ALIC/海外トピックス
平成17年(2005年)分
◎ WTO農業交渉におけるEUと米国の主張と立場 ―’ABARE OUTLOOK CONFERENCE 2006’における発言から― 【国際情報審査役 平成18年3月27日発】 ◎ 全国農業大会、食料増産の方針を強調(北朝鮮) 【国際情報審査役 平成18年1月31日発】 ◎ 韓国で2005年国産農産物調査安全性調査結果−安全性非適合率1.1%に減少−(韓国) 【国際情報審査役 平成18年1月17日発】
WTO農業交渉におけるEUと米国の主張と立場 ―’ABARE OUTLOOK CONFERENCE 2006’における発言から― 【国際情報審査役 平成18年3月27日発】 WTO農業交渉においては、昨年12月の香港閣僚会議後、4月末とされたモダリティー確立期限を 前に、 関係閣僚会合、農業交渉会合等が断続的に開かれ、 加盟各国により合意に向けた努力が続け られている。本年3月1日に豪州キャンベラで開催された ’ABARE OUTLOOK CONFERENCE 2006’では、 EUのフィッシャー・ボエル農業委員と米国農務省のJ.B.ペン農務次官が 「WTOの成果に関する 展望」と題してそれぞれの立場を明らかにしている。その概要は次のとおりである。 〔EU:フィッシャー・ボエル農業委員〕 ・すべてのOECD諸国の中で、EUは開発途上国から最も食料を輸入している。 (輸入総量、国民1人当たり輸入量とも) ・LDC(後発開発途上国)との EBA協定(Everything But Arms agreement)には全ての農産物 が含まれる。EUにとってのセンシティブ品目も例外なく含まれている。 そのため、砂糖に関して EUは非常に困難な政策決定を強いられることとなった。 ・WTO農業交渉では、EUは輸出補助金の廃止を提案しただけでなく、2013年までに輸出補助金を 撤廃することに合意した。これは、香港閣僚会議でなしえた唯一の一方的譲歩である。 ・その上で、 @貿易歪曲的国内支持の限度を70%削減することを提案した。 A平均39%の農産物関税削減を提案した。これにより、平均関税率は23%から12%へと低下するこ とになる。 EUは多くの品目を「センシティブ品目」として取り扱うことを要求してきたが、それらを市場 アクセス拡大の対象から除外するわけではない。 ・EUの市場アクセスに関する提案の意義は、関税だけにとどまらず、市場アクセス、国内支持及び 輸出競争の3分野に強く関係している。EUが貿易歪曲的国内支持を削減すれば、国内生産に影響が 出て、輸出補助金の撤廃は輸出を減少させる。これにより、 @競争相手国にEU市場と第3国市場に参入する余地を与える。 AEUの世界市場からの撤退による国際価格の上昇により、競争相手国が得る利益には倍の効果を もたらすこともある。 BEUの輸出減少と輸入増加は域内価格を下落させ、農家への圧力となる。 EUの分析では、域内農業セクターの収入が大幅に減少し、それに相当する利益が他者に移転す る。 ・EUが被ると予測される影響の具体例は次のとおり。 @乳製品は、世界輸出市場でEUが持っていたシェアの大部分を失う。 チーズの輸入が増加する。 A粗粒穀物(大麦、とうもろこし、えん麦、ソルガム、ライ麦等)の輸出が激減する。 B牛肉と鶏肉の輸入が急増する。 これらの変化が、EU市民個々の、あるいは地域の雇用に影響を与える。 ・EUは既に、ドーハ・ラウンドが合意に向かうよう相当な犠牲を払う譲歩をした。これからは他の 加盟国が、EUの努力に見合うよう、傍観して人に説くだけでなく自らの手を汚すときだ。 ・真の規律が必要な分野は、次の3点である。 @食料援助の補助金的側面 A国家貿易機関(State Trading Enterprises) B輸出信用 〔米国:J.B.ペン農務次官〕 ・米国にとっての貿易の重要性は次の点に集約される。 @輸出販売から総収益の27%を得ていること。 A個々の商品・製品に決定的に重要な意味を持つこと。 B農業セクターにとって長期的な経済の健全性に重要な意味を持つこと。 C(片側通行でなく)相互の市場参入を模索する必要があること。 ・長期的な経済の健全性に関しては、米国における2005年から2015年までの伸びを予測すると、総食 料消費の伸びが年率0.8%であるのに対し、農業生産能力の伸びが年率2%である。 ・相互の市場参入に関しては、WTOで認められている農産物の現行平均関税率は、米国の12%に対 して、EU31%、日本51%、韓国66%、インド114%、世界平均62%である。 ・「人に説くことを自ら実行せよ。」米国の実績は次のとおりである。 @貿易赤字(2005年) :7,270億USドル(約86兆円) 貿易赤字相手8ヵ国の総GDPより大 A食料・農産物輸出 :輸出635億USドル(約7兆5千億円) 輸入610億USドル(約7兆2千億円) B直近5年の輸入の伸び :56%=年率11% ・国内支持に関する米国の立場を明確にしたい。 @EUは米国の4倍以上の黄色の政策が許され、(米国の)2.5倍以上の利用。 A米国の国内支持は、農業セクターの1/4、農業生産者の1/3にしか及んでいない。畜産、果実及 び野菜の各セクターには国内支持はない。 B相当の国内支持削減を提案しており、他国が実施するならば、米国は国内支持を止める意思あり。 上へ全国農業大会、食料増産の方針を強調(北朝鮮) 【国際情報審査役 平成18年1月31日発】 北朝鮮の全国農業大会が1月28日、首都平壌で開催された。中央及び地方の党・政府関 係者や関連部門の工場などの幹部が出席した会議では、郭範基副総理が、農業部門を社会 主義経済における主要路線に位置づけるとした金正日総書記の方針などに触れ、朝鮮労働 党が示した今年の穀物生産目標の達成などについて強調した。 朝鮮新報が伝えるところによれば、会議の中で郭副総理は、国内の気候風土に合う優良 品種の研究を進め、適地適作・適期適作を推進するとともに、高収量品種のイネやジャガ イモ、大豆などの栽培による単位当たりの収量の増加、アブラナの作付増加による食用油 の増産などについて指摘した。また、耕作と畜産の組合せによる耕畜一体の循環農業の発 展という党の方針を貫徹し、食肉生産と有機堆肥による穀物生産の増加について提唱する など、全体に食料の増産方針を強調する内容の会議となった。 上へ
韓国で2005年国産農産物調査安全性調査結果−安全性非適合率1.1%に減少−(韓国) 【国際情報審査役 平成18年1月17日発】 韓国農林部は、2005年国産農産物155品目63,724件に対し安全性調査を実施し、残留許容 基準が超過した64品目730件に対する市中出荷を事前に停止したと16日明らかにした。 この調査を担当した農林部国立農産物品質管理院は、2005.1〜12月にかけて、2005年に生 産・保存・出荷段階にある農産物 155品目63,724件に対する残留農薬など有害物質調査を実 施した。その結果、1.1%(前年1.3%) に該当する730件が残留許容基準を超過した非適合であ り、非適合品は、出荷延期434件、廃棄144件、その他(用途転換など) 144件などの措置を取 った。 非適合比率が高い品目は、西洋きのこ(マッシュルーム)(15.4%)、乾燥とうがらし(14.3%)、 トルナムル(12.5%)、パセリ(9.2%)、新鮮菜(8.2%)、ひめにら(7.6%)、椎茸(6.3%)、からし菜 (5.2%)、平茸きのこ(4.6%)、タラの芽(4.5%)、フキの茎(4.2%)、ビート(3.8%)、猿梨の実(3. 0%)、山菜(2.8%)、メロン(2.8%)の順であった。 なお、残留許容基準を超過した農薬成分は、クロルピリポス(商品名 : クロポトゥン)78件, カベンダジム(カベンダ)42, エンドソルパン(チオリクス)37, トルクロポスメチル(リジョレ クス)33, イピエン(イピエン)31, サイポメスリン(ピレス)31, タイアジノン(タスジン)30, エトプロポス(モゴプ)27等 、82成分である。 また、国内農産物生産量の中で、その生産量が1%以上を占める農産物22品目、1,576件の出 荷段階の残留農薬検査を行った結果、非適合率は0.8%として全体非適合率1.1%より低かった。 農林部は、今年も野菜の葉菜類、果物など安全性に注意しなければならない品目、輸出農産 物、親環境認証、優秀農産物管理制 (GAP)農産物などに対する安全性調査を重点的に実施し、 かつ、生産農業者に対する農薬の安全使用教育を強化し、消費者に安全な食べ物を提供するこ とはもちろん輸出競争力を高めるのに努力すると明らかにした。 一方、国産農産物に対して消費者の不安を招いているクロルピリポス(商品名: クロポ, ト スバン, ミョンサス, チュンモリ など) は葉菜類に、エンドソルパン(チオリクス, マリクス など)は食用作物に使用しないことを要請した。 <参 考> 1.農産物安全性調査概要 □目 的 ○安全な農産物を生産・供給し、国産農産物に対する消費者の信頼確保及び品質競争力向上 □法的根拠 ○農産物品質管理法第12条,第13条,第14条 ※部署間業務領域 ・農林部:生産・保存・出荷前段階農産物(品質管理) ・保健福祉部(食品医薬品安全庁):輸入及び市中流通農産物(不良食品取り締まり) □推進結果 ○ 1996.8:農水産物安全性調査業務処理要領告示及び安全性調査開始 ○ 1997.3:農水産物加工産業育成および品質管理に関する法律根拠条項新設 ○ 1999.7:農水産物品質管理法制定・施行 ○ 2002.7:農産物品質管理法改正,国家・地方共同事務 □調査対象有害物質 ○農薬370種(食医薬庁残留許容基準告示成分),かび毒素1種(アフラトキシンB1),重金属(カ ドミウム)等 -農薬は使用量が多く残留期間が長い農薬,収穫期散布農薬などを重点分析 -アフラトキシンは長期間保存する穀類(麦類,とうもろこしなど)を対象 □安全性調査手続き ○調査結果許容基準を超過する非適合品は廃棄,用途転換,出荷延期措置で市中出荷事前停止 ○安全性調査結果を活用した農薬安全使用教育及び広報で安全な農産物生産誘導
2.2005年農産物安全性調査実績 1.調査期間:2005.1〜12月 2.分析機関:農産物品質管理院精密分析12ケ所,簡易分析102ケ所及び出張所 3.調査地域 上へ
元のページへ戻る
トップページへ戻る