でん粉を原料とした可食容器
最終更新日:2013年6月10日
でん粉を原料とした可食容器
2013年6月
株式会社丸繁製菓 専務取締役 榊原 勝彦
【要約】
地元の特産品である「海老せんべい」を主体とするせんべい産業が発達している西三河に社を構える株式会社丸繁製菓が開発した「食べれる器(e-tray/イ−トレイ)」は、主に三河港で水揚げされた多くの「あかしゃ海老」と当地域に生産拠点を設ける業者が提供する「ばれいしょでん粉」を主原料としている。
今回、開発した可食容器はでん粉を原料にすることによって、従来品によく見られた可食容器の弱点であった強度や耐水性にも考慮した製品となっている。
1.開発開始に至る背景
株式会社丸繁製菓は、昭和58年創業の菓子製造メーカーである。
これまでは、大手菓子メーカーからの受注を受け、主原料が小麦のアイスクリームモナカを主要に製造することにより社業を営んできた。しかしながら、近年、取り扱い商品の需要の低迷および原材料高騰や、製造経費の増加による利幅の減少で収益が悪化し、従来の商品構成からの脱却を図ることとなった。
そこで、当社は、自社製品を直接消費者のもとへ届ける自立型企業へ変革が必要と考え、自社で長きに渡って培った煎餅製造技術を用いて、「食べれる器(eat tray⇒e-tray/イートレイ)」の開発を行った。
2.でん粉の役割、機能
本製品は、でん粉を主原料とした粉末生地を高圧で成形、焼成して形成されるので、でん粉粒が気密に密着し、でん粉粒間に液体(水分、ソースなど)が入込み(染込み)難い構造となっている(図1、2)。これにより、器として用いる際の弱点であった耐水性、耐久性の問題を解決し、器としての機能を十分に果たすことができるものである。
また、機能性を高めてもなお、可食容器としての風味を失うことなく、器としての機能を終えた後は十分食用に耐えることができる製品となっている。なお、製品については、実用新案の登録済みである。
3.実用化の状況
本製品は、従来あったプラスチックトレーの代替品として開発したものである。
従来品のプラスチックトレーよりも、価格面だけで考慮すると割高になるものの、ターゲット市場を祭りや野外イベントなどのゴミ問題に直面している運営者に置くことにより、「環境に配慮したイベント」であるPR効果に加え、イベント終了時に多数の人員を動員しゴミの清掃作業にかけるコストの削減を念頭において提案することで、費用対効果は見込めると判断し、実用化にあたった。
当該市場の動向としては、近年は「B1グルメ、グランプリ」などのイベントをはじめ、全国各地で「ご当地グルメ」ブームが到来しており、地域活性化のため今後ますます同種のイベントは増えるものと考えられる。そこで、市場としては全国エリアを見据え、近年うたわれるエコ活動やゼロ・エミッション活動にも寄与できると考え、将来的には、対企業向け商品の展開を予定している。
本製品は、認知度がまだ低い商品と認識している。しかしながら、今後多く行われていくと思われる『食イベント』や、観光地の美化活動などへの利用提案をベースに運営者へ情報発信し、利用していただくことで、活用方法が確立できてくれば、意中のものとなりうるだろう。
4.今後の展望
本製品の開発当時から、現在の販売に至るまで、ゴミの問題などに直面し利用していただいたユーザーのみなさまから多くの反響があった。また、昨今の時代背景やECO活動の推奨もあり本製品の活路は今後広がっていくと推測できる。
今後は、活用方法などのPRを行うと同時に、効率的な生産方式の開発を行い、量産体制の整備と輸送を含む販売方法の確立を早急に行う予定である。また、別の活用方法として、地域活性化の為のツールとしての利用も推奨しており、地域のブランド力向上にも貢献できるよう、商品の展開を考えている。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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