入停止措置を継続した。この結果、2004年における米国の牛肉の輸出量は前年比81.7%減の20万9千トン(枝肉重量ベース)に減少した。2005年にはメキシコやカリブ海諸国向けの輸出増により前年比51.5%増の31万6千トンに回復したが、最大の輸出先であるアジア市場への輸出が停止していることから、2003年実績比ではその3割未満の水準にとどまっている。 わが国との関係では、2004年10月23日に20カ月齢以下の牛由来の製品のみについて貿易を再開するなどの認識の共有がなされたことを受け、両国の専門家の間で技術的協議が継続され、2005年12月12日に一定の条件で管理された米国産およびカナダ産の牛肉および牛肉製品の日本向け輸出が再開される決定がなされた。 ○北米での高病原性鳥インフルエンザの発生(米、カナダ) |
米国上院は2004年7月15日に行われた本会議で、2月に豪州との間で政府間交渉が合意に達した自由貿易協定(FTA)を、賛成80票、反対16票の圧倒的多数を得て承認した。同協定は下院でも賛成314票、反対109票で承認されており、ブッシュ大統領による署名手続きを経て、2005年1月から発効することとなった。 @セーフガードに守られる牛肉 A乳製品TRQは毎年漸減 B早期解決が望まれる動物検疫問題 |
米国農務省(USDA)は1994年11月22日、2005年会計年度(2004年10月〜2005年9月)の農産物貿易収支予測を発表した。農産物輸出額は前年比10.1%減の560億ドル、同輸入額は前年比6.3%増の560億ドルとし、1950年代後半以降、黒字で推移してきた農産物貿易収支が初めて均衡すると予測した。これは、輸入額が、堅調な国内消費の伸びとドル安傾向により増加すると見込まれること、その一方で、2004年に豊作となったトウモロコシ、小麦などの主要穀物について、輸出量は増加するものの価格の低迷により輸出額が減少すると見込まれることなどをその要因として挙げた。 農産物輸出額は減少を見込んだが、畜産物関連は100億8,000万ドルと前年同になると予測した。2003年から2004年にかけて約30%も減少した食肉輸出(ブロイラー肉を除く)であったが、メキシコ向けの牛肉輸出の再開や堅調な日本、メキシコ、カナダ向けの豚肉輸出を反映した結果、食肉(ブロイラー肉を除く)は、前年比9%減にとどまるものとされ31億ドル、130万トンと見込んだ。ブロイラーについては、中国との貿易再開決定や東ヨーロッパや中南米などへの輸出量増加で前年比4%増の220万トンを見込んでいるものの、弱含みのブロイラー価格により輸出額は、ほぼ前年同額の170億ドルにとどまるとした。 一方、農産物の輸入額は増加し、前述のとおり輸出額と同額の560億ドルになると見込んだ。特にワイン、ビール、揮発性植物油(食品・飲料原料用)、食肉(牛、豚)などについて輸入額の増加を予測した。このうち、牛肉(子牛肉含む)については、米ドル安により割安感のあるカナダからの冷蔵牛部分肉の輸入増加や、国内の経産牛と畜頭数の低迷に対応したオーストラリアなどからの冷凍の加工原料用牛肉の輸入増加が見込まれることから、前年比8.4%増の38億ドルになるとした。また、カナダからの生体牛の輸入停止措置によりメキシコからの生体牛輸入が増加していることから、生体家畜(家きんを除く)は、前年比6%増の14億ドルになると見込んだ。 結果的に、2005年度の米国の農産物輸出額は予測を上回る625億ドルに達し、農産物貿易収支は48億ドルの黒字を維持することとなった。しかし、好調な国内景気に支えられた農産物の輸入増加は今後も続く可能性が高く、米国の農産物貿易黒字は縮小していく傾向にある。 |