海外編 |
■■■ V 南米【ブラジル】 ■■■ |
1. 一般経済の概況 |
ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2006年の国内総生産成長率(GDP)は前年の2.9%を上回る3.7%となり、経済活動の回復を示す兆しを見せた。部門別では農畜産業部門
4.1%、工業部門 2.8%、サービス部門 3.7%となっており、昨年天候不順による穀類生産の減少で、前年はわずか 1%の成長率にとどまった農畜産業部門が回復し、全体を支える形となった。この間消費者物価指数は過去5年間最低の2.8%にとどまり、過去3年間続いた下降傾向が確認され、インフレ懸念は遠ざかった。 |
表1 主要経済指標
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労働市場では、6大都市の失業率が前年同率の10.0%であったが、国内景気の指標となる家計消費はGDPの成長率を上回る4.3%であった。この安定した情勢の前に中央銀行は、基本金利を前年末の年利 18%から13.25%へと5%近く引下げ、経済活動の活性化を図る政策をとった。 |
2. 農・畜産業の概況 |
2006年に10年ぶりに行われた農牧センサスによると、全国の農業経営戸数は前回に比べ7.1%増の520万4千戸、農業経営所有土地面積は同3.5%増の3億5,480万ヘクタールとなった。このうち7,670万ヘクタールが農耕用地で同83.5%増となったのに対し、牧草地面積は1億7,230万ヘクタールと同3.0%減となった。 | |
2006年の農産物輸出市場は212カ国に及び、中でも米国、オランダ、中国、ロシアが主要市場であった。また、品目別では大豆および副産物、砂糖およびアルコール、オレンジジュース、木材製品および食肉が主要輸出品となっている。 |
表2 農場面積と農場数の推移
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2006年の牛飼養頭数(水牛、乳牛を含む)は、2億589万頭となっている。牛の飼養頭数を州別に見ると、中西部のマットグロッソ州(シェア12.7%)、マットグロッソドスル州(同11.5%)、南東部のミナスジェライス州(同10.8%)、中西部のゴイアス州(同10.0%)の順となり、これら4州で全国の牛飼養頭数の45.0%を占める。また、国際獣疫事務局(OIE)が認めた口蹄疫ワクチン接種清浄地域(15州および連邦区)の飼養頭数は1億7,179万頭で全体の82.9%となる。 |
図1 牛飼養頭数(2006年)
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図2 州別牛飼養頭数 |
ア.生産動向 イ.輸出入動向 ウ.消費動向 |
表3 牛肉需給の推移
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図3 生鮮肉(冷蔵、冷凍)の輸出相手国(2006年)
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(3)牛肉の価格動向 |
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ブラジルでは生体取引が主体であるが、生産者販売価格は、枝肉15キログラム単位で示されることが多い。2006年の生産者販売価格(サンパウロ州)は、前年比3.7%安の枝肉15キログラム当たり52.99レアルとなった。また、牛肉の卸売価格は、同1.5%高の枝肉1キログラム当たり4.07レアルとなった。 |
図4 肉牛価格の推移(サンパウロ州)
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2006年のブラジルの鶏肉生産量は、米国と中国に次ぐ世界第3位、輸出量は2005年以降、世界第1位の地位を保っている。2006年は、特に欧州における鳥インフルエンザの発生による鶏肉需要の減退を反映し、輸出の減少、国内の生産調整などを余儀なくされたが、鳥インフルエンザのない数少ない供給国としての立場を維持している。 |
2006年のひなふ化数は上半期中に行われた生産調整の影響で、前年比2.5%減の45億7,100万羽であった。 |
ア.生産動向 イ.ブロイラーの輸出動向 ウ.消費動向 |
表4 鶏肉需給の推移
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図5 鶏肉の輸出相手(2006年)
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(3)ブロイラーの価格動向 |
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ア.ブロイラー生産者販売価格 イ.卸売価格 |
図6 ブロイラ−価格の推移(サンパウロ州)
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4. 飼料穀物 |
世界のトウモロコシ生産の約5〜7%を占めるブラジルでは、養鶏、養豚などの畜産業を中心とした大消費国内市場が形成されていることから、輸出余力は少なく、国内供給が過剰となる場合や国際価格が高騰する場合に輸出が行われる。このため、年による変動が大きい。また、飼料基盤のぜいじゃくな北東部の養鶏生産者は、国産よりも割安のパラグアイ産やアルゼンチン産トウモロコシに依存している。 |
2006/07年度に対する政府の農業融資計画としては、農務省が管轄する一般農業部門に対し、前年比13%増の500億レアル、農地開発省管下の家族農業強化プログラム(PRONAF)に対し、同11%増の100億レアル計600億レアルを投下することが発表された。一般農業部門に対する融資資金のうち、生産と販売のための融資は同25%増の416億レアルとし、農業投資プログラムに86億レアルが向けられた。また、生産融資資金の内、政府の管理下におかれる301億レアルについては、前年に引き続き年利8,75%の利息が適用され、1農家当たり融資額が増加した。融資枠増加の一例として、大豆の場合には従来地域により15-20万レアルであったものが、全国一律に30万レアルに改定された。 |
2005/06年度トウモロコシ生産量は前年比21.0%増の4,250万トンとなり、前年度の降雨不足の影響で大幅に減少した生産量が回復した。このうち、400万トンが輸出され3,700万トンが国内市場に供給された。一方、大豆の生産量は同5.2%増の5,500万トンに達し、大豆(豆)として2,495万トン、大豆かすとして1,233万トン、大豆油として242万トンが輸出された。 |
表5 トウモロコシの需給表 |
表6 大豆の需給表 |
トウモロコシは、鶏肉の主要生産地である南部および南東部で多く生産されている。また中西部は今後大幅な増産を期待することができる地域である。 しかしながら、輸出港から遠く離れた中西部での増産は、輸送インフラ整備という大きな課題を抱えている。 トウモロコシの多くは、南部のパラナグア港(パラナ州)、サンフランシスコドスル港(サンタカタリナ州)、南東部のサントス港(サンパウロ州)から輸出されている。中西部からのこれらの港への輸送経路は@〜Bのようになる。 @ 国道BR364号線でサンパウロ州に入り南東部へ通じるルート 上述したように中西部からの輸送は道路輸送が主体であるが、輸送コストを軽減するために、アマゾン地帯の水路を利用した輸送も行われている。 @ 国道BR364号線でロンドニア州ポルトベリョ港、同港よりマデイラ川を約1,000キロメートル下りアマゾン川本流にあるイタコアティアラ港、同港から海外へ輸出するルート このように輸送の効率化のためには、アマゾン地帯の水路を利用した複合輸送が不可欠であり、例えば、クイアバ市からサンタレン市までの約1,800キロメートルの舗装道路を完成させる計画などが策定されている。しかしながら、このようなアマゾン地帯を縦断する舗装道路の完成は、環境に悪影響をもたらすのではないかという懸念もしばしば聞かれる。 |