くすりの有効成分以外は、一括して医薬品添加剤(用語解説1)とよばれています。錠剤の場合、その機能から、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、コーティング剤などが用いられます。
賦形剤は、文字通り形を賦与するものであり、有効成分のみですと微量で取り扱いに困難なため、不活性成分を添加し希釈することにより、取り扱うことが容易な嵩(かさ)・質量にします。有効成分と反応せず、品質がいつも一定で、比較的安価で、入手性が安定していることが必要です。有効成分と混合したときに、どこを採っても有効成分が均一に分布している(混合均一性といいます)ことも重要です。でん粉、乳糖、結晶セルロースなどがその代表です。
結合剤ですが、くすりの成分は基本的には粉末ですので、粒にしたり、固めたりする際に、粉末同士をくっつける必要があります。その作用をするものが結合剤で、のりのような作用をする成分といえます。でん粉を冷水に分散させ、加熱溶解したでん粉糊にはこの作用があることは、ご存知のとおりです。
次に崩壊剤です。くすりが作用を発揮するためには、有効成分が体内の作用するところ(作用部位)に送り届けられる(送達される)必要があります。もちろん作用部位に送達するのは血液ですが、その血流に乗るためには、錠剤はコップ一杯(150〜200ミリリットル)の水または白湯で服用された後、胃内で崩れ(崩壊といいます)、次いで、胃内や消化管を移動中にその崩れた断片から有効成分が溶け出し(溶出といいます)、主として小腸上部から吸収され、その部位の毛細血管から血液に溶解した状態で血流とともに肝臓を経由し、全身静脈血流とともに心臓へ流入し、肺を経由したのち動脈血とともに全身に流れ、作用部位に届けられることが求められます。
つまり、強固に固められた錠剤が、崩れ、有効成分が溶解することが必要であり、固めれらた錠剤が水分を吸収して崩れやすくする作用を有するものを崩壊剤といいます。当然ですが、水を吸って膨潤する性質のあるものが使用されます。でん粉や結晶セルロースもその作用を持っています。なお、消化管の中で溶解する際や、解毒作用を有する肝臓を通過する際には、有効成分が多少分解され活性を失うことがあり、服用した有効成分の全部が、作用部位に届けられるわけではありません。
(生物薬剤学では製剤に含まれている有効成分量に対する、全身血に取込まれた薬物量の割合を生物学的利用能Bioavailabilityという言葉で表しています)
流動化剤ですが、これは読んで字のごとく、粉末の混合物が製剤加工する際に、機器などの中でスムーズに流れ、閉塞しないように粉末を滑りやすくし、混合された状態をそのまま維持する、つまり混合均一性を保持するために添加します。
滑沢剤は、粉体を圧縮して錠剤に成形する際に、原材料が錠剤機の臼や杵へ付着することを防止する作用があるものです。
コーティング剤は、苦味をマスクしたり、外気や湿気から内部を保護したり、体内での崩壊・溶出の調節(胃内で崩壊しないように腸でのみ溶解する皮膜を用いる、あるいは徐々に有効成分を放出するように工夫するなど)したり、他の錠剤と区別し易く(色や印字により識別性を賦与)したり、錠剤の外観を美しくしたりするために使用されています。