海外編 |
■■■ III オセアニア【豪州】 ■■■ |
1. 一般経済の動向 |
豪州経済は、90年代に入り個人消費や住宅建設の増加などの内需の拡大を背景に、実質国内総生産(GDP)成長率は比較的高い水準で推移したが、2000年7月の物品サービス税(GST)導入の影響により、シドニーオリンピック終了後の2000年末、一時的にマイナス成長となった。だが、再び個人消費や住宅建設などの内需回復、また、鉄鋼石、石炭などの第一次産品を中心とした輸出の増加も手伝って経済は回復に向かい、その後は順調に推移している。2006/07年度の実質GDP成長率は、前年度から0.3ポイント上昇の3.3%と安定した成長を持続している。また、GDPも9,998億3千万豪ドルと前年度を上回った。 |
表1 主要経済指標 |
表2 農場数などの推移 |
2. 農・畜産業の概況 |
豪州の農業(林業、水産業を除く)は、GDPで全体の約2.2%(2006/07年度)、就業人口で全体の約3.5%(林業、水産業を含む)を占めるにしかすぎず、産業全体に占める割合は必ずしも高くない。しかし、2006/07年度の全商業輸出額に占める農産物の割合は16.3%と鉱物資源(62.8%)に次いで高く、輸出産業の中で重要な位置を占めている。 |
近年、上昇を続けていた農業粗生産額は、2002/03年度の干ばつの影響により大きな落ち込みをみせたが、その後はおおむね増加基調にある。2006/07年度は畜産物の生産が前年度をわずかに上回った反面、穀物生産が前年度を大きく下回ったことで、前年度比10.6%減の約343億3千万豪ドルとなった。 |
図1 農業粗生産額(2006/07年度)
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図2 農産物総輸出額(2006/07年度)
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3. 畜産の動向 |
豪州の酪農は、放牧を主体とする経営が大部分であるため、酪農生産が盛んなビクトリア州を中心に、気象条件に恵まれ、牧草生育に有利な地域に集中している。 |
豪州では、かつて、加工原料乳に対する価格補てん政策(連邦制度)と飲用向け生乳に対する最低価格保証政策(各州の制度)を実施していたが、2000年7月1日に両制度がともに撤廃となり、生乳の販売流通は完全に自由化となった。このほか、2003年7月には酪農団体の再編が行われ、豪州酪農庁(ADC)と他の研究機関が統合して新たにデイリー・オーストラリア(DA)が発足し、販売促進や研究開発、マーケット情報提供などを一括して行っている。 乳用経産牛の飼養頭数は、1957年の345万1千頭をピークに減少を続けてきたが、92年以降、好調な酪農市況を反映して増加に転じ、その後はおおむね増加基調で推移していた。しかし、2002/03年度の干ばつで飼養環境の悪化が進んだことから、一転して減少に転じている。さらに、2006/07年度の100年に1度といわれる干ばつの影響で、2007年6月末の乳用経産牛飼養頭数は、前年同期比3.2%減の181万頭となった。また、同時点の酪農家戸数も、同8.9%減の8,055戸となった。一方、酪農家の大規模化が進んでいることで、1戸当たりの経産牛飼養頭数は225頭と規模拡大が進んでいる。 |
表3 乳牛飼養頭数等の推移
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図3 酪農家戸数と乳牛飼養規模の推移
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生乳生産量は、90年代に入りガット・ウルグアイラウンド合意に伴う乳製品輸出の拡大への期待を背景に、増加傾向で推移してきた。 2006/07年度の生乳生産量は、大干ばつの影響から、前年度比5.0%減の958万2千キロリットルと減少した。 |
図4 生乳生産量と乳牛1頭当たり乳量の推移
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図5 州別生乳生産量(2005/06年度)
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生乳生産量に占める加工向けのシェアは、乳製品輸出の拡大に伴って徐々に上昇する傾向にあった。しかし、2006/07年度は、生乳生産量が前年度に比べて減少したことや、国内の飲用乳需要が回復傾向にあることなどから、前年度比2.0ポイント減の77.5%となった。生乳生産量を州別に見ると、ビクトリア州が全体の66%を占めて他州を大きく引き離しており、豪州最大の酪農地域であることを示している。 |
2006/07年度の主要乳製品の輸出量は、国際的な乳製品需要は高かったものの、生乳生産量が減少したことなどからバター、チーズ以外の品目で前年度の輸出量を下回った。中でも全粉乳は前年度比13.0%減と大きく減少した。 |
表5 主要乳製品輸出量の推移 |
図6 地域別乳製品輸出額(2005/06年度) |
飲用乳の1人当たり消費量は、他の先進国と同様に飲用乳以外のさまざまな飲料が市場に投下されたことで、90年代中ごろから減少傾向で推移してきた。しかし、カフェ文化の浸透などに伴い飲用乳の間接消費が増えた結果、2003/04年度からわずかながら増加に転じ、2006/07年度は前年度比2.9%増の103.6リットルとなった。また、最近の健康ブームを反映してヨーグルトの消費の伸びが目立っている。一方、増加基調で推移してきたチーズの1人当たり消費量は、ここ数年、伸び悩んでいる。 |
表6 1人当たり乳製品消費量の推移 |
(4)乳価の動向 |
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生産者乳価は、1999/2000年度まで飲用乳価と加工原料乳価の差が2倍以上に拡大していたが、2000年6月末をもって飲用向け生乳に対する最低価格保証制度が廃止となり、それ以降、飲用向けの乳価は大きく低下した。2006/07年度の平均乳価は、国際的な乳製品市況の上向きを反映して前年度並みの1リットル当たり33.2豪セントと、引き続き上昇傾向にある。 |
表7 生産者乳価の推移 |
豪州の肉牛生産は、酪農生産と同様、牧草(放牧)に依存した生産構造となっており、また、牛肉生産量の6割以上を輸出に向ける輸出依存型産業となっている。 肉牛や牛肉の需給を管理する制度・政策は特になく、生産者は国内外の市場動向を勘案しつつ経営を行っている。また、豪州家畜検疫検査局(AQIS)などの政府機関が防疫政策を、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)などの業界団体が販売促進、研究開発、市場情報の提供などを行っているが、これらの事業財源の多くは、生体の取引(販売)時に課される生産者課徴金(強制徴収)によるものである。 |
豪州における牛飼養頭数(乳牛を含む)の推移を中・長期的に見ると、1960年代後半から70年代半ばにかけて、世界的な牛肉需要の増大を背景に急速に増加し、76年には過去最高の3,343万頭を記録した。その後、第二次オイルショック(79年)などによる世界的な牛肉需要の減退や肉牛経営の悪化、大干ばつの発生(82年)などによってと畜頭数が急増し、84年には2,216万頭とピーク時である76年の飼養頭数に比べ約3分の2まで減少したが、それ以降は緩やかな増加に転じた。 |
図7 牛飼養頭数の長期的推移 |
表8 牛飼養頭数の推移 |
図8 州別肉牛飼養頭数(2005年6月末現在) |
表9 牛肉需給の推移 |
表10 牛肉の国別輸出量の推移(船積み重量ベース) |
生体牛の輸出については、90年代中頃からインドネシア、フィリピンなど東南アジア向けの肥育素牛を中心に急増した。生体牛の輸出は、97年のアジア経済危機の影響により一時的に減少したものの、その後の順調な経済復興や中東諸国など新規市場の開拓もあって、再び増加基調に転じ、2002/03年度には、100万頭を超え史上最高となった。その後、連続して減少していたが、2006/07年度は、最大の相手国であるインドネシア向けが経済伸長などから大幅に増加し、前年度比16.5%増の68万頭となった。 |
表11 生体牛の国別輸出頭数の推移 |
表12 1人当り食肉消費量の推移 |
2006/07年度の豪州の農畜産業は100年に1度といわれる大規模な干ばつに見舞われた。この干ばつは、東部州を中心に広範囲にわたり、記録的な雨不足に加え、高温、強風、一部地域での霜害といった状況をもたらした。このため、穀物、酪農および肉牛といった豪州の主要農畜産物の生産に大きな影響を及ぼした。 |