海外編 |
米国経済は、2003年第2四半期以降、堅調な個人消費、民間設備投資の持続などにより、年率3%前後の成長を記録してきた。しかし、2007年は、原油をはじめとするエネルギー価格の上昇などによる一部個人消費の陰りや、インフレ対応として実施された金利の引上げなどによる住宅市場の冷え込みにより、経済成長の減速傾向が加速化した。また、住宅価格の下落を引き金にして、サブプライムローン(低所得層向け住宅ローン)の貸倒率が高まり、2007年8月には関連の金融商品が大量に格下げになるなど、金融資本市場の変動などにより、経済成長の先行きについて不透明感が高まった。 このような経済状況を反映して、2007年の実質国内総生産(GDP)成長率は、前年から0.8ポイント下落し、3年連続して前年を下回る伸びとなった。一方、原油価格の上昇などを反映して、同年の消費者物価指数は前年比2.8%高、生産者物価指数も同3.9%高となった。また、2006年の貿易収支は、貿易赤字(国際収支ベース)が前年比1.9%減、金額にして163億ドル減の8,310億ドルとなった。 |
表1 主要経済指標
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米国経済における農業の位置付けは、他産業の発展に伴い時代の経過とともに低くなる傾向にあるものの、2007年においては、GDPに対する農業生産(農産物販売額:現金収入の暫定値)の占める割合は2.1%と前年を0.3ポイント上回った。世界的に見ると、農業生産額は中国に次いで第2位、農産物貿易額は輸出入ともに首位を占めるなど、世界の農産物需給における米国農業の影響力は引き続き高い水準にあると言える。 2007年の農業経営体数(農産物の年間販売額1千ドル以上)は220万5千戸であった。また、1経営体当たりの農用地面積は418エーカー(167ヘクタール)で、農用地面積全体としては9億2,146万エーカー(3億7,673万ヘクタール)であった。なお、年間10万ドル以上の農産物販売実績のある経営体は全体の16.7%で、全農用地面積の63.5%を占めている。 2007年の農産物販売額(現金収入の暫定値)は、2,885億ドルと前年を19.8%上回った。このうち、作物部門は1,499億ドルで前年比22.6%増となった。畜産部門も前年を16.9%上回る1,386億ドルとなり、農産物全体に占めるシェアは、前年を1.2ポイント下回る48.0%となった。 |
図1 農産物販売額(2007年)
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畜産部門における品目別の販売額を見ると、肉用牛が498億ドル(農産物全体に占める割合は17.2%)と第1位で、次いで酪農が355億ドル(同12.3%)となった。また、作物部門では、生産量の5割強が家畜飼料に仕向けられるトウモロコシの販売額が340億ドル(同11.8%)と最大となっており、畜産が米国農業に与える影響は極めて大きい。 |
図2 畜産物販売額(2007年)
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ア.酪農経営体数 イ 飼養頭数と生産量 また、2007年の生乳生産量は、前年比2.1%増の8,421万トンとなった。 ウ 経産牛1頭当たり乳量 表3 生乳・乳製品の生産量
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表2 酪農経営体数、飼養頭数の推移
図3 酪農経営体数および飼養規模の推移
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放牧される乾乳中の乳牛(ジャージー種)
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図4 生乳生産量と1頭当たり乳量の推移
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エ 地域別生産動向 カリフォルニア州を代表とする西部の新興生産地域は、冬期でも比較的温暖で乾燥しているために畜舎などへの投資コストが低く、さらに安価な労働力も確保しやすいことなどから、大規模化が図りやすいという利点がある。カリフォルニア州では、500頭以上の経営体による生産量の州全体に占める割合が88.5%であるのに対し、ウィスコンシン州では22.0%となっている。 |
育成牛(ジャージー種)
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ア 生産動向 また、脱脂粉乳の生産量は、前年比4.4%増の58万9千トンとなった。一方、バターの生産量については、前年比5.8%増の69万5千トンとなった。 |
図5 チーズ生産量の推移
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イ 消費動向 一方、1人1年当たりのチーズ(カッテージチーズを除く)消費量は、近年、増加傾向で推移しており、2007年では前年比0.7%増の14.8キログラムとなった。また、1人1年当たりのバター消費量は、前年比0.3%増の2.1キログラムとなった。 |
ア 生乳価格 |
表4 生乳の生産者販売価格
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イ 乳製品の卸売価格 |
表5 乳製品の卸売価格の推移
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2006年は商品金融公社(CCC)による余剰乳製品の買い上げが脱脂粉乳で実施されたが、2007年は堅調な輸出需要を反映して米国内の乳製品価格が堅調に推移したことから、買い上げは実施されなかった。 |
表6 乳製品の政府買い上げ数量の推移
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ア 肉用牛繁殖経営体数 |
表7 肉用牛繁殖経営体数、飼養頭数の推移
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イ 飼養頭数 2008年1月1日現在の飼養頭数の内訳を見ると、肉用繁殖雌牛は前年比1.3%減の3244万頭、また、500ポンド(約227キログラム)以上の肉用繁殖後継牛は、前年比3.9%減の565万頭となった。 さらに、2007年における子牛生産頭数(乳用種を含む)は、肉用繁殖雌牛の飼養頭数が伸び悩んだことにより、前年比2.0%減の3,676万頭となった。 |
テキサス州で放牧される育成牛
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ア 生産動向 種類別(連邦政府検査ベース)では、去勢牛が前年比1.1%減となったが、未経産牛は前年比3.9%増、また、経産牛は前年比6.3%増とそれぞれ前年を上回った。 一方、2007年の成牛と畜時平均生体重(連邦政府検査ベース)は、前年比0.9キログラム減の578.3キログラムとなった。また、平均枝肉重量(連邦政府検査ベース)も、前年比2.3キログラム減の352.0キログラムと前年を下回った。 この結果、2007年の牛肉生産量(枝肉ベース)は、前年比1.0%増の1,203万トンとなった。 |
図6 種類別と畜頭数(2007年)
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表8 牛肉需給(枝肉換算)の推移
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イ 輸出入動向 一方、同年の生体牛の輸入は、メキシコからの輸入が前年比13.3%減の109万頭となったものの、カナダからの輸入は同36.1%増の140万4千頭となり、全体では同9.0%増の249万5千頭となった。 2003年12月、米国内で初めてBSEが発生した影響を受け、2004年に大幅に減少した牛肉輸出量は、2007年には前年比25.3%増の65万トンと前年を大幅に上回った。国別では、メキシコ向けは同11.2%減の26万6千トン、カナダ向けは同42.1%増の15万4千トンとなった。また、2003年まで最大の輸出相手国であった日本向けは、前年比208.7%増の7万2千トンとなった。 |
図7 牛肉の輸出量と相手国
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ウ 消費動向 ア 肥育素牛価格 イ 肥育牛価格 チョイス級肥育牛価格(ネブラスカ、1,100〜1,300ポンド、去勢牛)は、2007年平均で100ポンド当たり91.8ドルとなり、前年に比べて7.5%上昇した。 |
ウ 牛肉卸売価格 エ 牛肉小売価格 |
表9 肉牛、牛肉の価格の推移
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ア 養豚経営体数 養豚経営体数は、小規模層を中心として減少傾向で推移している。2007年は7万5千戸となった。1経営体当たりの飼養規模別では、100頭未満の層が全経営体数の69.5%を占めているものの、飼養頭数では全体の0.9%を占めるにすぎない。一方、5千頭以上の層は、経営体数全体の3.8%にすぎないが、全飼養頭数の60.1%を占めている。 |
表10 養豚経営体数、飼養頭数の推移
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イ 飼養頭数 飼養頭数の内訳を見ると、繁殖用豚は前年比2.4%増の623万頭に、また、肥育豚は前年比9.8%増の6,194万頭となった。 2007年(2006年12月〜2007年11月)の子豚生産頭数は、一腹当たり産子数が前年比1.5%増の9.22頭となったことに加え、繁殖母豚が前年比5.3%増となったことなどから、11,287万頭と前年より6.9%増加した。 |
図8 養豚経営体数及び飼養規模の推移
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表11 豚肉需給(枝肉換算)の推移
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ア 生産動向 なお、2007年のと畜時平均生体重(連邦政府検査ベース)は、前年同の122.0キログラム、また、平均枝肉重量(同)は、前年同の91.6キログラムとなった。 |
イ 輸出入動向 また、生体豚の輸入は、ほぼ100%がカナダからのものである。同国からの輸入頭数は、近年、増加傾向で推移しており、2007年では前年比14.2%増の1,000万頭と引き続き高水準となっている。 一方、輸出量(枝肉ベース)も91年以降、毎年前年を上回って推移してきた。2007年では、最大の輸出先である日本向けが前年比5.6%増の48万7千トン、第2位の輸出先であるメキシコ向けが、同25.9%減の20万5千トン、また、カナダ向けが、同13.1%増の16万7千トンとなったことなどから、輸出量全体では同4.9%増の142万5千トンとなった。 |
図9 カナダからの生体豚輸入頭数の推移
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アイオワの養豚施設
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図10 豚肉の輸出相手国(2007年)
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ウ 消費動向 |
ア 肥育豚価格 イ 豚肉価格 (イ) 豚肉小売価格 |
表12 肥育豚、豚肉の価格の推移
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ア 生産動向 |
表13 ブロイラー需給(可食処理ベース)の推移
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イ 輸出動向 国別では、輸出上位3か国であるロシア、中国、メキシコ向けの輸出量を、それぞれ前年比21.3%、同24.1%、同16.9%と増加させた。 ウ 消費動向 |
図11 鶏肉の輸出相手国(2007年)
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表14 ブロイラー価格の推移
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ア ブロイラー価格 イ 鶏肉価格 (イ) 小売価格 |
表15 トウモロコシ需給の推移
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アイオワ州のトウモロコシ畑
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2007/08年度のトウモロコシの輸出は、日本、中国向けなどが減少した一方、メキシコ、韓国向けが増加したため、全体では前年度比14.6%増の6,187万トンとなった。なお、日本向けの輸出は、前年度比3.4%減の1,458万9千トンと、輸出量全体の23.6%を占めている。 |
2007/08年度のトウモロコシの生産者販売価格は、飼料および輸出向け需要が前年を下回ったものの燃料用エタノール原料向け需要が増大したことなどから、前年度比31.6%高の1ブッシェル当たり4.20ドルとなった。 |
表16 トウモロコシ価格の推移
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