生産者の間では信頼される産地の確立に向けて、化学農薬を中心とした害虫防除のみに頼らず、天敵の活用や耕種的、あるいは物理的な防除法などを適度に組み合わせ、経済的に被害が生じない程度に害虫の密度をコントロールするIPM(総合的病害虫管理)の考え方が普及しつつあります。IPMの考え方が広まるにつれ、種々の天敵昆虫農薬や花粉媒介昆虫(マルハナバチ、ミツバチ)の利用が増えるとともに、これらの有用昆虫類に悪影響を与えない農薬の必要性が高まっています。
一方、これまで数多くの殺虫・殺ダニ剤が開発、販売されてきましたが、ハダニ類やアブラムシ類など世代交代の速い微小害虫は、同じ作用性を持つ薬剤を使い続けると効力が低下する(いわゆる抵抗性が発達しやすい)ため、常に新しい作用性の薬剤の開発が望まれています。
これらの現状や要望を念頭に置き、有効成分を探索した結果、食品として広く利用されているでん粉溶液がハダニ類やアブラムシ類などの微小害虫に高い物理的殺虫活性を示すことを見出しました。その後も検討を重ねた結果、1998年5月に野菜・花き類などさまざまな植物に使用できる「でん粉製剤(液剤)」を、2003年6月には主に果樹類に使用できる「でん粉製剤(水和剤)」を開発、販売しました。
「でん粉製剤(水和剤)」の有効成分には、天然由来(原料は、ばれいしょおよびタピオカ)の食用でん粉を使用しており、日本農林規格(改正JAS法)の定める有機農産物の生産に使用可能な防除資材として認定されています。