独立行政法人 農畜産業振興機構 理事長 木下 寛之
明けましておめでとうございます。
旧年中の皆様方のご協力に感謝申し上げますとともに、本年も引き続きよろしくお願い申し上げます。
さて、昨年は、再び世界的な天候不順により引き続き穀物、大豆等の国際価格の動向が大きな問題として取り上げられる年となりました。
穀物、大豆等の国際価格は、2008年に史上最高値をつけた後、世界的な不況による需要の減退、最大の供給国である米国産とうもろこし等の豊作予測等により大幅に下落したものの、昨年はロシアにおける干ばつによる不作、米国産とうもろこし等の予測収量の下方修正などにより、昨年半ばから再び騰勢に転じています。
このような情勢の中、でん粉に関する海外の動きを振り返りますと、タイにおいて、2009年後半に発生したキャッサバの害虫被害からタピオカでん粉生産量が大きく減少し、価格が急騰して、アジアにおけるでん粉需給に影響を及ぼしました。
また、輸入でん粉(2010年1月〜10月)についてみますと、タピオカでん粉については、タイでの減産の影響からその輸入量は前年に比べ減少傾向で推移しましたが、ばれいしょでん粉は、EUにおいて前年産の原料ばれいしょが豊作だったことやタピオカでん粉の価格高騰により相対的に競争力が出てきたことから輸入量は増加傾向で推移しました。
世界に目を転じると、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)をはじめとする新興諸国が経済面での存在感を増しつつある中で、我が国は、昨年10月にインド、11月にペルーと相次いで経済連携協定(EPA)交渉に合意するなど二国間での枠組み形成が進展しました。さらに、環太平洋経済連携協定(TPP)についても情報収集を進めながら対応して行くこととされております。
一方、我が国のでん粉製造業などにおける経営環境に目を移すと、製品の販売価格が低下する中、ばれいしょ等の生産費やでん粉製造経費の上昇などにより、厳しい経営環境が続くものと考えられます。
このような中、関係者の皆様のご理解とご協力を得て、でん粉原料用かんしょ生産者交付金交付対象者要件の見直しに伴う運用改善を実施し、交付金交付業務を円滑に遂行することができました。でん粉の生産者交付金と事業者交付金は、でん粉原料用輸入とうもろこし等からの調整金を財源としております。本年もこの価格調整業務が適正かつ効率的に運営できるよう、引き続き国際とうもろこし価格やでん粉の需給動向等に注視してまいります。
でん粉を取りまく情勢が内外とも大きく変化する中にあって、当機構が業務を円滑に進めることができましたのは、ひとえに皆様方のご理解とご支援のたまものと感謝申し上げます。
食料・農業を取り巻く情勢が激変する中にあって、業務の一層の効率化、透明性の確保に努めつつ、農畜産業及び関連産業の健全な発展と国民消費生活の安定に資するよう、国民の視点に立った業務運営に取り組んでまいります。
本年が、皆様にとって希望に満ちた明るい年でありますことをご祈念申し上げ、新年のごあいさつといたします。