鹿児島事務所 丸吉 裕子
平成25年7月24日、鹿児島県バイオテクノロジー研究所および鹿児島県農業開発総合センター大隅支場(以下「大隅支場」という。)で、鹿児島県大隅地域振興局農林水産部(以下「大隅地域振興局」という。)による「平成25年度さつまいも生産対策研修会」が開催された。本研修会は、原料用さつまいもに関するもので、大隅地域内のさつまいも生産者をはじめ、でん粉工場担当者や市町村担当者など60人が参集した。
昭和60年産頃には2万ヘクタールを超えていた鹿児島県におけるさつまいもの作付面積は、平成15年産には1万2000ヘクタール以下にまで減少したものの、全国的な焼酎ブームによる焼酎原料用さつまいもの需要増などを背景に、平成16年産は増加に転じ、平成19年産以降は1万4000ヘクタール前後で推移していた。しかしながら、平成24年産は前年産より200ヘクタール減少し、1万3800ヘクタールとなった。限られた農地で安定的な生産量を確保するため、県下では基本的栽培技術の励行や単収向上に向けた生産対策の検討が行われているところである。
大隅地域振興局においても、さつまいもの単収向上対策について研修を行うことで同地域のさつまいもの安定生産ひいてはさつまいも生産者の経営安定を図ろうと、おおむね年に1度、さつまいも生産対策研修会を開催している。
今回は、まず室内研修として、大隅支場園芸作物研究室の松田研究専門員から、家畜ふん堆肥を圃場に施用した場合の原料用さつまいもの収量に及ぼす影響などについて研究成果発表があり、高単収を維持している30代の若手篤農家2名から、栽培事例の発表があった。2名とも、健苗育成のためにバイオ苗を導入し、早期植付けを実施しているほか、被害の少ないうちに害虫防除を実施するとともに土壌消毒も毎年行うなど、基本的栽培技術を忠実に実践し、単収を維持し安定的な経営を行っている旨の報告があった。松田研究専門員による研究者の視点からも、「高単収につながる様々な工夫がなされていると感心した」と評価されていた。
その後、「原料用さつまいもの単収向上に向けて何をすべきか」をテーマに、総合討議が行われた。発表した篤農家に対し、参加者から苗の定植方法や土壌消毒剤の選定、堆肥の活用などに関する具体的な質疑応答が行われるなど、活発な意見交換があった。また、さつまいも生産者から鳥獣被害が多発している旨の報告があり、大隅地域振興局から、鳥獣被害防止対策に関する補助事業などを活用し地域ぐるみで対策を講じてほしい旨の回答があった。