海外編 |
■■■ I 米国 ■■■ |
図1 農産物販売額(2005年度) |
図2 畜産物販売額(2005年度) |
3. 畜産の動向 |
米国は年間約8,000万トンの生乳を生産しており、世界最大の酪農国である。しかしながら、国内に巨大な消費市場を抱えていることなどから、国際乳製品市場における米国の地位は比較的低いものとなっている。 |
酪農の主な制度には、加工原料乳価格支持制度と連邦生乳マーケティングオーダー制度(FMMO)がある。加工原料乳価格支持制度は、米国農務省(USDA)の1機関である商品金融公社(CCC)が、加工原料乳の支持価格水準に見合う価格でチーズ、バターおよび脱脂粉乳を買い上げることにより、加工原料乳の価格を間接的に支持する制度である。 この制度は96年農業法に基づき、2000年1月1日以降廃止されることとなっていたが、生産者の強い反対などを反映して、延長が繰り返された結果、今日まで実施され続けている。 2002年新農業法では、これまで延長された支持価格を固定したまま、2007年12月まで延長することとされた。 一方、FMMOは、オーダー地域内で取引される飲用規格生乳について、用途別の最低取引価格を設定するとともに、生乳取扱業者に対して、生産者へのプール乳価での支払いを義務付けることにより、生産者に対しては安定的な市場を確保すること、また、消費者に対しては合理的な価格で十分な量の良質な飲用乳を供給することを目的としたものである。2000年1月からは紆余(うよ)曲折を経て、(1)オーダー数の再編統合(31から11へ)、(2)生乳の用途区分の再分類(3区分から4区分へ)、(3)最低取引価格の設定に用いられる価格について、これまでの基礎公式価格(BFP)に代えて、多成分価格形成システムに基づく新基礎価格の導入−などの変更が加えられた。なお、2002年新農業法においては、前述の変更後の制度を維持する形で2007年12月まで継続されることとなっている。 |
ア.酪農経営体数 |
表2 酪農経営体数、飼養頭数の推移 |
図3 酪農経営体数及び飼養規模の推移 |
イ.飼養頭数と生産量 2005年の生乳生産量は、前年比3.5%増の8,025万トンとなった。 ウ.経産牛1頭当たり乳量 |
表3 生乳・乳製品の生産量 |
図4 生乳生産量と1頭当たり乳量の推移 |
エ.地域別生産動向 |
(5) 乳製品の政府買い上げ 2005年の商品金融公社(CCC)による余剰乳製品の買い上げ数量は、前年に比べ大幅に減少し、無脂乳固形分ベースで44万1千トンの売り渡しが実施された。 |
表6 乳製品の政府買い上げ数量の推移
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ア.肉用牛繁殖経営体数 イ.飼養頭数 88年に1億頭を下回り、90年に底を打ったキャトルサイクルは、91年以降上昇局面に転じていた。96年には、肥育素牛価格の低迷などにより、繁殖経営体の収益性が急速に悪化したことに加えて、テキサス州などの南西部を襲った干ばつの影響もあり、キャトルサイクルは下降に転じた。その後も繁殖雌牛頭数が減少傾向にあることから、総飼養頭数は98年以降1億頭を下回って推移している。 飼養頭数の内訳を見ると、肉用種繁殖雌牛は前年比0.2%増の3,299万頭、このうち500ポンド以上の肉用種更新用未経産牛は、前年比3.7%増の590万頭となった。 2005年における子牛生産頭数(乳用種を含む)は、繁殖雌牛飼養頭数の増加により、前年比0.2%増の3,758万頭となった。 |
図6 種類別と畜頭数(2005年) |
ア.生産動向 種類別(連邦政府検査ベース)では、去勢牛が前年比3.7%増となった一方、未経産牛は前年比5.6%減、また、経産牛は前年比5.8%減となった。このうち、肉用経産牛は、前年を6.8%下回る252万頭となった。 一方、2005年の成牛のと畜時平均生体重(連邦政府検査ベース)は、前年比7.7キログラム増の571キログラムとなった。また、平均枝肉重量(連邦政府検査ベース)も、前年比5.9キログラム増の348.8キログラムとなり、前年を上回って推移した。 この結果、と畜頭数は前年に比べわずかに減少したものの、2005年の牛肉生産量(枝肉ベース)は、前年比0.6%増の1,124万トンと前年とほぼ同水準となった。 |
表8 牛肉需要(枝肉換算)の推移 |
イ.輸出入動向 一方、2005年の生体牛の輸入は、2003年5月におけるカナダでのBSE感染牛の確認以来継続していた同国産の輸入停止措置が2005年7月、条件付きで解除されたことなどから、全体では前年比32.5%増の181万6千頭となった。国別では、メキシコからの輸入が前年比8.3%減となったものの126万頭と前年に引き続き最大で、また、前年はほぼゼロであったカナダからの輸入は56万頭となった。 2003年12月にワシントン州でBSEが発生した影響を受け、2004年に大幅に減少した牛肉輸出量(枝肉ベース)は、2005年では前年比51.2%増の31万6千トンとなった。国別では、メキシコ向けが前年比39.2%増の21万トンになるとともに、カナダ向けも前年を87.6%上回る4万8千トンとなった。また、2003年まで最大の輸出相手国であった日本向けは、前年比50.7%増の8千トンとなった。 |
図7 牛肉の輸出量と相手国 |
ウ.消費動向 |
米国の養豚産業は、アイオワ州やイリノイ州を中心とするコーンベルト地帯において、伝統的に穀物生産や肉牛経営の副業として営まれてきた。一方、ノースカロライナ州やオクラホマ州でのインテグレーションの出現が、養豚産業に対し、生産・流通などの面で大きな変化をもたらしている。 また、豚肉輸出は近年大幅な伸びを示しており、95年には40数年ぶりに純輸出国に転じた。一方で、大規模経営体による環境問題が顕在化しており、各州において環境規制を強化する動きがみられている。 |
図9 カナダからの生体豚輸入頭数の推移 |
図10 豚肉の輸出相手国(2005年) |
ア.肥育豚価格 イ.豚肉価格 (イ)豚肉小売価格 |
表12 飼育豚、豚肉の価格の推移 |
米国の養鶏産業は、飼料穀物の大生産国という利点を生かし、生産から流通までの一貫したインテグレーションの進展により、極めて効率的な生産が行われている。また、不需要部位のもも肉を中心として、鶏肉生産量の約2割を輸出すると同時に、米国内では、消費者の健康志向からむね肉を中心として消費を大きく伸ばしている。 |
2005年のブロイラーふ化羽数は、前年同様にブロイラー価格が高水準で推移したことから、前年比1.6%増の94億9千万羽となった。 |
2005/06年度のトウモロコシの輸出は、韓国、コロンビア向けが大幅に増加した一方、カナダ、シリア向けなどが減少し、全体では前年度比18.1%増の5,500万トンとなった。なお、日本向けの輸出は、前年度比4.2%増の1,615万8千トンで、全体の29.6%を占めている。 |
(4) 穀物の価格動向 |
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2005/06年度のトウモロコシの生産者販売価格は、燃料用エタノール原料向けなどの国内需要および輸出量がともに伸びたものの、前年度からの繰越在庫が潤沢であったことなどから、前年度比2.9%安の1ブッシェル当たり2.00ドルとなった。 |
表16 トウモロコシ価格の推移 |
米国産牛で初のBSEの確認 米国農務省(USDA)は2005年6月24日、2004年11月のスクリーニング検査で陽性となり、確定診断の結果陰性とされた牛について再検査を実施した結果、BSE陽性との最終結果を得たことを公表した。 当該牛は、その後の同省動植物検疫局(USDA/APHIS)と保健社会福祉省食品医薬品局(FDA)による疫学的調査により、テキサス州で生産されたものと特定され、米国初の土着のBSE症例となった。また、FDAなどによる飼料に関する調査により、当該牛は、米国がBSE対策のため97年に導入した飼料規制前に感染した可能性が高いと結論付けられた。 なお、この事例により、米国内でのBSEの発生は、2003年12月23日にワシントン州内で確認されたカナダ由来の患畜に次ぐ2例目となり、その後、2006年3月には、アラバマ州で生産された牛が3例目のBSEとして確認された。 カナダ産牛肉・生体牛をめぐる動向 USDA/APHISは2004年12月29日、カナダをBSEの最小リスク地域と認定し、同国から30カ月齢未満でと畜されることが確実な生体牛や、月齢を問わず牛肉の輸入を認めることを柱とする検疫措置の最終規則を公表した。カナダから米国への牛肉輸出は、2003年5月のカナダでのBSE発生を受けて一時的に停止されていた。 同規則は当初、2005年3月7日より発効するものとされていたが、ジョハンズ米農務長官は同年2月9日、30カ月齢以上の牛由来の牛肉輸入については、カナダにおける飼料規制に関する調査などが終了していないとして、3月7日からの実施を延期するとの方針を公表した。一方、30カ月齢未満でと畜されることが確実な生体牛の条件付き輸入については、米国牧場主・肉用牛生産者行動法律基金協会(R-Calf)がモンタナ連邦地裁に同規則の差し止めの申請を行い、その後、USDAがカリフォルニア連邦控訴裁に同地裁の仮処分決定を不服として控訴するなど複雑な司法上の争いが繰り広げられた後、同年7月18日より再開された。 なお、カナダから米国への牛肉および生体牛輸出については、USDA/APHISが2007年1月4日、2005年1月の現行規則を改正して、99年3月以降に生まれた生体牛(反すう家畜への飼料給与規制の開始から18カ月後に相当)の輸入を認めるとともに、30カ月齢以上の牛肉についても規則の適用の先延ばしを解除して輸入を可能とする改正案を公表するなど議論が継続している。 北米産牛肉の対日輸出再開 わが国との関係では、カナダ産牛肉については2003年5月20日、米国産牛肉については同年12月23日にそれぞれにおいてBSEの発生が確認されたことから、日本への輸出が停止していたが、2005年12月12日の両国政府との牛肉などの輸入条件合意を踏まえ、一定の条件で管理された米・カナダ両国産の牛肉および牛肉製品の日本向け輸出が再開された。 しかし、輸入再開直後の2006年1月、米国から輸入された子牛肉に輸入禁止部位である脊髄の混入が発見されたことから、米国産牛肉のわが国への輸入は再び停止され、輸出施設の査察を経て輸入が再々開されるまでにはさらに半年以上を要することとなった。 一方、わが国におけるBSEの発生などから米国への輸出が停止していた日本産牛肉については、USDA/APHISが2005年12月14日、一定の条件の下で日本産牛部分肉の輸入を認める最終規則公表したことにより、同月12日付けで米国への輸出が再開されることとなった。 |
米国農務省(USDA)は、現行農業法の失効を2007年9月に控え、農業者や牧場主から今後の農業政策に関する意見を聞くため、2005年の約6カ月間にわたり全米52カ所において次期農業法に関するフォーラムを開催した。 ジョハンズ米農務長官は2005年10月6日、ワシントンDC内で開催された農産品クラブ(Commodity Club)の会合の場において、USDAがその時点までに全米26カ所で開催した同フォーラムの結果を総括した。同長官は、この講演の中で、同フォーラムを開催する背景について、農業法自体は、立法権を有する米議会が定めるものであるとしながらも、ブッシュ米大統領と同長官は新たな農業政策により影響を受ける者はこれを展開させていく過程において意見を述べるべきであるとの考えを示した。同長官の講演の概要は、以下のとおりである。 農村開発・環境保全・市場拡大については共通の認識が醸成 農村開発プログラムに対しては、一貫して支持する意見を聞くことが出来たとし、ブッシュ大統領による農村開発がこれらの地域の人々の生活に変化をもたらしたことを強調した。 また、環境保全プログラムについても多くの支持があったとし、同プログラムは、農業者に財政面での援助を行うと同時に、自然環境の保護によりわれわれや次世代に対し、社会全体としての利益を提供しているとしその継続の重要性を示した。 さらに、米国産農産物の競争力や海外市場の拡大の重要性について多くの意見が出され、農業者は、公平な貿易を望んでおり、また、農産物販売額の4分の1が貿易によりもたらされていることを理解していた。 農家支持プログラムについては大規模農家への集中を懸念 農家支持プログラムについては、より手厚い保護を望む意見が聞かれるものと予想していたが、変化を求める意見もあった。全体として、農家への支払いが上昇する農地価格に費やされ、かつ、農業者の3分の1に集中することにより、大規模農業者が大きな利益をもたらしていることに対する、特に、中小規模農家による懸念が示された。また、中西部では支持の上限設定を求める声があったのに対し、西部ではこれに反対する意見が聞かれるなど、地域的な格差も見られた。作物間における支持の差に対する不満も聞かれたが、実際、現行農業法下では、穀物に価格・所得支持プログラムが集中している。農家支持プログラムが生産を助長し、より多くの作物を生産し支持を得るために農地を拡大する要因となっていることを指摘する意見が多かった。農業政策が需要を勘案せずに農地や生産の拡大を助長するのであれば、農産物価格の低落は自明である。 さらに、若い世代からは、農地価格や金利の高騰から、農場継承や新規就農の困難性を訴える意見が出された。 現行農業法を時代の変化に適応させる必要 2002年農業法は正しい政策として支持されてきたものの、時代の変化から、われわれは、WTOを米国産品のための市場開放に用いなければならない。WTOが次期農業法を起草するわけではないが、市場アクセス分野で利益を得るためには国内支持分野で指導力を発揮する必要があり、次期農業法においてWTO農業交渉のすう勢を先取りすることが重要である。 その後、USDAは2006年3月29日、同フォーラムにおいて農業関係者から出された意見や、2005年末までにウェブサイトなどを通じて提出された次期農業法に関する4,000件以上に及ぶ意見を41の課題ごとに集約した意見概要を公表した。また、2006年5〜9月にかけて五回にわたり、これら意見概要の中から特定の課題(リスク管理、環境保全プログラム、農村開発プログラム、再生可能エネルギー、国際貿易など)に対する同省のエコノミストによる分析資料を公表した。 |
家畜個体識別制度実施に向けたスケジュール 米国農務省(USDA)は2005年5月5日、家畜個体識別制度の今後の方針案を公表した。米国における家畜個体識別制度の実施については、2002年から全国畜産協会(NIAA)などで議論が進められてきたが、2003年末における米国内でのBSEの発生後は、と畜後48時間以内に家畜の過去の移動を追跡し得るシステムの構築を目指し検討が急がれていた。ジョハンズ米農務長官は今回の公表に当たり、「本日公表した文書は、この重要な問題について広範な議論を進めるための提案をするものである。このシステムの今後の取り扱いおよび想像し得るいくつかの重要な課題に関する回答を提案しており、最終的な提案に発展させることが出来るよう、農家からの意見が寄せられることを期待している」と述べ、個体識別制度の実施に向け意欲を示した。 USDAは、今後の家畜個体識別制度の実施に向けた日程について、以下のように提案した。 2005年4月:今後の全国個体識別制度(NAIS)の戦略案並びにその基準案を公表。同年夏には、公聴会や意見公募により寄せれた意見を考慮し、USDAは規則案の草案作成を開始 課題山積の現状 USDAは、NAISの実施について、任意とするのか義務とするのかについて関係者の意見が異なるが、NIAAの構成員の8割は義務化を支持しているとして、義務化の方針案を示している。このほか、USDAでは以下の4つを主要な課題と位置付けている。
2005会計年度では総額1,436万ドルの支援 このような中、USDAは同年6月21日、州および連邦政府公認の先住民政府に対するNAISにおける農場登録の継続実施に係る約1,436万ドルの財政支援の実施を公表した。 この財政支援は、州や米国先住民政府が2004年来着手している各地域内の全国農場登録システムおよびNAISの実施・保守管理を支援するために提供されるものである。 USDAによると、今後2008年初期までにすべての家畜は個体識別番号やロットID番号により個体識別され、2009年1月までにはNAISへ家畜の移動履歴が明確に記録されることになるとされた。 その後、USDAは、NAISを任意の制度として推進する方針を固め、州政府や関係団体とも連携して畜産農家の施設登録を進めている。 |