ALIC/駐在員トピックス
平成17年(2005年)5月分
◎ 欧州委、ブロイラーの動物福祉に関する指令案に合意 【ブリュッセル駐在員事務所 平成17年5月31日発】 ◎ 豚肉産業界、連邦政府の豚肉輸入規制緩和策の撤回に勝訴 【シドニー駐在員事務所 平成17年5月30日発】 ◎ バローゾ委員長、次期WTO事務局長にラミー氏が決定したことを歓迎 【ブリュッセル駐在員事務所 平成17年5月27日発】 ◎ EFSA、SRM除去の月齢制限に関する評価を公表 【ブリュッセル駐在員事務所 平成17年5月26日発】 ◎ アイルランドで未承認GM作物(Bt10)が検出 【ブリュッセル駐在員事務所 平成17年5月26日発】 ◎ マレーシア、対日EPAに合意(マレーシア) 【シンガポール駐在員事務所 平成17年5月25日発】 ◎ 2005年第一四半期のラム肉輸出、記録的な数量に(豪州) 【シドニー駐在員事務所 平成17年5月25日発】 ◎ フィードロット飼養頭数、最高記録を更新(豪州) 【シドニー駐在員事務所 平成17年5月10日発】 ◎ ブラジル農務省、米国向け食肉処理加工の28施設に衛生証明書の発給を一時停止 【ブエノスアイレス駐在員事務所 平成17年5月9日発】 ◎ MAPAミッション、日本および韓国へ 【ブエノスアイレス駐在員事務所 平成17年5月9日発】 ◎ タイ経済界、対日FTAの見直しを要求(タイ) 【シンガポール駐在員事務所 平成17年5月6日発】
◎ 欧州委、ブロイラーの動物福祉に関する指令案に合意 【ブリュッセル駐在員事務所 平成17年5月31日発】 欧州委員会は5月31日、食肉用に飼養される鶏(ブロイラー)の動物福祉に関する指令(Directive) 案に合意した。集約的生産方法における鶏の飼養環境が、健康や福祉の面で深刻な状態となってい るということが科学的な研究により明らかにされている。今回の指令案は、加盟国やEU市民から のこの分野において行動を起こすようにとの長年にわたる要請に応えるものである。 今回の規則案では、@飼養密度は最高1平方メートル当たり生体30キログラム、A農家は、敷き わら、飲み水、えさの適切な設備を備え付けること、また、十分な換気を行うこと、B建物に関し ては、十分な明かりを取ること、C傷ついたり、弱ったりしている鶏には、適切な処置または迅速 なとうた−などとなっている。EUでは、ブロイラーの動物福祉に関する規則は今回が最初のもの となる。 本指令案は、今後欧州理事会および欧州議会で検討される。また、本指令の中では、欧州委員会 に対し、動物福祉基準に従った義務的な表示に関する対策に関するレポートを2年以内に提案する ことを要求することとなる。
◎ 豚肉産業界、連邦政府の豚肉輸入規制緩和策の撤回に勝訴 【シドニー駐在員事務所 平成17年5月30日発】 豪州の豚肉生産者団体であるオーストラリアン・ポーク・リミテッド(APL)は27日、連邦 政府に対して豚肉製品の輸入規制緩和決定の撤回を求めた裁判で勝訴したと発表した。 豚肉輸入規制緩和については、2004年2月、農漁林業省傘下の研究機関バイオセキュリティー ・オーストラリアがリスク分析を行い、輸出国の家畜疾病清浄状況に応じて、加工・調理済みや 骨抜き製品に限り輸入を許可する報告を行い、同年5月、農漁林業省がこの報告を承認する決定 を下した。これに対し、APLは、この決定が豚の離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS) のまん延を招きかねないとして連邦裁判所に提訴していた(海外駐在員情報通巻616号ほか参照)。 リスク分析対象国は、ブラジル、カナダ、チリ、EU、ハンガリー、韓国、メキシコ、NZ、南 アフリカ、台湾、米国の11カ国となっている。
◎ バローゾ委員長、次期WTO事務局長にラミー氏が決定したことを歓迎 【ブリュッセル駐在員事務所 平成17年5月27日発】 欧州委員会バローゾ委員長は5月26日、次期世界貿易機関(WTO)事務局長に、前欧州委員 (通商担当)であったパスカル・ラミー氏が決定したことを受け、「ラミー氏は、通商問題に関 する知識、国際経験、発展に関する関心、統一見解作りのための不断の努力を有しており、最適 任者である。」と歓迎のコメントを発表した。 また、現在の通商担当の欧州委員であるマンデルソン委員も、「ラミー氏は“統一見解を作る 者(consensus builder)”であると確信している。これがWTOにとって必要なときである」と 歓迎のコメントを発表した。
◎ EFSA、SRM除去の月齢制限に関する評価を公表 【ブリュッセル駐在員事務所 平成17年5月26日発】 欧州食品安全機関(EFSA)は5月26日、同機関の生物学的危険に関する科学パネルが実施 した、特定危険部位(SRM)除去の月齢の制限に関する評価を公表した。同パネルは、SRM の除去月齢を30カ月齢以上に引き上げることについては、相当な水準ではあるが、完全に安全な 水準ではないと結論付けるとともに、その代わり、SRMの除去月齢を21カ月齢に引き上げるこ とは、2001年からモニタリングが始まって以降、BSEが発見された最も若い牛の月齢を下回る ものであり、より慎重な方法であると結論付けている。なお、EUでBSEが発見された最も若 い月齢は、2001年に発見された28カ月齢である。 特定危険部位(SRM)の除去は、BSEのリスクから消費者の健康を保護する重要な対策の 一つである。現在、EUでは、扁桃、腸(十二指腸から直腸まで)および腸間膜はすべての月齢 の牛において、また、頭がいと脊柱(注)は、12カ月齢超の牛においてSRMと規定している。 なお、イギリスの牛については、他の加盟国より厳しい定義がなされている(EC/999/2001)。 今回の評価は、欧州委員会から、SRM除去月齢の限定に関する再評価の依頼に応えるもので あり、今回の見解を踏まえ、今後欧州委員会が規則改正のための検討を行っていくこととなる。 (注)頭がい(下顎骨を含まず、脳および眼球を含む)、脊柱(尾椎および頚椎の棘突起、胸椎 の棘突起、腰椎の棘突起、頚椎の横突起、腰椎横突起、胸椎の横突起、正中仙骨稜、仙椎翼を含 まず、背根神経節および脊髄を含む)
◎ アイルランドで未承認GM作物(Bt10)が検出 【ブリュッセル駐在員事務所 平成17年5月26日発】 欧州委員会は5月25日、アイルランド当局から早期警戒システム(RASFF)を通じ、未承 認遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ−Bt10が、アイルランドに到着した船荷から検出された 連絡を受けたことを発表した。EUは、4月18日から、米国産の飼料用トウモロコシグルテンお よびビールかすのEUでの流通を、Bt10が明らかに含まれていないことを公認の研究機関が証明 する分析報告書なしには認めないこととしている。 アイルランド当局によると、5月24日にアイルランドに到着した船荷の中の飼料用トウモロコ シグルテンから、Bt10が検出されたとしている。このたびの検出は、シンジェンタ社が開発した Bt10の検出方法を用いて、積荷が港に到着する前に船上で行われており、フードチェーンに流通 しないよう船上で処分されている。 今回の検出が、未承認Bt10の流通が報告されて以降、飼料用トウモロコシグルテンからBt10か ら検出された初めてのケースとなる。これまでに、飼料用トウモロコシグルテンおよびビールか すの290検体において、検査が実施されており、289検体が陰性であった。
◎ マレーシア、対日EPAに合意(マレーシア) 【シンガポール駐在員事務所 平成17年5月25日発】 5月25日、マレーシア政府は、日本との経済連携協定(EPA)に合意した。この合意に関し ては、東京を訪問中のアブドラ首相と小泉首相によって確認された。正式な署名は12月に予定さ れている。今回の合意に至るまでには、直前まで、鉱工業分野においてマレーシア側が保護を継 続したい品目である自動車・自動車部品と鉄鋼の関税撤廃に関して交渉が続いていた。農業分野 における市場アクセスの改善については、昨年末には大筋で合意が得られており、日本側がマン ゴー、マンゴスチンやオクラなどの関税を撤廃するほか、ニンニク、ネギなどの野菜はモモ、ナ シなどの果物とともに5年間で関税を撤廃することとなった。また、バナナに無税枠を設定する こととなっている。畜産物に関しては、冷凍アヒル肉が即時関税撤廃の対象となったほか、卵黄 が15年かけて段階的に関税が撤廃されることとなった。しかしながら、指定乳製品、牛肉、豚肉 および鶏肉は、米、麦、でんぷん、生糸、砂糖などとともにセンシディブ品目として対象から除 外されている。なお、フローズンヨーグルトとチーズは再協議の対象となった。
◎ 2005年第一四半期のラム肉輸出、記録的な数量に(豪州) 【シドニー駐在員事務所 平成17年5月25日発】 2005年第一四半期のラム肉輸出は、輸出額、数量ともに記録的な水準となった。豪州食肉家畜 生産者事業団が先ごろ発表した資料によると、2005年第一四半期のラム肉輸出額は、前年同期を 16%上回る1億7,730万豪ドル(148億9,320万円:1豪ドル=84円)に達し、輸出量も同14%増の 32,100トンを記録した。豪ドル高で推移する為替相場をしり目に、最大の輸出市場である米国を 中心に、業州産ラム肉の需要は依然として高くなっている。最近では、中東、中国向けの伸びも 目立っている。
◎ フィードロット飼養頭数、最高記録を更新(豪州) 【シドニー駐在員事務所 平成17年5月10日発】 豪州フィードロット協会(ALFA)は5月9日、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)との 共同調査による四半期ごとの全国フィードロット飼養頭数調査結果を発表した。これによると、 2005年3月末時点の総飼養頭数は85万6千頭と、飼養頭数の最高記録を更新した。このうち日本 向けは約52万頭、韓国向けは約4万頭となっている。また、同時点のフィードロットの収容能力 は99万頭に拡大し、稼働率も86%と過去最高となった。飼養頭数の増加要因については、ALF Aのマコノーチ会長は、北米でのBSE発生の影響に加え、豪州全土で再び拡大しつつある干ば つの影響も指摘している。詳細は海外駐在員情報(通巻672号)を参照。
◎ ブラジル農務省、米国向け食肉処理加工の28施設に衛生証明書の発給を一時停止 【ブエノスアイレス駐在員事務所 平成17年5月9日発】 5月5日ブラジル農務省(MAPA)は、米国向け食肉処理加工の28施設に対し、衛生証明書 の発給を一時停止したことを発表した。 MAPA動物製品検査部(DIPOA)によると、この措置はMAPAおよび3月9〜4月14 日に施設などの監査を実施した米国の獣医ミッションから、改正が必要であるとされた事項 (海外駐在員情報通巻第670号参照)の適正化のために設けられた一時的な措置であり、ブラジル −米国間の衛生関係の規定に違反する事項が改正され次第、解除され得るものであるとしている。 またDIPOA部長によると、米国ミッションの監査における指摘事項への対応はすでに着手 しており、遅くとも30日の間には輸出は再開する見込みであるという。さらに同部長は、「もし 米国が輸入停止措置を講じた場合、対米輸出の中断は6カ月以上に及ぶ可能性があるため、今回 の一時停止措置は、米国が輸入停止を行なう前に民間部門との合意の下に行った予防措置」であ ることも明らかにしている。 なお、MAPAはコミュニケの中で、2004年における米国向け牛肉加工品の輸出額は、全体の 40%に当たる1億9,700万ドルであったとしている。
◎ MAPAミッション、日本および韓国へ 【ブエノスアイレス駐在員事務所 平成17年5月9日発】 5月9〜13日、ブラジル農務省(MAPA)国際アグリビジネス局長を団長とし、動植物衛生 部門の技術者がメンバーとなるミッションが、韓国と日本を訪問する。 韓国においては、鶏肉パッカーの韓国向け輸出認定を受けるために、韓国ミッションの来訪を 要請する。韓国はすでに4施設の輸出資格を認定しているが、ブラジルには第三国と取引を行っ ている施設が34もある。 また、同ミッションは、同月23〜28日に両国を訪問するルラ大統領、ロドリゲス農相一行の議 題の一部についても事前協議を行うほか、ブラジルと両国間に農業諮問委員会の設置についての 話し合いも行う。 韓国では同月9〜10日の2日間に韓国農務省当局と会合し、日本では同月12〜13日の2日間、 農水省との間で家畜衛生についての討議の後、東京近郊にある動物検疫所を訪問する予定となっ ている。
◎ タイ経済界、対日FTAの見直しを要求(タイ) 【シンガポール駐在員事務所 平成17年5月6日発】 5月5日、タイの主要な経済団体であるタイ工業連盟(FTI)とタイ貿易委員会(BOT) は政府に対して、日本との自由貿易協定(FTA)を見直すよう申し入れた。これまで、日本と の間では自動車、自動車関連部品、鋼板や排気量3千cc以上の完成車についての交渉が残ってい るものの、農業分野では大筋の合意がなされたとされていたが、産業界の中からは自動車関連産 業の保護を求める声と、政府が農業分野で必要以上に譲歩したとの批判が上がっていた。両団体 は、これらの事情を背景に、政府に、これまでの交渉を大きく見直す必要性と農業分野に関して の不満を表明した。5月6日からは中川経済産業相の訪タイが予定されている。