また米でん粉は、その粒の細かさがいろいろなものの表面の凸凹をなめらかにする働きがあるのを利用して、印画紙や化粧品などの製造分野でも利用されています。
これら生(なま)の米粒から作る米粉のほかに、もち米をいったん糊化したのち、細かく砕いて作る「寒梅粉」、もち米のつぶつぶ感を生かした「道明寺粉」なども和菓子の素材として広く用いられています。
(1)−2.小麦でん粉
小麦粉に、水を加えてよく練ると粘り気のある塊り(ドウ)になります。このドウを水中でよく洗うと、でん粉は水に「浮き粉」として振り出され、ねばねばしたたんぱく質のかたまりであるグルテンと分けることができます。
ただし、大昔から人間は小麦粒そのものを粉に挽いて食材としてきており、現在でも小麦に含まれるでん粉だけを素材として使用している例としては、水産練り製品や魚肉ソーセージなどの「つなぎ」が大部分です。最近では、高温加熱しても粒が壊れにくい性質や糊液の安定性を利用して、ソース類やレトルト食品のとろみを安定化させる目的にも、用いられています。
(1)−3.コーンスターチ
とうもろこしから抽出されたでん粉で、原料とうもろこしについては、含まれるでん粉中のアミロースの比率が70%近いハイアミロース種からほとんどアミロペクチンで占められているワキシー種まで、様々な品種があり、その性質に応じて、食材をはじめ広い分野で利用されています。
ハイアミロース種のコーンスターチは、アミロースを多く含んでいるため、他のでん粉に比べ糊化しにくく、135℃以上で加圧糊化やアルカリ糊化をする必要があり、段ボール接着剤などに使われています。一方、ワキシーコーンスターチはアミロース成分をほとんど含まないので糊化しやすく、透明度の高い糊となり、老化しにくいことから保存安定性も優れているため、中国料理や西洋料理のスープやソース、冷凍食品などに多様な形で用いられています。
コーンスターチの糊化および老化特性を利用した、「ブラン・マンジェ(Blanc Manger)」という西洋料理のデザートは真っ白で弾力があり、冷菓として有名です(図4)。