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「平成24年度かんしょでん粉製造事業者と実需者との交流会」の概要について

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最終更新日:2013年3月11日

「平成24年度かんしょでん粉製造事業者と実需者との交流会」の概要について

2013年3月

特産業務部でん粉原料課/鹿児島事務所

1.はじめに

 当機構では、平成25年2月14日(木)に鹿児島市内において「平成24年度かんしょでん粉製造事業者と実需者との交流会」を開催しましたので、その概要を紹介します。

 同交流会は、南九州地域の農業・経済を支える重要な作物であるかんしょの約4割から製造されるかんしょでん粉について、安定的に供給するためにかんしょでん粉製造事業者と実需者との間での問題認識の共有や理解の醸成およびマッチングの場を提供する目的で、昨年に引き続き開催し、130名余の方々のご参加をいただきました。

2.交流会概要

(1)第1部 講演会

 でん粉関係各者はそれぞれの立場から、かんしょでん粉に関連する講演を行った後、質疑応答を行いました。

 今回の主な話題は、糖化原料へ仕向けられる割合が大宗を占めるかんしょでん粉を、加工食品用途へ仕向けていくための課題や関係者の現在の取組みなどの情報交換が行われました。


(ア)かんしょでん粉をめぐる事情

 農林水産省生産局農産部地域作物課の鈴木里沙係長からは、かんしょでん粉のめぐる事情についての講演が行われました。
 
 平成23年産のでん粉供給量は、全体として約268万トン、そのうち国内産いもでん粉は約21万トン、供給量の8%程度を占めます。

 また、かんしょでん粉の供給量については、約4万5000トンで国内産いもでん粉供給量の2割を賄っています。かんしょでん粉は、これまで主に糖化製品用として販売されていますが、今後も安定した需要を確保し産地の収益性を向上させるためには、付加価値の高い加工食品用途への転換を推進する必要があります。

 このような背景から、かんしょでん粉の高品質化を図るため、平成19年度から順次でん粉製造施設の高度化の取組を支援してきており、精製度合の改善や品質管理の向上が図られてきています。

 加えて、研究機関や民間企業との調査研究により、新たなかんしょでん粉の開発が行われ、従来品種よりも低温で糊化し、離水が少ない耐老化性に優れた「こなみずき」による、新たな需要拡大を期待しています。


(イ)JAグループ鹿児島におけるさつまいもでん粉の取り組み

 JA鹿児島県経済連米穀特産課の中畠善郎調査役からは、食品用途への需要拡大のためには、高品質なでん粉製造が必要であるとした講演がありました。
 
 高品質なでん粉には、製造履歴や流通履歴が必要であるため、鹿児島県経済連では、ロット別の製造履歴に基づく製品規格書の制定を順次進めており、品質保証書の提出も合わせて行っています。

 また、「こなみずき」の品種特性を活かした商品開発にも力を入れており、平成25年4月頃に発表したいと考えています。今後も生産者の経営安定を目的に関係機関との横断的な連携を取っていく必要があります。


(ウ)かんしょでん粉品質向上の取組事例

 日本澱粉工業株式会社糖化製造部生産技術課の井上真吾主務からは、かんしょでん粉品質向上の取組事例についての報告がありました。

 食品用かんしょでん粉には製造工程上発生する微生物や異物に加えて不純物が少なく精製度が高い安心・安全な製品づくりが求められています。
 
 原料いもや副資材から微生物が混入することについては、原料いもの洗浄力を向上させること、工程水に次亜鉛素酸ナトリウムを添加することで、混入リスクの低減を図ることができました。

 さらに、白度向上に大きく影響する不純物の除去については、精製工程のでん粉乳の濃度を安定させることで、不純物を効率的に分離できます。当社では、食品安全マネジメントシステムであるFSSC22000を認証取得に取り組んでおり、より品質の向上に向けた取組を実現していきたいと考えています。


(エ)でん粉販売のトレンド

 全国農業協同組合連合会園芸農産部でん粉・食品原料課の武藤宗臣課長からは、全農における国内産でん粉の販売状況や、かんしょでん粉の食品向け販売についての講演がありました。
 
 国内産いもでん粉の販売実績については年々減少しているものの、食品向け用途については増加傾向にあります。ばれいしょでん粉については、昭和30年代から製造工場の近代化を進めてきたのに対し、かんしょでん粉については、全量糖化用として販売し、その一部を食品用途に販売してきた経緯がありますが、かんしょでん粉の高品質化や国の制度改正による交付金対象用途の拡大もあり、まだまだ販売のポテンシャルはあります。

 しかしながら、かんしょでん粉の知名度向上の必要性や「こなみずき」などの品種を活用した特徴のある新商品の開発、これに加え食べ方の提案などを含めたプレゼン資料の充実を図る必要があります。


(オ)かっぱえびせんとかんしょでん粉について

 カルビー株式会社研究開発本部開発2部スナック課の江藤信治課長からは、食品メーカーとしてかんしょでん粉へ求めることなどについて講演がありました。
 
 かっぱえびせんは小麦とえびが主原料であるものの、風味や品質にでん粉が大きく関係しており、複数のでん粉をブレンドして使用しています。

 また、でん粉粒の大きさが膨化したときの気泡の密具合に比例するため、でん粉の特長を生かし、組み合わせることで食感や口溶け具合を調整しています。 かんしょでん粉に求めることは、品質、性状(性質や状態)、供給量、価格が全て安定していることです。

(2)第2部 意見/情報交換会

 試食、展示ブースには10者が出展し、かんしょでん粉を使用した製品の試食などを通じて、かんしょでん粉の可能性などについて意見交換を行いました。
 

3.おわりに

 今回の交流会が、開催地である鹿児島の関係者をはじめ、講演および出展していただいた方々へ多大なご協力をいただいたことに深く感謝するとともに、今後のかんしょでん粉の更なる発展に繋がることを期待します。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713