鹿児島事務所
種子島地区さつまいもでん粉対策協議会および種子島糖業振興会が主催した標記の研修会が、平成23年10月12日(水)中種子町にある種子島こりーなで開催され、同島のさとうきびおよびでん粉原料用さつまいも生産者をはじめ、行政関係者、JA関係者ら約450名が参加した。この研修会は、種子島地域の重要な基幹作物として位置づけられるでん粉原料用さつまいもおよびさとうきびについて、講演等を通じて相互に研鑚することで地域の活性化や農業の振興に資することを目的に昨年度から行われており、今回で2回目となる。
研修会では、同協議会の長野会長(西之表市長)の主催者挨拶に始まり、環境保全型農業の取組み、でん粉の流通事情、さとうきびやでん粉原料用さつまいもで多収量を得るための留意点などについて、それぞれ専門分野から講演が行われた。
全国農業協同組合連合会の九州農産事業所の川口所長は、日本国内におけるでん粉の流通事情、かんしょでん粉の用途は糖化製品向けが約80%であること、販売先であるユーザーがかんしょでん粉を選択する理由(西日本では、ばれいしょでん粉に比べ輸送コストに魅力があること、かんしょでん粉でなければ風味が出せない製品があることなど)や種子島のかんしょでん粉が実際にどのように流通しているかについて解説を行った。
鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場作物研究室の上野室長は、種子島の近年のでん粉工場稼働率が約50%と低い水準となっているが、でん粉原料用さつまいもの収量を上げることにより島内にある4つのでん粉工場のフル稼働も可能となると前置きし、種子島では昔から大隅半島と比較して10aあたり収量が低い(55俵から60俵=約2.2t、1俵=37.5kgで換算)とされているが、4つのポイント((1)土壌酸性度のチェック、(2)マルチ栽培、(3)早期植付け、(4)優良種苗による種芋作りに注意すること)を励行することにより約150俵=5.6tも夢ではないとし、これら基本技術の励行による増産を提唱した。
生産者からは、150俵収量となる肥料の配合方法、種芋の消毒の薬剤や消毒方法などについて質問があり、上野室長からは肥料や消毒の方法などは栽培ごよみどおりで問題はなく、上記の4つのポイントの励行が収量を上げることにつながると回答があった。
鹿児島県農業大学校の福井非常勤講師は、長年さとうきびの栽培に関する研究を行ってきた立場から、種子島においてはどのようにしたらさとうきびが多収となるかについて講演を行った。さとうきびは光合成率の高いC4植物に分類され、高温で強日射の条件下で稲などのC3植物と比べて高い光合成能力を発揮する特性があるため、これを知り活かすことが重要である。具体的には、種子島ではさとうきびがその特性により大きく成長する期間は7月、8月であるため、6月までの生育初期が重要であり、この期間の生長の差がそのまま収量に直結すること、また、南西諸島の他の島に比べ生育初期(1月から5月)の気温が低いため、マルチ栽培(透明マルチ)で地温を上げながら、早期植付け(又は早期株出し)することが増産のために大変重要であるとの説明を行った。
今後も、さとうきび・でん粉原料用さつまいもの持続的な安定生産に、生産者・関係機関・団体職員が一体となって取り組むことが期待される。