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地域だより

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最終更新日:2014年3月3日

JA南薩でん粉原料用甘しょ生産振興大会の開催について

2014年3月

鹿児島事務所 遠藤 秀浩
 


  平成26年2月10日(月)、南九州市知覧町の知覧文化会館にて、JA南薩甘しょでん粉協同事業体(JAいぶすき、JA南さつま、JAさつま日置の鹿児島県の薩摩半島を拠点とする3つのJAで構成。以下「3JA」という)主催による「でん粉原料用甘しょ生産振興大会」が開催され、南薩地域のでん粉原料用甘しょの生産者やJA担当者など関係者約300名が出席した。

 でん粉原料用甘しょは、生産者の高齢化の進展や焼酎原料用甘しょとの競合という問題を抱えながら、台風などの気象災害に強く防災営農作物として輪作体系に欠くことのできない重要な作物として位置づけられている。同大会では、10アール当たり収量アップおよび収穫面積拡大に向けてパネルディスカッションなどが行われた。
 
 冒頭に、主催者のJA南薩甘しょでん粉協同事業体代表であるJA南さつまの下野賢治代表理事組合長があいさつを行った。続いて、鹿児島県経済農業協同組合連合会(以下「JA鹿児島県経済連」という)の北郷栄会長、霜出勘平南九州市市長(副市長によるメッセージ代読)、鹿児島県南薩地域振興局(以下「南薩地域振興局」という)農林水産部の小倉祐二部長から来賓祝辞があった。

  鹿児島南薩地域の工場を集約し、平成23年9月から操業を始めたJA南薩拠点霜出でん粉工場の原料処理能力は年間2万トンであるが、3JAにおけるでん粉原料用甘しょの平成25年産生産量の実績は約1万5000トンとなったことから、平成26年産は2万トンを目指し、10アール当たり収量を2.7トン(平成25年産の鹿児島県平均)から、3JA平均で3.7トンへ引き上げ、かつ、収穫面積を133ヘクタール拡大し、約860ヘクタールでの生産を目標としている(表1および表2参照)。 
 
 まず、下野代表は、「昨今、農業を取り巻く環境は、農業従事者の減少と高齢化、担い手不足による耕作放棄地の増加や、豪雨、干ばつなどの気象災害など、厳しい状況が続いており、でん粉原料用甘しょの生産量も減少している。南薩地区は県内有数の食糧生産地であり、地域の農業を担う立場からこの困難な時期を生産者、JA、関係機関が一体となって取り組む必要がある」と増産に向けた意気込みを語った。
 
 北郷会長は、「でん粉工場が整備されてから3回目の操業を終え、でん粉製品の品質も年々向上している。販売においては全農と一体となり進めており、地域ユーザーの開拓や県内の利用促進を図っているところ。生産者数や作付面積は減少しており、農業経営は非常に厳しいが、この大会を契機に生産者の経営安定が図れることを期待したい」と祝辞と期待を述べた。
 
 続いて、霜出市長(副市長によるメッセージ代読)は、「本日の大会を契機に生産者をはじめ、関係機関の皆さまが南九州の食糧供給基地として一翼を担っているという意識を持ち、安全安心を基本とした生産性の高い営農体制を確立し、消費者の求める食の安全性に向けた産地づくりを目指していただきたい。生産者をはじめ南薩管内関係機関の力を一層結集し、参加された生産者の皆さまが笑顔で安定した農業経営が確立されるよう心から祈念する」と祝辞を述べた。

  小倉部長は、「でん粉原料用甘しょは気象災害の影響を受けにくい、南薩地域には無くてはならない基幹作物である。生産者の皆さまが地域やJAの垣根を越えてでん粉原料用甘しょの増産に向けた取り組みをさらに加速することを願う。南薩地域振興局としてもできる限りの支援を行っていきたい」と祝辞と決意を述べた。
 
 続いて、でん粉用甘しょの生産において成績が優秀であった生産者に対し、3JAから表彰式が行われ、JAいぶすき管内から農事組合法人吉崎生産組合、JA南さつま管内から池田勇次氏、JAさつま日置管内から西園徹男氏にそれぞれ賞状が授与された。
 
 続いて、増収対策と面積拡大をテーマに、3JAから各1名の生産者の代表とJA南さつま経済担当、南薩地域振興局農林水産部、全農の販売部門から各1名ずつ登壇し、パネルディスカッションが行われた。

 増収対策として、健苗育成、土づくり、本ぽ植え付けの3点および面積拡大について、意見交換があった。
 
 はじめに、健苗育成について、生産者から「コストがかかるのでバイオ苗は利用していない」などの意見があった。これに対し、南薩地域振興局から「バイオ苗導入のメリットとして、病害を防げるということがある。例えば、つる割病などが発生した種いもの苗については、次の代に伝染するので、健全な苗に更新することを勧める。何年も同じものを使っていると病害の危険性が高まる」と、苗の更新の重要性を訴えた。

  次に、土づくりについて、南薩地域振興局から「地域によって施肥量が少なくなっており、つるぼけの懸念がある。土壌診断などを利用して、基準どおりに施肥してもらいたい」と説明があった。これを受けて生産者からは、「今まで土壌診断をしたことは無かったが、今後は利用したい」などの意見があった(図1参照)。
図1 健苗育成と土づくり(パネルディスカッション資料)
 また、本ぽ植え付けについて、南薩地域振興局から「4月など早期植え付けをする場合、地温が上がらない時期ではあるが、畝の上から深さ約6センチのところが生育に最適な地温になっている。そこに水平植えをすることで、収量を増やすことができる」と早期植え付けをするに当たっての留意事項や、「マルチ無しの場合、梅雨などの影響で畝が崩壊する恐れがあるが、マルチがあればその心配はない。気象災害を受けにくいなどメリットがある」とマルチ被覆の重要性を訴えた(図2参照)。
図2 本ぽ植え付け(パネルディスカッション資料)
 さらに、面積拡大について、JA南さつまから、キャベツなど野菜との輪作による効率的農地活用の事例や、遊休農地や離農された農地をJAで預かり、農業経営体に貸し出すなどの農地の流動化を推進していることについて、報告があった(図3参照)。
図3 面積拡大(パネルディスカッション資料)
 大会の最後には、JAさつま日置管内の生産者の代表より大会宣言が読み上げられ、満場の拍手をもって採択された。

【大会宣言】 

 でん粉原料用甘しょは、本県における特殊土壌や台風に強い防災営農作物として輪作体系に無くてはならない作物であります。

 しかしながら最近では、高齢化の進展や焼酎向け需要の拡大などにより生産基盤が弱体化しています。

 このような中、でん粉原料用甘しょの役割を改めて見直し、鹿児島県の農業の根幹を成す甘しょ生産を守るため、でん粉工場と一体となって次のことに取り組みます。

 

  • 育苗、適期植付、マルチ栽培などの基本技術の徹底により単収を高めます。
  • 農地の有効活用や輪作体系を確立するため、栽培面積を拡大します。

以上、宣言します。

平成26年2月10日
でん粉原料用甘しょ生産振興大会

 当機構としても生産者の皆さまが安心してでん粉原料用甘しょ作りに取り組んでいただけるよう、その経営の安定に資するため、今後も交付金交付業務の適切な運営に努めてまいりたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713