石油資源を原料とするプラスチックは価格が安く、かつ幅広い特性を持たせることが出来るため、さまざまな用途の素材として利用され現代社会に不可欠なものとなっている反面、オゾン層の破壊、ヒートアイランド現象、酸性雨、廃棄物増加、環境ホルモンなど、地球温暖化、環境汚染に関する多くの問題が発生しています。
1997年、京都議定書が議決されて以来、日本国内でも容器包装リサイクル法、自動車リサイクル法、改正VOC(注)規制などが施行され、地球環境保全に関する意識が各方面で高まっており、植物由来(天然原料由来)のグリーンポリマーがこれらの問題を解決する手法のひとつとして注目を浴びています。
最近の状況として、容器包装、文具日用品、園芸用品分野だけでなく家電製品や自動車部品などにもグリーンポリマーが使用されるようになってきており、この傾向は環境意識の高まりとともに今後、ますます増大していくことが予想されます。
「青丹よし 奈良の都は咲く花の にほふがごとく 今盛りなり」 と詠われたように、塗料は合成樹脂が無かった平城京時代から使用されています。言い換えれば天然原料由来のグリーンポリマーしか無かった時代から、塗料は錆の防止や美化のために使用されてきています。
しかし従来のグリーンポリマー塗料は、塗膜性能を発揮出来るまでの乾燥時間が長い、時間が経つと共に着色していくなどの欠点があり、工業製品が要求する塗膜性能を持ったグリーンポリマー塗料は今まで存在しませんでした。
以上のような背景をもとに、私たちは地球環境に優しく循環型社会への貢献を目指し、かつ工業製品が要求する性能レベルを達成出来る植物由来のグリーンポリマー塗料の実用化を目指し、開発・応用研究を行いました。
その結果、でん粉を原料としたグリーンポリマー塗料を開発し、世界で初めて家電製品のプラスチック部品(液晶TVスタンド)に実用化しました。
本研究内容は、環境に優しい技術としてシャープ株式会社との共同で、第56回工業技術賞(大阪工業研究所主催)(*1)、第2回「ものづくり日本大賞」優秀賞(*2)、第40回日本化学工業協会 環境技術賞(*3)、2007年度色材協会技術賞(*4)を受賞しました。
注:揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略称で、塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤、ガソリン、シンナーなどに含まれるトルエン、キシレン、酢酸エチルなどが代表的な物質。